東京都は25日、消費生活条例に基づく告示を改正し、都内で販売される国内産冷凍食品について原材料の原産地表示を義務付けた。
 9か月間は経過措置として、原産地表示のない冷凍食品も販売は認められ、来年6月から全面的に実施される。これまで国内産の冷凍食品については、外国産の原材料が使われても、消費者にはわからなかったが、今回の改正で、都内で販売される冷凍食品については、重さが5%をこえる上位3種の原材料の原産地を示すことが食品製造会社に義務付けられる。罰則はない。国内初の取り組み。都では中国製冷凍ギョーザによる中毒事件を受け、表示を義務化する方針を決めていた。

同記事では,東京都の消費生活条例において,冷凍食品の原材料に関して,原産地表示を義務化することを,来年6月1日から開始することを紹介.
同記事が紹介する同内容については, 同都に置かれている第20次東京都消費生活対策審議会の答申に基づくもの*1.同報告書はより広範な視点から取りまとめられている.特に,「消費生活に関わるさまざまな局面において行政が達成すべき課題」(6〜7頁)として,5つの政策課題を提示しており(「消費者被害を防止し,救済を図る」,「悪質事業者を市場から排除する」,「商品やサービスの安全・安心を確保する」,「「自ら考え行動する」消費者になるよう支援する」,「消費者の意見や考えを、行政や事業者の活動に活かす」),同記事の内容は,これらのうち,第3の政策課題の内の一つ.同記事にもあるギョウザ問題を背景にすれば,より厳格なトレーサビリティを確保する方策も想定もされうる.同記事の対応は,いわば,被規制者側である企業側に対して,限られてはいても情報提供を委任する「人々が理性的選択を促す制度」*2を求めるものか.ただ,その表示の有無にしろ,最終的には,消費者側の選択が委ねられているため,第4の政策課題もまた必要とも思われる.
ただ,同取り組み,冷凍食品のまさに流通性を想定すれば,東京都という一自治体による規制(また,罰則が設けられないこと)では,規制範囲から漏洩する可能性が高いことも考えられる.そのため,同取り組みの含意としては,他の規制者側(または,被規制者側)に更なる行動の契機を与えるような「焦点」を念頭にあるようにも推察される.つまり,国による法令による一律規制を整備する選択(いわば,東京から国を変える路線),または,各自治体レベルでの共同条例化に進む選択(いわば,自治体により国を変える路線),はたまた,今回の東京都の条例を分岐点として,被規制者ではあるが事業者側が事実上の規則化(いわば,自主規制路線)の選択等が念頭にあるのだろうか.今後の動向は,要経過観察.

*1:東京都HP(報道発表資料:2008年8月22日)『東京都消費生活基本計画の改定に関する答申』(2008年8月22日)14頁

*2:アーサー・ルピア,マシュー・D・マカビンズ『民主制のディレンマ』(木鐸社,2005年)105頁

民主制のディレンマ―市民は知る必要のあることを学習できるか?

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