求む!管理職-。神戸市が、係長昇任試験の受験者数低迷に頭を痛めている。仕事の合間を縫っての試験勉強に加え、責任が重くなるのを嫌ってか、ここ数年、対象者のうち実際に受ける職員はわずか二割。団塊世代の大量退職に伴って合格者は増え、“広き門”となっているにもかかわらずだ。市は試験を受けやすくしたり、管理職の魅力をPRしたりと優秀な人材確保に躍起だ。(紺野大樹)
 神戸市では、係長試験は課長や部長になるために必要な通り道と位置付けられている。市によると、主に三十歳代が受ける一般行政の係長試験で、一九九八年度は対象者九百三十三人のうち約38%が受験。しかし受験率は年々下がり、五年前には30%を切った。その後も歯止めはかからず、二〇〇七年度の受験率は約22%まで落ち込んだ。定年退職者が増えるとともに、ポストが空くため合格者は増加。九八年度に11・2倍だった競争率は〇七年度で3・1倍に。市は試験の負担を減らして受験者を増やそうと、〇六年度から一次試験を試験科目で二回に分けて実施。さらに、二次試験でつまずいても、その後の二年間は一次試験を免除するなど制度を変えた。今年からは、現役係長による体験発表会を区役所で開いたり、女性管理職を女性職員が囲んでやりがいを聞く場を設けたりもしている。県内では尼崎市が、職員数が多い団塊世代の公平な昇任を目的に係長手前の主任試験を行っていたが、受験者は減り、今年から試験をやめた。担当者は「昇進は責任が増えてしんどいと考える職員もいたようだ」と話す。神戸市人事委員会事務局は「責任は重くなるが、仕事の幅が広がるなど管理職の魅力はある。市民のためにもたくさんの職員に挑戦してもらい、優秀な人材を登用したい」と気をもんでいる。

同記事では,神戸市において,係長昇任試験の受験者数が低下していることを紹介.受験対象者の受験率が,この10年間で15ポイント強減の状況にあるとのこと.同記事にもあるように,同市では,退職に伴う職が確保されつつあるものの,そこに就く候補者がいない状況とのこと.
昇進に至るまでは「マラソンレース」*1と称されることもあるが,スタート地点に立つ前に,続々と辞退者が出ていては,レースも成立しない.一時期のように,多すぎる「管理職」への対処策として,各自治体では,各種機構改革が進められ,真性の意味での管理職の整備が進みつつあるなかで,着任者不在では,機構運営自体を持続することが難しくなることも想定されうる.その要因としては,個々の職員自身に,昇任に対しての動機付けが見いだせない状況にあるのか,また,「大部屋主義」的な執務環境(による同調圧力)と個々の職員昇進制度との間でマッチングが上手く機能していないのか,はたまた,日本型組織の特徴ともされてきた「人事管理の集権化」*2が機能不全となりつつあるのか,昇任管理制度(特に,試験制度)の観察者の一人としては(といいますか,そんな研究カテゴリーがあるのかもよく分かりませんが),要観察現象の一つ.
もちろん,自治体の人事管理においても「ダイバーシティ(多様性)」*3に基づく運営の幅を広げることを許容されうるのであれば,社会人経験者・民間人を管理職として採用する枠を整備・拡大することも制度上は想定される.例えば,東京都の職員採用改正による「キャリア活用採用選考」もまた,そのような発想に基づくものだろうか*4.ただ,これが余り度を過ぎた場合,成績測定をめぐり,良かれ悪しかれ政治的任用と成績主義の間でのディレンマは避けられないか.なかなか難しい.

*1:竹内洋『選抜社会』(リクルート出版,1988年)86頁

*2:青木昌彦『日本経済の制度分析』(筑摩書房,1992年)61頁

*3:永井隆『人事と出世の方程式』(日本経済新聞社,2008年)149頁

*4:東京都HP(東京都人事委員会:報道発表資料:2008年8月21日)「東京都職員採用試験制度の改正について