大手スーパー「イオン」(本社・千葉市)の大型店「新能代ショッピングセンター(SC)」(仮称)の進出をめぐり、意見が二分した能代市。今年2月、能代市議会が、出店反対の商店主たちが提出した出店の是非を問う住民投票条例案を否決して10か月が過ぎた。だが、出店に向けた具体的な動きは、いまだに見えないままだ。市や市民の間には「出店しないのでは」との不安やいらだちも広がり、市はイオン側に対し、出店について早急に状況を聞く方針を決めた。(松本貴裕)
 能代市は、新能代SCに対し、税収増や約1800人の地元雇用など、経済効果を期待している。斉藤滋宣市長は11月26日の定例会見で、急激に悪化した経済状況に触れ、「万が一、出店しないということになれば影響が大きい。経済が厳しいなかで、イオンとしても出店が難しい面もあるのかもしれないが、今までの経緯を考えれば、きちんと説明してほしい」と注文を付けた。ある市幹部も「イオンは新規出店できる経営状況にあるのだろうか。能代への出店はこのまま塩漬けになるのではないか」と不安を漏らす。借地の仮契約を結んだ出店予定地の地権者の一人は「こんなに時間がかかるのは、経済が厳しくなって出店が危うくなっているからではないか。来年の稲の作付けができるのか、できないのか分からず、いらいらを感じている」といらだちを募らせる。出店に反対する住民らが、出店の是非を問う住民投票を実施する条例案を直接請求し、市議会が臨時議会で否決したのは今年2月。斉藤市長は、予定地の農業振興地域指定の解除に応じることを決め、事実上、出店を認めた。
 出店時期について、イオン側は当初、市に対して「(大型店の郊外出店を制限する)改正都市計画法が完全施行される2007年11月に間に合わせたい」と説明していたという。予定地は半分以上が「準工業地域」のため同法の土地規制は適用されないが、指定解除の手続きは2月下旬にすでに終了している。出店するにはさらに、都市計画法に基づく開発許可や、大規模小売店舗立地法大店立地法)に基づく出店許可の申請手続きなどが残っている。大店立地法の手続きは1年近くかかることもあり、市産業振興部の土崎銑悦次長は「農振除外の手続きが終われば、速やかに建設に向け具体的な動きがあると思っていた。反対運動があったことを考慮に入れても、予定が遅れているという認識だ」と話す。イオンリテール・東北カンパニー(仙台市)の広報担当は、読売新聞の取材に対し、出店時期について「市に大店立地法に基づく申請をした時点で公表となる」と明らかにしないが、「出店を検討していることに変わりはない。まちづくり3法で大型店の出店に制限があるなか、土地をきちんと確保できている物件を手放すことはない」としている。
◆新能代SC
予定地は、能代市鰄渕(かいらげぶち)地区の能代インターチェンジの北側200メートルほどにある。敷地面積9万698平方メートル、店舗面積3万5000平方メートル。

同記事では,能代市において,大型ショッピングセンターの出店時期について,未確定な状況にあることを紹介.2月9日付の本備忘録において,直接請求による大型ショッピングセンター出店に関する住民投票条例案への廃案についての記事のその後.同記事にあるように,同市では2007年2月14日付で,同店出店に伴う影響評価を行っている.同評価結果からは,170億円以上の売上げとともに,核店舗,専門店,警備・清掃等を含めて1810名の地元雇用と,市民税・固定資産税の9,800万から1億100万円の増収も見込まれている*1.その効果は一定程度見込まれているといえそう.
10ヶ月前には「住民投票」による判断の機会は回避された同案件.一方で,今日の未曽有の経済危機のためか,出店企業側の観点からすれば,大型ショッピングセンターの出店に際しては,5月9日付の本備忘録で取り上げた,企業誘致において,その兆しも見られそうな「足による投票」(voting with the feet)の様相が,いわば「期日前投票」(正確には「無投票」か)によって,その判断が示される結論となるのだろうか.「投票」をめぐる現象としては,興味深い.