松本市の菅谷昭市長は10日、市議会12月定例会一般質問で、乳幼児期から自立するまでの子どもの総合的な支援の窓口となる「こども部」を来年度新設する方針を明らかにした。子育てや就学、発達障害児への支援など、現在の健康福祉部と市教育委員会教育部の部署を再編・一元化し、市民が利用しやすい体制を整える。
 菅谷市長は、1期目に最重要課題として取り組んだ「健康づくり・危機管理・子育て支援」の「3Kプラン」を2期目も推進すると強調。「子どもの成長段階に応じ、一貫してかかわることのできる体制づくりは時代の要請だ」と述べ、こども部設置を子育て支援の一環と位置付ける考えを示した。青木豊子氏(翠政会)の質問に答えた。市によると、こども部は健康福祉部の保育課と子育て支援課、市教委教育部の青少年課などの業務を引き継ぐ。子育て支援や放課後の児童預かり、発達障害児支援など、乳幼児期から18歳までの子どもにかかわる施策の総合的な窓口となる。保育園と幼稚園の管理運営業務も同部に一元化する。12日の総務委員会で市議会側と協議し、来年2月の定例市議会に部新設の条例案提出を目指す。
 県や同市によると、子どもにかかわる施策を包括的に行う部は上田市の「こども未来部」や塩尻市の「こども教育部」がある。

同記事では,松本市において,来年度より「こども部」を設置する方針する方針であることを紹介.18歳までの「子ども」を対象とした施策を総合的に対処するため,健康福祉部の保育課及び子育て支援課,教育委員会教育部青少年課が所掌している事務を移管し,新設部とする模様.
「こども」(又は,「子ども」)を名称にもつ部署(特に,市長の直近下位機構として)が増加しつつある模様*1.例えば,政令指定都市のみを見ると*2,札幌市の子ども未来局,仙台市の子供未来局,横浜市のこども青少年局,静岡市の保健福祉子ども局,名古屋市の子ども青少年局,大阪市のこども青少年局,堺市の子ども青少年局,北九州市の子ども家庭局,福岡市のこども未来局と9都市で採用されており,政令指定都市では同名称を用いることは既に多数派の状況にある.
個人的には,児童福祉系部署の名称変更程度なのか.将亦,幼保一元化対応*3なのかなあと思いつつ,これまで同部署の設置については殆ど未観察の対象の一つ.ただ,10月4日付の本備忘録でも取り上げた八王子市の取り組み等を始めとする,同名称による新機構の創設を報道する記事もしばし目に付くことからすれば,よくよく考えてみれば,児童養護,少子化対策,青少年育成それぞれの林立する政策が,政策が投射される対象である「子ども」に焦点を当てて「政策の総合化」*4が図られつつあると考えれば,興味深い現象.ただ,「こども政策」に対する「師団」(division)としての機構するためには,まずは活動領域確定も必要であり,更には,これらの行政需要と確定された活動領域に対応するための「十分な専門性」*5の確保が必要となる.特に活動領域の確定においては,12月3日付の本備忘録でも取り上げた「無保険の子ども」のような保険の世界との線引きも切実な問題か.少し,調べてみようかなとも思うテーマ.

*1:神奈川新聞(2008年11月20日付)「組織改編で健康福祉部など創設/大和市」タウンニュース(2008年12月12日付)「綾瀬市組織改編「インター推進室」など設置

*2:内閣府HP(少子化対策)「都道府県、指定都市の取り組み

*3:例えば,神戸新聞(2008年12月12日付)「児童福祉と教育を一元化し専門部署 丹波市

*4:御厨貴『政策の総合と権力 日本政治の戦前と戦後』(東京大学出版会,2004年)4頁

政策の総合と権力―日本政治の戦前と戦後

政策の総合と権力―日本政治の戦前と戦後

*5:稲垣浩「戦後府県「総合行政」をめぐる国と府県」『法学会雑誌(首都大学東京東京都立大学法学会編集)』第47巻,第2号,259頁