県内に在住する外国人とともに地域づくりを進めようと県は、外国人と行政の橋渡し役となる「県多文化共生キーパーソン」制度を新設した。言葉が分からず仲間同士で固まりがちな外国人に対し、行政情報を伝えたり、生活相談に応じたりする。これまで手段のなかった災害時の安否確認の役割も担う。既に県東部を担当する計四十五人のキーパーソンが誕生しており、県は二〇一一年度までに全県に広げることを目標にしている。
 本県の外国籍県民は十一万五千九十八人(〇七年)で、十年前の一・七倍に増え、県の人口の1・6%を占める。増え続ける外国人とどう共生するのか―。県は〇六年に有識者による検討委員会を立ち上げ、議論を行ってきた。その結果、検討委から日本語のうまい外国人や交流経験が豊富な日本人を「つなぎ役」にして、生活ルールや行政情報を伝達してもらうことが必要だと提言。県は多言語による相談窓口やホームページを設置しているものの、「相談窓口を外国人に知らせて」との要望も多く、行政情報をどう届けるかが課題となっている。
 キーパーソンの主な活動は、ごみ出しなどトラブルが起きやすい生活ルール、県や市町村の行政情報を外国人に知らせる。生活相談を受けた場合、県が作成した「暮らしのガイド」を基に市町村や団体の相談窓口を教える。逆に外国人からの意見や要望を行政に報告し、住みやすい地域づくりを目指すことも重要な任務。災害時には避難所などの情報を伝えるという。県は外国人が多く、支援に熱心な団体が点在する県東部にまず設置。市町村からの推薦を受けたボランティアや日本語指導をする日本人、在住歴の長い外国人、留学生がいる独協大、文教大の担当職員ら四十五人が委嘱を受けた。キーパーソンはボランティアで、年二回県に活動を報告する。
 県国際課は「まだ秋田県や長野県の二県でしか同様の制度はなく、先駆的な取り組み」としている。

同記事では,埼玉県において,外国人住民と県や市町村との「つなぎ役」として「多文化共生キーパーソン制度」を導入したことを紹介.
同制度に関する詳細については,同制度は,『埼玉県多文化共生推進プラン』に基づく設置されており,同プランでは「外国籍県民県政モニター経験者,留学生,外国人学校の経営者など,日本語が堪能な外国人や外国人との交流経験が豊富な日本人住民にキーパーソンとなってもらい,行政情報の伝達や地域の生活ルールの周知などを円滑に行う仕組み」として,「地域の行事への参加や自治会への加入の促進などについて,日本人と外国人のつなぎ役としての役割」*1があるとされる.同県HPを参照*2すると,同記事にもあるように,今回は東部地域(6市1町:春日部市草加市越谷市八潮市三郷市吉川市松伏町)での45名に委嘱されており,「県や市町村などの行政情報」「外国人住民に対し地域の生活ルール」の伝達,「地域の外国人住民からの生活相談」,「地域の外国人住民からの意見・要望などを県や市町村に伝達」,「災害時における緊急情報の伝達及び外国人住民の安否確認などの協力」を行うこととされている.まさに「つなぎ役」ともいえる業務.
極々一般的な方は然り,例え,国内では各種専門的知見を取得されている方であっても,一般的な国レベルの行政情報と比べても,事前の情報取得が困難であることもあるのだろうか,実際に国外へ訪問すると,不安内となる自治体行政関連の情報.そのため「多文化共生」という政策課題を置く場合には,当該情報に精通し,更にそれを伝えることが可能な「媒介」者を置くかは制度上の課題.ただ,制度整備は勿論ではあるものの,複雑な自治体行政情報に関して,適切な提供と実質的な浸透を叶えるためには,「媒介」者が「寛容をどこまで拡げられるべきなのか」*3という,属人的要因に依拠せざるを得ない部分もあるのだろうか.他県の動向も踏まえて,考えてみたい.