青森県は7日、2010年度当初予算の編成方針を各部局に通知した。新政権による制度の大幅な見直しに対応するため、これまでのシーリング(見積もり限度額)に代えて、「見積もり目安額」を導入、政策経費を09年度当初予算比で3.7%削減するとの目標を定めた。重点事業予算枠は09年度と同額の20億円を確保した。
 見積もり目安額は、09年度から3カ年で政策経費を10%削減するという複数年度シーリングを土台に各部局が算定する。新政権の10年度予算編成の方針を受け、部局間で財源の過不足が生じた場合は調整する。
 また、公共事業関係費も国の予算措置に対応するため、県土整備、農林水産の両部がそれぞれ部内での事業の優先順位付けを徹底した上で、09年度当初比3%削減を目安に見積もる。重点事業には、東北新幹線新青森開業対策など3点のほか、農商工連携による食品製造業などの活性化を図る「あおもり『食』産業」と、子育てや人材育成などを後押しする「子ども総合支援」を盛り込んだ。
 県財政課は「見積もり目安額は上限ではなく、国の方針次第ではさらに削減する可能性もある。情報収集に努め、予算編成作業を進めたい」と説明している。

同記事では,青森県において,予算編成におけるシーリングを廃止し,「見積もり目安額」制度を導入することを紹介.同制度については,同県HPを参照*1.「国の制度見直しへの対応や,部局間での財源の過不足の調整のため,従前の、限度額内で各部局の予算見積りを行う上限となる見積限度額に代えて当面の見積り作業の目安として設定するもの」と説明.具体的には,「部局政策経費」に対して,「複数年度シーリングを活用」するという.
「見積限度額」と「当面の見積り作業の目安」との差異については,同記事及び同資料のみからは,分かるようで,良く分からないものの,いずれにせよ,特定の額以内での「財源のやりくり算段」*2を求めるような,分散的で緩やかなシーリング方式という理解を行うことが適当なのだろうか.要確認.
シーリング方式は,「要求限度の範囲内で,優先順位の選択を厳しく行うことを要求側に課することで,安易な予算要求を抑える機能」をもち,また,一律マイナスシーリング方式では,「特定経費の減額阻止を求める政治圧力に対して,有力な緩衝措置となってきた」*3とも認識されてきた.本備忘録でお馴染みの,財団法人日本都市センターによる,全国の市区に対する2007年度(2007年11月〜2008年1月)に実施したアンケート調査(回収率74.0%)の結果*4を確認してみると,このような「要求予算額の設定又は強化」を行った市区は52.8%とあり,これは,1996年に実施した同調査結果では39.1%*5であったことと比べれば,13.7ポイント増加と,その採用は広がりがある.同方式におけるシーリングの設定自体は集中的ではあるものの,その選択は要求側にある分散的な仕組み.
「経営体は全てある程度集中的であり,ある程度は分散的である」とされ,「一般論としていえば,環境の動態化は分散化で対応し,環境の安定は集中化で応える」*6との分析結果からすれば,既存のシーリング方式は設定及び査定も実際的には集中的となり,動態的な環境への対応へは,同方式では応じきれない,とも考えられたのだろうか.興味深い.

*1:青森県HP(県政情報予算・決算・出納平成22年度予算関連情報)「「平成22年度当初予算の編成について」ポイント

*2:小島昭『現代の公共政策』(筑摩書房,1990年)367頁

現代の公共政策

現代の公共政策

*3:長谷川淳二「予算編成のトレンド」『財政運営システムと予算の新展開』(ぎょうせい,2007年)153頁

財政運営システムと予算の新展開 (シリーズ 地方税財政の構造改革と運営)

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*4:財団法人日本都市センター『分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究』(2008年3月)92頁

分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究-市役所事務機構アンケート調査結果報告-

分権型社会の都市行政と組織改革に関する調査研究-市役所事務機構アンケート調査結果報告-

*5:財団法人日本都市センター『都市における新しい行政のあり方等に関する調査』(1997年)70頁

*6:田尾雅夫「市民参加と自治体 市役所は環境変化にどのように対応しているのか」『都市とガバナンス』Vol.12,2009年9月,20頁

都市とガバナンス 第12号

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