五木村議会は、議員報酬の一部に成果主義を導入する方針を固めた。具体的な評価方法などを詰め、来年4月からの実施を目指す。11日開かれた全員協議会で申し合わせた。
 村議会などによると、同村議の報酬は月額21万3千円で、このうち6割を基本給とし、残り4割に「能力給」を導入。一般質問や政策への提言、議場外での活動などを評価委員会が判断し、支給額を決める。評価委メンバーには村執行部や議員、議員OB、有識者らを想定している。
 同村の人口は、川辺川ダム計画に伴い、ピーク時の4分の1の約1400人に減少。提案した照山哲栄議員は「議員報酬にも競争原理を取り入れ、議会が切磋琢磨[せっさたくま]して村再建に取り組む姿勢を見せたい」と話している。議員報酬をめぐっては、福島県矢祭町議会が2008年から日当制を導入している。
 行政法が専門の斎藤文男・九州大名誉教授は「議員報酬の性格上、成果主義はなじまない。議員の働き方を評価するのは有権者であり、評価の基準も立てにくいのではないか」と話している。(本田清悟、臼杵大介)

同記事では,五木村議会において,議員報酬の一部に成果主義を導入する方針を紹介.
同記事を拝読すると,現在の議員報酬のうち,まずはその「6割」を「基本給」として,残り「4割」は「能力給」に当てる模様.そして,「能力給」の対象となる,評価項目としては,同記事では「議場外などの活動など」と,「議場外」に焦点が当てられたやや限定的な評価項目として紹介.一方で,2009年12月12日付の朝日新聞の報道を拝読すると,「評価項目は一般質問や委員会審議での村政への貢献度,マニフェスト(公約)の実現度,議場外での活動など」*1とやや広範囲である様相を紹介.また,その評価方式としては,「村執行部や議員,議員OB,有識者ら」から構成される「評価委員会が判断」することを「想定」されており,「いわゆる360度評価システム」*2的な評価方式とも位置づけられそう.
2009年5月19日付の本備忘録にて紹介した田口一博先生の分析結果からは,「千差万別」*3とされる「個々の議員の活動」.勿論,一番の有効な評価方法は,有権者による(業績)「投票」とも思わなくもないものの,「業績」自体が「多面的な概念」*4であることからすれば,多層的な評価方式としても,興味深い取組.その場合,「能力評価と業績評価の二本立て」*5も想定されなくもないものの,その千差万別な職務の統一的な測定を確保するうえでも,同村のように,評価方式としては「業績評価」に焦点を当てた場合,例えば,事前の「目標設定の段階」*6から,利害関係者が参加することもまた一つの方式か.
更に,「議員の活動に対しては,諸外国や戦前の地方議会に見られるように実費のみ支給し,原則として無報酬であるべきとの意見がある一方,現在我が国の地方議会が有する権能,求められる役割の大きさ等からすると,一定水準の議員報酬は保障されるべきとの意見もあったところである」*7なかで,議員もまた「外的報酬」ならぬ「内発的動機付け」*8による職務遂行を果たすこととなれば,「能力給」という金銭的報酬以外での動機づけの方式も種々考えられそう(例えば,2008年6月11日付の本備忘録にて取りあげた功績顕示方式もまた,その一つかもしれない).実際の制度化の様相は,要経過観察.

*1:朝日新聞(2009年12月12日付)「働かぬ議員、報酬減らすべし 五木村が「成果主義」検討

*2:OECD編著(平井文三監訳)『公務員制度改革の国際比較』(明石書店,2009年)57頁

*3:田口一博「2008年地方自治法改正をめぐって(下)」『自治総研』2008年10月号,第360号,56頁

*4:前掲注2・OECD編著2009年:55頁

*5:稲継裕昭『プロ公務員を育てる人事戦略』(ぎょうせい,2008年)162頁

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

プロ公務員を育てる人事戦略―職員採用・人事異動・職員研修・人事評価

*6:前掲注5・稲継裕昭2008年:167頁

*7:総務省HP(組織案内審議会・委員会・会議等地方制度調査会会議資料第29次地方制度調査会の議事要旨)第29次地方制度調査会『今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申』(平成21年6月16日)31頁

*8:高橋伸夫虚妄の成果主義』(日経BP社,2004年)171頁

虚妄の成果主義

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