岡山県高梁市は、市内で開催される同窓会経費の一部を助成する「高梁市ふるさと回帰同窓会開催助成金制度」を今月25日からスタートさせた。同窓会を故郷へのUターンを考える機会と位置付け、同じ学校の同窓生が10人以上出席し、うち市外居住者が3割以上いる場合が対象。中山間地域の同市は少子高齢化による人口減少が続いており、同窓会効果に期待を寄せている。
 3年に1回の開催を限度に、案内状に定住促進のパンフレットを同封することや、会で市のマニュアルに沿って「暮らしやすさ」をPRしてもらうことも条件。開催1週間前までに申請し、5万円を上限に出席者数に1000円を乗じた金額を助成する。同窓会を出身者に定住を勧める機会ととらえ、PRパンフを配ってもらう自治体は増えている。県人会や同窓会などの開催案内でパンフを同封すれば1通につき90円を上限に助成(徳島県)したり、案内状制作・発送や通信費負担などで町内での同窓会開催を手伝う(京都府伊根町)などの例もあるが、経費助成は珍しく、総務省地域自立応援課の担当者も「同窓会経費の助成は聞いたことがない」と話している

同記事では,高梁市における同窓会経費への助成の取組を紹介.2009年6月14日付の本備忘録では,同記事でも紹介されている伊根町における同窓会業務の代行の取組を紹介したものの,同市では,同窓会に対する経費助成を実施.同取組の詳細については,同市HPを参照*1
「助成の対象となる同窓会」としては,「同じ学校を卒業した者同士が,当時を振り返るために集まるもの」と定め,あわせて「高梁市内で開催されること」,「10人以上の出席で開催されるもので,市外居住者が出席者全体の3割以上のもの」と限定(同要綱第2条).「助成金の額」は,「同窓会に対する助成金の額は出席人数に1,000円を乗じて得た額」として「50,000円を限度」として,「同じ同窓会への助成金の交付は3年に1回を限度」(同要綱第4条)とされている.
同取組では,「助成の条件」が特徴的といえそう.つまり,「市外居住者への案内に,市の配布する定住パンフレット等を同封すること」と「同窓会の中で,市が示すマニュアルによって,定住について説明すること」(同要綱第3条)が要件とされており,単に旧友との再会を懐かしむために催される会合への助成を行うものではない.「ふるさと回帰のきっかけをつくることを目的」(同要綱第1条)とされている.一方で,同会合終了後には,「幹事は,同窓会の終了後30日以内に高梁市ふるさと回帰同窓会開催助成金実績報告書」に「必要な書類を添えて,市長に提出」(同要綱第7条)することは義務付けられてはいるもの,同要綱内では「助成金の返還」事由も定められているが,「この要綱の規定に違反したとき」,「虚偽または不正な申請により助成金の交付を受けたとき」(同要綱第7条)と限定,「ふるさと回帰」の成果までを,求めるものではない模様.
確かに「日本国憲法は,すべての住民は,少なくとも1つの憲法上の地方公共団体に属することを念頭に置いている」*2ものの,方や,場合によっては,その実際として,幾つもの地域との「緩やかなつながり」*3に属している方々を想起すれば,同取組を通じて「ふるさと」と「外の地域との結びつき」*4にも資するものとなると興味深そう.要経過観察.

*1:高梁市HP「高梁市ふるさと回帰同窓会開催助成金について」及び「高梁市ふるさと回帰同窓会開催助成金交付要綱」

*2:宇賀克也『地方自治法概説 第2版』(有斐閣,2007年)23頁

地方自治法概説 第2版

地方自治法概説 第2版

*3:西川一誠『「ふるさと」の発想』(岩波書店,2009年)136頁

「ふるさと」の発想―地方の力を活かす (岩波新書)

「ふるさと」の発想―地方の力を活かす (岩波新書)

*4:前掲注3・西川一誠2009年:146頁