大阪府橋下徹知事は14日、地域主権を確立するため、現在の地方自治体に課税権や立法権を与えて「地方政府」として再編する改革の私案を発表した。政府が設置し、同日に開かれた「地域主権戦略会議」の準備会合で提案したという。
 私案では、市町村を住民に身近な行政サービスを担う「基礎地方政府」と位置付ける一方、政令指定都市は解消し、都道府県を道州制に移行させインフラ整備を行う「広域地方政府」とするよう提唱。地方の自立的な経営を可能にする税財源移譲や課税権などを盛り込んだ「地方政府基本法」の制定を目指す考えを強調した。
 また「議会内閣制」を導入し、現在は首長一人の権限となっている予算編成など行政の経営判断に議員が参画することや、教育委員会、会計などの制度改革も提案している。

政府は14日、最重要政策となる地域主権改革を進める「地域主権戦略会議」(議長・鳩山由紀夫首相)の下部組織として、国の出先機関の原則廃止など、改革の分野ごとに具体策を話し合う四つの作業グループを設置する方針を固めた。
 今年夏に地域主権戦略大綱(仮称)をまとめるため、分野ごとに議論を深める必要があると判断した。近く開催する戦略会議の第2回会合で設置を正式決定する見通し。4分野は出先機関の原則廃止のほか(1)地方向けひも付き補助金の廃止と一括交付金化(2)国が法令で地方自治体の仕事を縛る「義務付け」の見直し(3)都道府県から市町村への権限移譲―となる予定。
 グループのリーダーとなる主査は、戦略会議メンバーの有識者を充てる方向で調整しており、出先機関廃止は前三重県知事の北川正恭早大大学院教授、一括交付金化は地方財政審議会会長の神野直彦関西学院大教授が務める見通しだ。

両配信記事では,地域主権戦略会議における検討事項に関して紹介.
第1記事では,地方自治法改正による「地方政府基本法」制定に向けて,2010年1月1日付の産経新聞により報道*1された,大阪府知事による「私案」が同会議の準備会議において提示されたこと.第2記事では,同会議において,「国の出先機関の原則廃止」,「地方向けひも付き補助金の廃止と一括交付金化」,「国が法令で地方自治体の仕事を縛る「義務付け」の見直し」,「都道府県から市町村への権限移譲」に関する4分野の作業グループ設置される方針であることを報道.
第1配信記事における,地方自治法改正に関する審議に関しては,「目的設定局面」*2の一つとしても整理できそうな今回の提案は,2010年1月14日付の産経新聞の報道によると,同知事としては「今後の議論の参考にしてほしい」と述べた」*3と性格の提案のようであり,2009年12月26日付の本備忘録において取りあげた「第3の組織」と称される「地方行財政検討会議」とともに,同一課題に対して地域主権戦略会議においても「多極分散型」*4に審議されるのだろうかは判然とはしない.
第2配信記事における4つの分野に関しては,2分野目である「一括交付金化」を除き,3分野に関しては,現存の地方分権改革推進委員会におけるこれまでの審議及び各勧告等の堆積がある課題.地域主権戦略会議という場においては,どのような制度変化が観察されるかは,興味深いところ.下名個人的には,やはり「都道府県から市町村への権限移譲」に関心があるものの,地方分権改革推進委員会における『第1次勧告』では,既存の「条例移譲」対象事項を下に,「実績に基づく移譲論」*5の観点からの「法定移譲」化の対象が,「市に優先的に権限移譲を進める」*6路線が選択されていたものの,同配信記事を拝読すると「市町村」とその対象が拡張されている模様.連続する審議課題がどのように「重畳化(layering)」*7されるかは,要経過観察.

*1:産経新聞(2010年1月1日付)「橋下知事「地方政府基本法」提唱

*2:加藤雅俊「制度変化にけるアイディアの二つの役割」小野耕二編著『構成主義的政治理論と比較政治』(ミネルヴァ書房,2009年)163頁(研究費で購入.拝読させていただくと勉強になる論文ばかりですね)

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

構成主義的政治理論と比較政治 (MINERVA比較政治学叢書)

*3:産経新聞(2010年1月14日付)「地方に課税・立法権 橋下知事が地方政府基本法私案

*4:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)206頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*5:松井望「都道府県と市町村の協議と受容圏−「条例による事務処理特例」制度の創設について」『都市政策研究(首都大学東京都市政策研究会・編集)』第2号,2007年,140頁

*6:地方分権改革推進委員会HP(委員会の勧告・意見等)『第一次勧告 生活者の視点に立つ「地方政府」の確立』(2008年5月28日)27頁

*7:James Mahoney, Kathleen Thelen.2009.Explaining Institutional Change: Ambiguity, Agency, and Power.Cambridge UP:16

Explaining Institutional Change: Ambiguity, Agency, and Power

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