捨てられるはずだった傘を、観光名所で誰でも使える「置き傘」として再利用する「みんなのeRe:kasa(エリ・カサ)」活動が、昨年12月13日から金沢市内で始まった。ところが、1500本用意した傘は、わずか1か月あまりで1000本以上が行方不明になっており、利用者の善意に頼る活動が、早くも岐路に立たされている。
 この活動は、歌手の竹仲絵里さんの呼びかけに、市や県内企業が賛同して始まった。専用の傘立てを、JR金沢駅構内の県金沢観光情報センターなど、観光客が多く集まる市内21か所に設置。1か所につき約30本の傘を置き、少なくなったら随時補充している。
 置き傘になるのは、ごみとして捨てられていたものや、市民が使わなくなって寄付した傘で、目印にイラストとロゴがプリントされている。ひがし茶屋街などの観光名所に置かれた傘は、急に雨が降った時には、あっという間になくなるといい、金沢観光ボランティアガイドの井村公子さん(66)は「観光で訪れた人も喜んでくれている。良い活動だと思う」と話す。
 傘を借りる際には、名前や連絡先の記入など一切の手続きは必要なく、気軽に利用できる。それだけに、借りた人が返したかどうかの確認はできず、市観光交流課の担当者も「こんなに傘が減るなんて」と頭を抱える事態に。観光客には、電車に乗って金沢を離れる前に金沢駅で返却するよう促しているが、「借りたら返す」という原則が守られていないのが現状だ。
 2月以降は、市が活動を引き継ぐ方針で、少なくなった傘は、市が随時補充している。しかし、傘の利用頻度が高い冬は、ごみとして出される数が少なく、同課の担当者は「1週間に何百と集まると思っていたのに」と、補充が思惑通りに進んでいないことを認める。市は来月から、設置場所を12か所に減らして置き傘を管理するといい、同課では「みんなで共有して使ってもらうことが活動の趣旨。優しい心のリレーをしてもらえれば」と呼びかけている。

本記事では,金沢市における「置き傘」の取組状況について紹介.同取組に関しては,同市観光協会HPを参照*1.「誰でも自由に借りることができ」,「市内21カ所」に「無料で設置」する取組.
2009年12月21日付の北國新聞では「利用後の返却もあるという」*2との報道はなされてきたものの,本記事によると,現存としては,500本以下の状況の模様.取組の趣旨に反して,その成果は,悩ましい.
本記事にいう「気軽に利用」と「借りたら返すという原則」とのディレンマを解消するためには,上記の「無料で設置」を改め,2009年12月24日付の本備忘録でも記した「ヨーロッパに初めて登場したママチャリ」である,パリの「ベリブ」*3において,その返却及び回収履行のために設けられた「容赦なき課金」*4の仕組みが必要となるのだろうか(もちろん,課金としても徴収する仕組みとなると,ビニール傘購入への誘因ともなりかねないですが),考えてみたい.

*1:金沢観光協会HP(新着情報一覧)「2009年12月13日:置き傘プロジェクト『みんなのeRe:kasa』はじまりました♪

*2:北國新聞(2009年12月21日付)「置き傘のもてなし 金沢、大雪で観光客に好評

*3:疋田智『自転車の安全鉄則』(朝日新聞,2008年)47頁

自転車の安全鉄則 (朝日新書)

自転車の安全鉄則 (朝日新書)

*4:前掲注4・疋田智2008年:44頁