仙台市は2日、2010年度の庁内組織改編で「企画調整局」を新設する方針を固めた。組織横断的な政策の立案・調整機能の強化が狙い。現行の政策調整、総務、企画市民の3局を、新設局と「総務局」「市民局」に再編し、本庁の市長部局は現行の10局体制を維持する。
 企画調整局には「プロジェクト企画課」を新設。奥山恵美子市長が昨年の市長選でマニフェスト(公約集)に掲げた「ミュージアム都市構想」など、市長肝いりの計画を推進するなど政策秘書的な役割を担う。次期総合計画の策定や、部局をまたがる課題の調整なども担当する。企画市民局から総合政策部、政策調整局から調整課を移す。市民局の名称は4年ぶりの復活となる。企画部門と切り離す背景には、奥山市長が目指すまちづくりへの市民参画を推進する狙いがあるとみられる。
 現行の企画市民局の市民生活部は「市民協働推進部」に改編。地域政策部、文化スポーツ部と合わせ3部で構成する。市民活動支援室は「市民協働推進課」に格上げし、市民活動の支援態勢を充実する。総務局には、政策調整局から秘書課、広報課、危機管理室を移管する。内部調整、広報機能などを集約する。
 市が局単位で組織を再編するのは、07年度に政策調整局を新設して以来、3年ぶり。市総務局は「政策調整機能と企画機能の集約で作業の効率化を図る。市民局の独立で市民協働の取り組みをさらに充実させたい」と話している。市は市議会2月定例会に、事務分掌条例改正案を提出する。

本記事では,仙台市における機構改革の方針を紹介.
伊藤正次先生による,「官房系部局の多様化」を踏まえた,政令指定都市における企画部局の類型によると,①「総務局・財務局から独立した企画局を設置する」「企画独立型」,②「企画機能を都市計画機能と結合して局を設置する」「企画・都市計画型」,③「総務局の中に企画部を設置する」「総務・企画型」,④「企画機能を財政機能と統合する」「企画・財政型」*1の4つに整理されている.そして,2005年迄の政令指定都市における企画部局の特徴としては,「企画独立型」が「1960年代以降漸増」し「今日最もポピュラーな組織形態」*2と分析されている.また,同類型分析では,仙台市に関しては,2005年迄は「企画独立型」*3が継続的にその特徴をもつものとして位置付けられている.
ただ,2009年8月21日付の本備忘録にて触れた前市長期に,本記事においても言及介されている「政策調整局」が「急激な社会情勢の変化や市民ニーズの多様化、危機管理体制の強化の必要性の高まりなどにより,迅速かつ政策融合的に対応すべき政策課題が増加している状況を踏まえ,各種施策や事務事業の政策調整をより適切に行うため」*4に新設されて,「秘書に関する事項」「広報に関する事項」「重要施策の調整に関する事項」「危機管理に関する事項」を所掌し,「企画局」は「企画市民局」と改組され,「重要施策の総合的企画に関する事項」「統計に関する事項」「国際交流に関する事項」「区政及び市民生活に関する事項」「文化及びスポーツの振興に関する事項」*5を所掌されてきた.そのため,「各事業部局の何れにも属さない「残余」の業務」*6としての「市民局」的所掌事務と,上記4分類でいう「企画独立型」とが結合された形態として「企画部局」が位置付けられていた,とも整理ができる.
下名個人の関心からは,2009年10月23日付の本備忘録で記した自治体における庁議制度という「自治体内会議」の観点からも,同市における「政策調整局」と「企画市民局」間での「全庁レベルで行う総合調整」*7をめぐる「調整」関係という,「総合調整の総合調整がなされる構図」*8の把握を試みたいと思いつつも,その確認をさせていただくことができず,誠に残念.
設置当初は,「国,地方を問わず,行政を円滑に推進していくため,官僚機構,行政機構にどうしても付随する,そういった縦割りの弊害をできるだけ除去していくための進行管理,あるいは総合的な調整機能の発揮,これは国,地方を問わず必要なものと考えて」いるとの認識のもと,「それぞれの部局の政策の間での整合的な総合調整が行われることにより,市民サービスの向上につながる」ことが期待されて設置された「政策調整局」.「企画市民局との役割分担」については,「これは例えば重要政策の総合調整ですとか,三役政策会議というのがございます.こういった政策決定過程の進行管理,マネジメント,広く市政全般にわたる各種の政策の調整ごと,進捗管理を政策調整局に担当させる予定」*9とも述べられてきた.果たして,「全庁レベルで行う総合調整」を巡る,双頭の鷲は,実際にはどのような関係にあったのだろうか.
なお,本記事で紹介されている「企画調整局」が創設されるとなると,上記の4類型の一つである「企画独立型」へと戻ることとなり,これまた,興味深い.

*1:伊藤正次「行政組織の構造と変遷」財団法人東京市政調査会編『大都市のあゆみ』(指定都市市長会,2006年)232頁

大都市のあゆみ

大都市のあゆみ

*2:前掲注1・伊藤正次2006年:232頁

*3:前掲注1・伊藤正次2006年:232頁

*4:仙台市HP(市議会)「平成19年第1回定例会(第1日目)(2007年2月13日)」(梅原克彦市長・発言)

*5:仙台市HP(仙台市例規)「仙台市事務分掌条例」(昭和34年10月5日,仙台市条例第20号)

*6:前掲注1・伊藤正次2006年:234頁

*7:前掲注1・伊藤正次2006年:215頁

*8:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)248頁

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

*9:仙台市HP(市議会)「平成19年第1回定例会(第2日目)(2007年2月19日)」(梅原克彦市長・発言)