広島県湯崎英彦知事は19日、2010年度の組織改編を発表した。新たに局長級の経営戦略審議官のポストを設け、重要課題への対応の迅速化やマニフェスト(公約集)の実現に向けた政策立案機能の強化を狙う。
 新設ポストの経営戦略審議官は総務局に置く。経営戦略推進プロジェクト・チーム(PT)を経営戦略課に昇格させ、審議官が統括。湯崎知事が県政運営の要に位置付ける経営戦略、経済財政の両会議を担当する。マニフェストの柱である観光振興策「瀬戸内・海の道1兆円構想」の事業化を進めるPTも受け持つ。
 教育や雇用などの分野にまたがる人材育成策の取りまとめ役として、新たに政策監(課長級)のポストもつくり、経営戦略審議官の下に置く。また、「がん対策日本一」に向けたがん対策PTを新設する。

随分と前の記事とはなりますが,広島県における機構改革案について紹介.下名の中心的観察関心として,2009年10月23日付の本備忘録にて記した庁議制度という「自治体内会議体」及び2010年1月24日付の本備忘録にて「○○監」の職名をもつ職.同県の機構改革については,双方からも興味深い取組(本記事,完全に読み落としておりました,お恥ずかしい限りです).詳細については,同県HPを参照*1
まず,「経営戦略機能の強化」を目的として,「総務局に「経営戦略審議官」(局長級)を設置」され,その下に「経営戦略課」*2が配置された組織設計.「経営戦略審議官」のような,同宿の職を配置する場合,2010年2月7日付の本備忘録にて取り上げた鳥取県の「統括監」の新設のように,「○○監」という名称を用いる傾向性は観察できたものの,同県の場合,「経営戦略審議「監」」ではなく「経営戦略審議「官」」の名称を用いられている.これは,同職が,「総括整理職」*3としての所掌を明確にされているだろうか,または,ただ,いわば「「官」の浸透」*4が観察できるのだろうか,その名称採用の由来を含めて興味深い.
一方で,同県では,経営戦略審議官の下に「局横断型の重点施策推進のため,「政策監」(人づくり担当)を配置」することとされている.同監には「関係局との総合調整を実施」*5することを想定されている.これは,寧ろ上記の観察課題である「○○監」に該当しそうであるとともに,「局長級分掌職を助ける課長級の職」*6とも整理できそう.
「これからの自治体では,従来の中央省庁の組織編制に対応した縦割り型組織にとらわれず,明確なビジョン,戦略体系に基づいて,効果的かつ効率的に事業遂行できる組織とする必要があり」*7ともされる機構改革.内部管理・調整機構を所掌する部門は,それらの傾向性を反映しているようにも,読み取ることができそうか.
また,同県では,全庁的な会議体として,「常任メンバー」を「知事,副知事,総務局長,企画振興局」から構成され,設置・運営されてきた「経営戦略会議」*8に加えて,今回の改正で「意思決定の迅速化・円滑化を図るため,局の運営方針等を審議する「局議」を各局に設置」する方針も示されている.同「局議」では,「(局長,部長,幹事課長等」から構成されることが想定されている模様.また,「局議を支援し,企画調整」を行う」ことを目的として,「「経営戦略グループ」を各局に設置」*9することも想定されている.自治体行政機構内での会議体間での「デマケーション」*10については,上記の「経営戦略グループ」から構成される「経営戦略スタッフ会議」を置き,「庁内協議」*11を図られる模様.
下名個人もまた「早く終わる会議は良い会議」*12とも思わなくはないものの,同県の調整機構及び会議体の運用状況に関しては,要経過観察.

*1:広島県HP(県政情報・統計ようこそ知事室へ記者会見知事記者会見(平成22年2月19日))「資料:平成22年度組織体制について」(広島県

*2:前掲注1・広島県(「平成22年度組織体制について)1頁

*3:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)108頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*4:井出嘉憲『日本官僚制と行政文化』(東京大学出版会,1982年)54頁

*5:前掲注1・広島県(「平成22年度組織体制について)1頁

*6:前掲注3・大森彌2006年:111頁

*7:村松岐夫編『テキストブック 地方自治第2版』(東京経済新報社,2010年)119頁(研究費で購入.第1版からは,大凡60頁程が凝縮されつつも,新たに,第1版以降の制度改革の動向,地方議会を中心とした研究動向も追加されているようです)

テキストブック地方自治 第2版

テキストブック地方自治 第2版

*8:広島県HP(平成21年12月の報道提供資料)「広島県経営戦略会議の設置について

*9:前掲注1・広島県(「平成22年度組織体制について)1頁

*10:山谷清志「外務大臣官房の政策管理機能」『年報行政研究40 官邸と官房』(ぎょうせい,2005年)24頁

官邸と官房 (年報行政研究 (40))

官邸と官房 (年報行政研究 (40))

*11:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)184頁

ホーンブック 地方自治

ホーンブック 地方自治

*12:森田朗『会議の政治学』(慈学社,2007年)2頁

会議の政治学 (慈学選書)

会議の政治学 (慈学選書)