フレッシュな新社会人の姿が目立つ都心のオフィス街。このオフィス街で働く人たちの支持を集めているのが路上での弁当販売だ。飲食店のように並ぶ必要もなく、安くてボリューム感もある。売り手にとっても、店舗が不要な上、短時間で売り上げが見込めるうまみがある。ところが、この弁当販売をめぐって、行政が規制に乗り出した。衛生面や売り方に問題があるというのだ。
 お昼前、東京都中央区のオフィス街の路上に、弁当を台車に積み上げた「弁当屋」が現れた。数十メートルに10人ほどの売り子が並ぶ。焼き肉弁当、から揚げ弁当、幕の内弁当……。別の場所で作り、運んできた。ボリュームがあり、ほとんどは500円以下。サラリーマンが並び、次々と買っていく。午後0時半すぎには、売り切れる店もある。
 ほぼ毎日利用するという男性会社員(24)は「コンビニは離れているので、職場のそばで売ってくれるのは便利。安くて量もある」と好意的だ。東京都によると、業者は数年前から千代田、港、中央区などのオフィス街で目立ち始め、2007年の届け出数は900件を超えた。条例では、保健所に行商の届けを出せば販売できる。1日100個を販売する業者は「飲食店のように行列して待つ必要がないので、昼休みを有効に使いたい人にうけている」と言う。
 だが、行政側は業者への監視を強めている。中央区は今年度から「路上弁当販売監視員」を1日6人、年間計152日間巡回させる計画だ。なぜか。行政側が問題視しているのは衛生面だ。中央区は昨年6〜8月に抜き打ちで弁当の細菌検査をした。食べても健康被害の可能性は低いものの、細菌数が基準値を超えて「不良」とされた弁当は、店舗販売が44個のうち13個(30%)だったが、路上販売は37個のうち22個(59%)と高かった。
少なくとも、過去5年間に路上販売の弁当による食中毒は都内では起きていないが、細菌数が基準値の35倍で「鮮度が落ちている弁当もあった」(中央区保健所)という。弁当の温度管理が不十分なケースが多く、細菌が増殖しやすいという。
 都は07年、各区に「路上に売り台などを固定しない」「商品は遮光性のある容器に入れ、温度管理をする」などの通知を出し、路上の弁当販売を減らすよう求めた。これを受け、港区も1年1回の行商届けの更新や新規参入時の審査を厳しくした。現地に職員が足を運びチェックする。こうした規制に対して、ある業者は「弁当は保冷剤の入ったケースに入れ、客に渡す直前にしかケースからは出さないようにしているのに……」と話す。一方、飲食店が問題視するのは商道徳。中央区には「他人の土地で販売している業者がいる」といった苦情がほぼ毎日寄せられる。店の近くに弁当のワゴンが来るという中央区のそば店主(75)は「路上販売はテナント料や固定資産税などのコストがなく、安くなるのは当たり前。本当に迷惑だ」と憤る。働く人の懐に響く問題。どうなるか?

本記事では,中央区及び東京都における路上弁当販売に対する規制の取組を紹介.2009年12月8日付の本備忘録にて取り上げた同区及び同都の取組に関する記事.同区における「路上弁当販売監視員」*1制度の詳細については,同区HPでは,現在のところ,確認できず,残念.
本記事によると,「路上弁当販売監視員」制度を「1日6人,年間計152日間巡回」することによる,いわば「ポリス・パトロール型監視(police patrol oversight)」*2を通じた「情報収集」による,「対応戦略」*3が想定されている模様.「制裁戦略」*4を始めとする「積極的な執行」と「実施体制」*5に要する費用とのトレードオフ関係も想定されそう.本年度の学部演習にて,考えてみようと思う課題の一つ.

*1:中央区HP(くらしに便利な情報保健所・保健センター食品衛生)「路上での弁当販売に関する監視指導を強化します

*2:北村亘『地方財政行政学的分析』(有斐閣,2009年)179頁

地方財政の行政学的分析 (大阪市立大学法学叢書)

地方財政の行政学的分析 (大阪市立大学法学叢書)

*3:森田朗『改訂版 現代の行政』(財団法人放送大学教育振興会,2000年)153頁

現代の行政 (放送大学教材)

現代の行政 (放送大学教材)

*4:クリストファー・フッド『行政活動の理論』(岩波書店,2000年)59頁

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

*5:北村喜宣『行政法の実効性確保』(有斐閣,2008年)33頁

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)

行政法の実効性確保 (上智大学法学叢書)