県が2008年度から実施してきた「CO2(二酸化炭素)ファンド積み立て事業」が09年度で終了した。省エネに家庭レベルで取り組んだ県民は延べ約3万2千人で、CO2削減量は累計約108トンとなった。県は削減量を金額に換算して環境関係の書籍などを購入し、3月末までに県内各市町村の図書館に寄贈するなどして“還元”した。
 事業は県ストップ地球温暖化対策事業の一環。県民から協力者を募り、各家庭の節電、節水などによる消費エネルギーの削減量(前年同月比)を3カ月ごとに報告してもらった。2年間でのCO2ファンド積み立て(削減)総量は▽電気約6トン▽ガス約1トン▽ガソリン約5トン―など。延べ約3万台の車両が協力した「ノーマイカーデー」(年4回実施)で7.1トンを節減、夏至や七夕に実施した「キャンドルナイト」には県内の約3千施設が参加し、17.1トンを積み立てたという。国際的なCO2排出量取引額の最高値(1トン当たり3821.5円)で換算すると約41万円となり、県は相当額で書籍・DVDを計179点購入し、県内32の公立図書館に贈った。
 県地球環境対策課は「地道な活動だが、県民一人一人が環境問題に意識を持つことが大事。引き続き、多くの家庭でCO2の排出削減に取り組む方策を模索していきたい」としている。

本記事では,大分県庁におけるCO2ファンド積立事業の取組成果を紹介.同事業内容の詳細及び同成果については,同県HPを参照*1
同県において「平成17年度の温室効果ガスの排出量」が「4,080万5千t-CO2」 と「京都議定書の基準年(1990年)」からは「10.1%増加」,そして「家庭部門からの排出が16.2%と大きく増加」されたことを踏まえての同事業.同事業の「実施要領」を拝読すると,「大分県内に居住する個人」を「対象者」に「平成20年4月から平成21年3月まで」の「対象期間」で,「家庭において」「電気」,「ガス」,「水道」,「ガソリン・軽油」の「4項目」(1項目以上での応募可)のうち,「前年同月と比べ削減が図れたCO2削減量」を,「3ヵ月を1期間」(「1ヵ月でも応募を可」)で「記入」し「応募」*2する取組.
積立の成果については,「ファンド応募件数」自体は「6,083件」ではあったものの,その他「ノーマイカーデー」で「20,887台」「七夕ライトダウン」で「3,036施設」「スタンプカード」で「2,257枚」を加えて,本記事でも紹介されている「32,263」件(台・施設・枚)が「取り組」まれたことで,「107,824kg−CO2」*3が「積立」られている.
「還元事業」としては,上記の実施要項では,「ファンド積立」,「ファンド積立量(削減量)を県庁ホームページや新聞等で公開」されるとともに,「20年度の積立量に応じ」「平成21年度に植林などの環境事業を実施」*4されることを企図されていたものの,結果としては,本記事にて紹介されているように,同「県内」の「32」の「公立図書館・室」へ,「地球温暖化関係の図書やDVD」を「179」「冊(本)」「配布」された模様.配布された図書及びDVDについても,同県HPにて公開*5
長期的ではあるものの,より直截的にCO2還元を生み出すことも企図されなくもない「植樹」という「還元」の取組から,「小さいサークルを超えてすべての思想の使用者のうちに,知的な営みの新しい在りようを生み出すための道具」*6図書等を通じた「啓蒙」*7戦略へと移行された,と理解することが適当なのだろうか,興味深い.

*1:大分県HP(ストップ地球温暖化!CO2ファンド積立事業のお知らせ)「平成20年度CO2ファンド積立事業実施要領」及び(組織からさがす生活環境部地球環境対策課)「CO2ファンド積立事業

*2:前掲注1・大分県「平成20年度CO2ファンド積立事業実施要領」

*3:大分県HP(組織からさがす生活環境部地球環境対策課CO2ファンド積立事業)「CO2ファンド積立量 」(内訳は,次の通り.「電気」が「5,799.9kg-CO2」,「ガス」が「977.1kg-CO2」,「水道」が「160.9kg-CO2」,「ガソリン」が「5110.0kg-CO2」,「軽油」が「456.0kg-CO2」,「団体」が「4492.0kg-CO2」,「ノーマイカーデー」で「71,020.0kg-CO2」,「キャンドルナイト」で「17,100.0kg-CO2」,「スタンプカード」が「2,708.4kg-CO2」)

*4:前掲注1・大分県「平成20年度CO2ファンド積立事業実施要領」

*5:大分県HP(組織からさがす生活環境部地球環境対策課CO2ファンド積立事業)「配布図書等一覧

*6:リュシアンフェーヴル, アンリ=ジャンマルタン『書物の出現(上)』(筑摩書房,1998)17頁

書物の出現〈上〉 (ちくま学芸文庫)

書物の出現〈上〉 (ちくま学芸文庫)

*7:クリストファー・フッド『行政活動の理論』(岩波書店,2000年)59頁

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)

行政活動の理論 (岩波テキストブックス)