地方に影響を及ぼす国の政策について閣僚と自治体側が話し合う「国と地方の協議の場」設置法案など、鳩山政権が掲げる地域主権改革の関連3法案が7日午前、参院本会議で審議入りした。政府、与党は今国会での早期成立を目指す。
 原口一博総務相は、協議の場について「議長は官房長官を想定している。各政策に責任を持つ関係閣僚らが実質的な議論をできる構成とした」と述べた。自民党二之湯智氏への答弁。審議入りした3法案は(1)協議の場設置法案(2)国が法令で自治体の仕事を縛る「義務付け」を見直す地域主権推進一括法案(3)地方議会の議員定数上限撤廃などを盛り込んだ地方自治法改正案。
 協議の場法案は、政策の企画、立案段階から国と地方が話し合うことで地域主権の推進を図ると明記。関係閣僚と、全国知事会など地方6団体の代表者をメンバーとし、首相が会議を招集、議長を指名する。またメンバーには協議結果の尊重義務があるとしている。
 政府は3月5日に3法案を閣議決定したが、参院先議の方針を打ち出した与党側と、難色を示す野党側の調整が難航。2010年度予算成立後の29日に国会提出がずれ込んだ。

本記事では,「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」,「国と地方の協議の場に関する法律案」(地域主権改革関連2法案)及び地方自治法改正案の参議院において,審議入りされたことを紹介.
2010年3月6日付の本備忘録にて,その閣議決定に関して言及し,2010年3月27日付の本備忘録では国会への提出状況に関して取り上げた同法案.その後,2010年3月29日に参議院へ提出*1後,2010年3月30日付の時事通信によると「参院で先に審議する方針を野党側に伝え」*2ており,その後,2010年4月6日付の時事通信による報道では,4月「6日」の「参院議院運営委員会」の「理事会」*3において,「7日午前の参院本会議で趣旨説明と質疑を行い,審議入りすることを決め」られた結果,本記事のように,2010年4月7日より,いよいよ審議入り.
2010年3月6日付の本備忘録にて言及した,地方自治法第2条第4項における,基本構想制度の策定義務と基本構想制度の議会同意義務の2つの規定内容を把握すべく,まずは,「地方自治法の一部を改正する法律案」における提出「理由」*4を拝読させて頂くと,「第二条第三項ただし書を削り,条第四項を次のように改める*5」として,同条同項は新たに「市町村は、前項の規定にかかわらず,次項に規定する事務のうち,その規模又は性質において一般の市町村が処理することが適当でないと認められるものについては,当該市町村の規模及び能力に応じて,これを処理することができる.」との案とされたことで,現行同法の第2条第4項に規定されてきた,2つの制度的拘束は,法制度上は除却されたことが分かる.
2010年3月6日付の本備忘録でも,同義務付けが廃止後の制度選択の路線整理をしたものの,同法案成立後に個々の自治体が選択することとなる,自由な制度環境下での計画制度の様相に関しては,「総合計画に頼らない「計画性」」*6を具現化する取組や「「作る」計画から「する」計画(「作らない」計画,「させない」計画を含む)」*7様相を観察することが可能となるか,要経過観察.
なお,蛇足.同法案第252条の7における「機関等の共同設置」*8に関する改正案において,「議会事務局」もまたその対象として含まれていることを初めて知る.同改正に至るまでの審議の場の一つとして,総務省に設置された地方公共団体における事務の共同処理の改革に関する研究会による報告書では,既存の「共同処理の対象事務」を帰納的に整理すると,「事務が定型的で裁量の余地が小さいもの」「規模の拡大による効率化が可能なもの」「専門性が高いもの,一定の規模があることが望ましいもの」「広域的に実施することが施策目的の達成に有効だと考えられるもの」として事務特性を析出しつつも,あわせて「参考」として,「共同処理のメルクマールと共同処理の活用が考えられる部門」*9を提示.同「参考」内では,議会事務局に関しては,明記されてはいない.その後,2010年2月15日に開催された第2回地方行財政検討会議では,同会議構成員からは,議会事務局が共同設置の対象に含まれることへの「危惧」*10が示されたことに対して,同省政務官からは,次のような見解が示されていたこともあり,本改正案は,驚きつつ拝読.

議会事務局の件ですけれども,実質的な議会の意思を何か共同でということは,ちょっと私どもも想定し難いと思っております.ただ,大きな意味で色々な選択肢を自治体の組織のあり方において用意しようという大きな議論の中でこの議論は出てきている訳ですが,議会の実質的な意思とは別に,条例の法制的な執務とか,あるいは技術的なこと,形式的なことについては,例えば共同で処理するということもあり得るのかなということを内部で議論しておりまして,仕組みとして広い選択の幅をご用意するのは私どもの仕事でございますが,いずれにしても選択は各自治体で,是非ご議論をいただくということであろうかと思います」*11

同見解を踏まえると,同制度の運用上は「想定し難い」ものの,「選択の幅」は提供するという,「自由度の拡大路線」*12を制度上は貫徹することを想定するという路線から,同法案として取りまとめられたのだろうか.同改正理由もまた,要確認.

*1:参議院HP(議案情報)「提出番号56地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」,「提出番号57国と地方の協議の場に関する法律案,「提出番号58地方自治法の一部を改正する法律案

*2:時事通信(2010年3月30日付)「派遣法改正案は参院先議=地域主権関連法案も−民主

*3:時事通信(2010年4月6日付)「地域主権法案、7日に審議入り=参院

*4:総務省HP(所管法令国会提出法案)「地方自治法の一部を改正する法律」1頁

*5:参議院HP(議案情報)「第一七四回閣第五八号地方自治法の一部を改正する法律案

*6:片山善博「「総合計画」に頼らない「計画性」」『ガバナンス』2010年4月号,17頁

ガバナンス2010年4月号

ガバナンス2010年4月号

*7:今井照「「総合計画」の意義と陥穽」『ガバナンス』2010年4月号,20頁(前掲注6内所収)

*8:総務省HP(所管法令国会提出法案)「地方自治法の一部を改正する法律案新旧対照表」6頁

*9:総務省HP(組織案内研究会等地方公共団体における事務の共同処理の改革に関する研究会)『地方公共団体の事務の共同処理の改革に関する研究会 報告書』13頁,14頁

*10:総務省HP(組織案内研究会等地方行財政検討会議第2回(開催日平成22年2月15日))「議事録」18頁

*11:総務省HP(組織案内研究会等地方行財政検討会議第2回(開催日平成22年2月15日))「議事録」19頁

*12:西尾勝「四分五裂する地方分権改革の渦中にあって考える」『分権改革の新展開』(ぎょうせい,2008年)3頁.

年報行政研究43 分権改革の新展開

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