民主、自民、公明の与野党3党は25日までに、先の通常国会から継続審議となっている地域主権関連3法案について、法案名と条文に記されている「地域主権」という文言の大半を削除する方向で修正協議に入った。自民党が「国民主権」という憲法の原則から「地域主権」の言葉は認められないと主張、法案成立を優先させたい民主党が、自民党の主張を受け入れ妥協した。 
 3法案のうち、地域主権改革一括法案は、国が法令で地方自治体の仕事を縛る「義務付け・枠付け」の見直しや、政府の地域主権戦略会議を法定化する内容だ。与野党協議では、この法案名からの「地域主権」の削除や、地域主権戦略会議の名称変更も検討している。ただ12月3日の会期末が迫っているため、修正協議で合意できても、今国会での成立は難しい情勢。成立は、来年の通常国会となりそうだ。

本記事では,政府における「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」,「国と地方の協議の場に関する法律案」(地域主権改革関連2法案)及び地方自治法改正案に関する審議状況を紹介.前法に「地域主権」の文言を「削除」される方針とのこと.
本配信記事では「地域主権関連3法案」と紹介されているものの,地方自治法改正案である「地方自治法の一部を改正する法律」*1には同文言は用いられておらず,また,地域主権改革関連2法案のうち「国と地方の協議の場に関する法律案」に関しては,同法案第1条において「地域主権改革(内閣府設置法(平成十一年法律第八十九号)第四条第一項第三号の三に規定する地域主権改革をいう.)の推進並びに国及び地方公共団体の政策の効果的かつ効率的な推進を図ることを目的とする」*2との目的規定に止まり,主たる改正は,「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」の法案名及び「地域主権改革」ということばの削除又は変更が中心となりそうか.要確認.
「不思議なことば」*3としての「地域主権」.上記,「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律案」における「内閣府設置法」の「第3条の2の次」に「地域主権」に「改革」ということばを加えて,「日本国憲法の理念の下に,住民に身近な行政は,地方公共団体が自主的かつ総合的に広く担うようにするとともに,地域住民が自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができるようにするための改革」*4とも,定義されている.
とはいえ,「どうして地域主権改革をいうのか」*5との問いに対しては,下名は(講義等で)上手く整理ができていない.同用語の定義の後段部分では,「「国が立法する際に,各市区町村の住民が,できるだけ「自らの判断と責任において地域の諸課題に取り組むことができる」との規定があることをもってその「余地を可能な限り幅広に認め,そのことによって地域での暮らしと住民自治の営みを豊かなものにしようとしていく可能性を保障しよう」*6とするものであり,「厳密な法学上の用語としての受け止めるべきではなく,住民な身近な問題については,できる限り地域住民の意思や意向を尊重して決めていくべきだという理念」*7との理解が参考になりそう.そのため,同理解に依拠しつつ整理すれば,地方分権ということばに内包される「自治体の自律的領域」の「拡充」との観念に加えて,「自治体における自己統治」の「拡充」*8の観念も「地域主権(改革)」ということばには内包されているようでもある(そのような理解で妥当なのでしょうか).
地域主権(改革)」ということばという名を捨て,「地方分権」ということばへの「回帰」*9により,改正法案という実を取られることになるのか,今後の審議状況は要経過観察.

*1:総務省HP(所管法令国会提出法案)「地方自治法の一部を改正する法律

*2:内閣府HP(国会提出法案第174回 通常国会)「国と地方の協議の場に関する法律案」第1条

*3:長谷部恭男「続・Interactive憲法--B准教授の生活と意見 第17回 連邦制と地域主権」『法学教室』No.359, 2010年8月号,56頁

法学教室2010年8月号[雑誌]

法学教室2010年8月号[雑誌]

*4:内閣府HP(国会提出法案第174回 通常国会)「地域主権改革の推進を図るための関係法律の整備に関する法律」5頁

*5:大森彌「地域主権戦略大綱と自治体議会の役割」『ガバナンス』No.112,2010年8月,18頁

ガバナンス 2010年 08月号 [雑誌]

ガバナンス 2010年 08月号 [雑誌]

*6:前掲注5・大森彌2010年:18頁

*7:前掲注3・長谷部恭男2010年:56頁

*8:西尾勝地方分権改革』(東京大学出版会,2007年)246頁

地方分権改革 (行政学叢書)

地方分権改革 (行政学叢書)

*9:大杉覚「分権一括法以降の分権改革の見取り図と今後の展望」『都市問題』第100巻第8号,2009年8月号,57頁.