都道府県が2011年度に採用する上級職(大卒程度)採用試験の応募者数が、青森、徳島を除く45団体で前年を上回り、総数は前年度比19.5%増の8万507人となったことが26日、時事通信の調査で分かった。民間企業の採用抑制に加え、政府が国家公務員の新規採用抑制方針を打ち出したことから、地方公務員人気が高まったとみられる。
試験は5月に実施済みの東京都を除き、27日に一斉に行われる。増加率が最も高かったのは神奈川で79.0%増。次いで広島53.7%増、熊本47.0%増などが続く。減少した2県は、徳島8.4%減、青森7.3%減だった。志願者が増えた理由は「民間の雇用状況や国家公務員の採用抑制の影響」(北海道)を挙げる自治体が目立った。政府は11年度の一般職国家公務員新規採用を09年度比で約4割減とする方針を決めており、このあおりを受けた形だ。もっとも、応募者数を採用者数で割った競争率が前年を上回ったのは、20都府県にとどまった。34都道府県が退職者の補充などで新規採用数を増やしたためだ。
それでも41都道府県で、競争率が10倍以上の「狭き門」。競争率が最も高いのは、神奈川の36.0倍で、以下、大阪24.2倍、岐阜23.0倍などが続いている。
◇2011年度都道府県職員採用応募状況
応募者数 増加率 競争率
(人) (%) (倍)
北海道 881 26.8 14.7
青 森 783 ▲7.3 7.9
岩 手 852 0.1 13.5
宮 城 1,691 16.9 11.1
秋 田 800 11.9 11.8
山 形 1,102 1.3 14.7
福 島 1,218 37.2 9.2
茨 城 1,719 27.1 19.3
栃 木 1,632 9.5 −
群 馬 1,354 6.3 13.5
埼 玉 3,628 7.0 22.3
千 葉 3,492 21.3 14.5
東 京 8,811 20.8 13.2
神奈川 7,448 79.0 36.0
新 潟 1,589 5.9 15.1
富 山 862 11.7 10.8
石 川 854 3.1 9.7
福 井 1,026 1.4 12.7
山 梨 1,135 13.6 9.3
長 野 1,673 7.9 10.5
岐 阜 691 4.1 23.0
静 岡 1,834 15.7 11.0
愛 知 3,916 41.2 15.1
三 重 1,320 19.5 16.1
滋 賀 1,051 17.0 14.2
京 都 1,873 26.5 16.3
大 阪 1,812 12.9 24.2
兵 庫 1,950 13.0 14.8
奈 良 1,386 24.1 13.0
和歌山 1,371 16.3 14.1
鳥 取 903 11.3 13.5
島 根 729 2.1 10.1
岡 山 764 19.9 15.9
広 島 1,442 53.7 17.8
山 口 1,088 19.0 15.5
徳 島 1,477 ▲8.4 19.2
香 川 877 41.0 10.3
愛 媛 1,105 37.3 16.5
高 知 976 2.2 10.2
福 岡 2,367 7.8 22.1
佐 賀 911 3.3 20.2
長 崎 1,185 17.9 13.3
熊 本 1,298 47.0 14.0
大 分 1,044 4.4 12.4
宮 崎 1,100 15.2 15.7
鹿児島 919 10.5 20.4
沖 縄 2,568 5.9 −
注1:増加率は前年度との比較で、▲はマイナス
注2:各県とも「行政」「土木」「農業」といった職種別の募集をしているため、競争率は、職種によって異なる
注3:採用予定人数を「約○人」「○人程度」としている団体も、競争増加率は「約」を省略した
注4:栃木、沖縄は採用予定人数の総数が未定のため、競争率を算定できず、「−」とした
本記事では,時事通信社の調べによる,都道府県における2011年度の採用試験の募集状況を紹介.
「青森,徳島を除く45」都道府県で「前年を上回り」,「総数は前年度比19.5%増」にある,という.本記事では,同調査結果の総体的傾向性に対しては,「民間企業の採用抑制」とともに「政府が国家公務員の新規採用抑制方針を打ち出したこと」と分析.一方で,本記事では,「増加率」に関しては「神奈川」の「79.0%増」,「広島」の「53.7%増」,「熊本47.0%増」の順,「競争率」に関しては,「神奈川の36.0倍」,次いで,「大阪24.2倍」,「岐阜23.0倍」の順に多く,都道府県毎での差異もある.これらの差異に関しても,同要因での推論が成り立つ部分もなくはなさそうではあるものの,同因果図に至る「他の独立変数」*1もまた想定できなくもなさそうでもあり,その「観察可能な含意」*2に関しては,少し考えてみたい課題.
仮に,実際にも来年度の「国家公務員」の希望者が,都道府県職員への採用試験の受験へと切替られていた場合,2009年2月13日付,2009年1月8日付,同年2月15日付,同年4月9日付の各本備忘録にて言及した,「会社や仕事に関してプラスと考えられることだけでなく,マイナス面に関しても求職者に提供」する機会としての「Realistic Job Preview」*3を図り,採用後での国家公務員の代替的選択としての都道府県職員としての職務への不一致が生じないための,「ワクチン効果」*4的な選考手続の実施もまた必要とも考えられそう.
「買い手市場」ぎみの各都道府県における1次試験以降の同手続の運用状況については,要確認.
*1:谷岡一郎『データはウソをつく』(筑摩書店,2007年)92頁 データはウソをつく―科学的な社会調査の方法 (ちくまプリマー新書)
*2:G.キング, R.O.コヘイン, S.ヴァーバ, 『社会科学のリサーチ・デザイン』(勁草書房,2004年)22頁
*3:今野浩一郎, 佐藤博樹『マネジメント・テキスト 人事管理入門<第2版>』(日本経済新聞出版社,2009年)84頁
*4:安藤史江『コア・テキスト 人的資源管理』(新世社,2008年)49頁 コア・テキスト 人的資源管理 (ライブラリ経営学コア・テキスト)