子どもを褒めて育てようという趣旨の「児童表彰条例」を和歌山県上富田町が施行してから、今年で10年目を迎えた。昨年度までに、町内の小学生１４４３人をさまざまな分野で表彰してきた。町教委は「教育効果はある」と話す。同様の条例を定めている自治体は全国でも少ない。
町の条例は２００１年に施行。「児童に自信と誇りを持たせ、心身の健全な発達を助長する」ことを目的に掲げている。人に親切な行いをしている児童が対象の「親切賞」や、友達のことを考えて仲間づくりに努める子に贈る「友情賞」など、９分野がある。
表彰式は年に１、２度、各学校で開かれる。小出隆道町長が出向き、賞状と銅メダルを贈る。メダルには「自分の努力で銀、金色に変えて」という願いが込められている。同じような条例を制定している自治体は、県内では上富田町以外にない。全国で見ても、現在は八つの自治体しか制定していない。１９８５年、栃木県の国分寺町（当時）が全国で初めて導入した。２００６年１月、国分寺町は周辺２町と合併して下野市が誕生したが、今でも表彰を続けている。
６月下旬には、本年度の初の表彰式が生馬小学校であった。６年生20人が表彰を受けた。１人ずつ体育館の壇上に上がり、小出町長から「読書賞」や「体育賞」「明朗賞」などの賞を受けた。小出町長は全員と握手して「これからも頑張ってください」とエールを送った。人に親切な行いをしているとして、「親切賞」を受賞した松原健太郎君（12）は「うれしかった。これからも皆と協力したり、優しく接したりしたい」と話した。町内のほかの小学校でも、11月までに表彰式がある。
聖徳大学（千葉県松戸市）生涯学習研究所長で、児童表彰に詳しい福留強さん（69）によると、かつては条例を制定した自治体が20前後あった。市町村合併が全国で進み、自治体の規模が大きくなったことが減少の理由。最近では、条例ではなく郡や地区単位で子どもを表彰しようという動きもあるという。福留さんは「大人は子どもを褒めるためによく見ないといけないし、『どうして僕（わたし）がこの賞なの』と思われないようにしなければならない。子どもは表彰されることで、良いところを見てくれていると感じるはず。それが自信につながる」と話した。
本記事では，上富田町における「上富田町児童表彰に関する条例」の取組を紹介．
同条例*1を拝読すると，同条例第1条において「上富田町立小学校児童の優れた個性や能力を見出してこれを表彰し，児童に自信と誇りを持たせ，心身の健全な発達を助長することを目的」であることが規定．表彰の手続に関しては，「学校長」が同条例定める賞に該当する「児童を記録し，被表彰候補者として教育委員会に推薦」（同条例第2条），その後「教育委員会」が「これを町長に内申」（同条例第3条）し，「町長」が「学期末，又は随時に表彰する」（同条例第4条第1項）こととされている．そして，「被表彰者」には「賞状と銅製メダル」（同条例第4条第2項）が贈呈される．
同条例に基づき表彰される賞については，本記事では「９分野」と報道されてはいるものの，同条例を拝読させて頂くと，「学校及び社会生活で努力している者」への「努力賞」，「学校又は社会に奉仕している者」への「奉仕賞」，「スポーツに優れている者」への「体育賞」，「学業又は文化・芸術に努力している者」への「学芸賞」，「人に親切な行いをしている者」への「親切賞」，「平素からよく本を読んでいる者」への「読書賞」，「勤労をたっとび，学校，家庭，地域づくりに努力している者」への「勤労賞」，「友達のことを考え，仲間づくりに努めるている者」への「友情賞」，「いろいろな事柄に創意工夫をしている者」への「創造賞」，「態度がいつも明るくよく挨拶をする者」への「明朗賞」に加え，「その他学校が必要とする賞」をあわせて，相互に排他的であるかは判然とはしないものの，11種類の賞が設けられている（2000年の制定以降改正されたのでしょうか，要確認）．
「建設的な命令規範」*2とも整理ができそうな取組．同条例に基づく各表彰は「小学校課程終了までに1人1回とする」（同条例第4条第3項）の制約規定があるなかで，「ヒューマンはほかのヒューマンに容易にナッジされる」*3とすれば，同制度が「プライミング（先行刺激）」*4となり，多くの学生さんにも同条例が企図するその善行が波及されてきたかは，確認したい事柄．興味深い．
*1:上富田町HP（上富田町例規集）「上富田町児童表彰に関する条例」（平成12年12月22日 条例第40号）
*2:リチャード・セイラー，キャス・サンスティーン『実践行動経済学』（日経BP社，2009年）112頁
*3:前掲注2・リチャード・セイラー，キャス・サンスティーン2009年：93頁
*4:前掲注2・リチャード・セイラー，キャス・サンスティーン2009年：116頁
