NTT西日本が採算の取れない公衆電話の撤去を進める中、小中学校に設置された電話について、兵庫県内の自治体や学校によって対応が分かれている。同社の撤去要請に対して「災害時の通信手段」「携帯電話を校内に持ち込めない生徒たちの連絡手段」といった理由で撤去を拒む市がある一方、要請を受け入れた上で、独自に電話回線を引いたり職員室の電話で代用したりするケースもある。
(堀内達成)
 同社によると、携帯電話の普及に伴い、公衆電話の利用は1995年をピークに減少。設置台数は同年に全国で約41万台あったが、2010年には約28万台となった。公衆電話事業の赤字を受け、同社は過去1年の平均利用月額が4千円未満の電話を撤去対象として2002年以降、撤去を本格化した。県内の小中学校には02年、約850台を設置していたが、10年3月末には約560台にまで減った。
 こうした中、尼崎、宝塚市などは設置の継続を求めている。尼崎市は電話の前に利用を促すポスターを張ったり、同社に要望書を提出したりしており、両市では現在もすべての市立小中学校に1台ずつ公衆電話がある。宝塚市教委は「公衆電話は災害時の優先電話になる。避難所になる学校には、できるだけ連絡手段を確保しておきたい」と説明。尼崎市教委は「職員室の電話を子どもに利用させる場合、貸せる内容の線引きが難しい。撤去すると、学校への携帯電話の持ち込み禁止を強く指導できない」とこぼす。神戸市の場合、07年には約3割の小中学校に公衆電話があった。神戸市教委は設置継続を希望したが、その後の対応は各校に任せたといい「現在の状況は分からない」。姫路、西宮市も学校に判断を委ねているという。一方、芦屋市は撤去要請を受け入れた。小学校では撤去し、中学校では市の予算で、料金回収型の一般加入電話「ピンク電話」を置いた。「小学校で児童が外部と連絡を取る場合、教員を通して対応するので問題ない」と同市教委の担当者。災害時には蓄電式の非常電話で対応できる、とした上で「少ない公衆電話があると、殺到してかえってパニックになるのでは」とも話す。
 同社は「撤去は、設置先の同意を得て行うのが絶対のルール。災害時は特設公衆電話で対応する」としている。

本記事では,兵庫県内に位置する市において,小中学校に設置された公衆電話の対応状況について紹介.公衆電話事業の「赤字」を受けて,各設置先の「同意」をもとに,「撤退」が進められているとのこと.
「社会的交流に取ってかわるものではなく,それを補うもの」*1として「飛び道具」*2の主要な位置を占めた電話.一方で,学校に設置される公衆電話に関しては,決して「会話を消費する」*3という「社会的交流」が主たる目的としてではなく,特定目的の短期通話が主たる利用方法であったとも想定されなくもない(下名は,現在もそうですが,当時もより一層「ま」が抜けた学生であり,「つい」忘れ物をしがちで(例えば,洗濯して持ち帰った給食袋),自宅が小学校の学区の外れにあったこともあり,その連絡等で良く利用しておりました.職員室の電話ですと,利用しにくそうですね).本記事でも紹介されている「尼崎市」における「電話の前に利用を促すポスターを張」ることで,その利用増加への行動変容に結びつくことになるかは,興味深いところではあるものの,方や,「撤退」とのご判断をされた各市及び各校では,恐らくはその主たる利用者とも想定される,学生さんたちからも「同意」を調達されているのだろうか,要確認.

*1:ニコラス・A・クリスタキス,ジェイムズ・H・ファウラー『つながり 社会的ネットワークの驚くべき力』(講談社,2010年)331頁

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

つながり 社会的ネットワークの驚くべき力

*2:松田美佐『うわさの科学』(河出書房新社,1998年)158頁

*3:吉見俊哉『「声」の資本主義』(講談社,1995年)138頁

「声」の資本主義―電話・ラジオ・蓄音機の社会史 (講談社選書メチエ)

「声」の資本主義―電話・ラジオ・蓄音機の社会史 (講談社選書メチエ)