広島県は14日、来年度から、県の管理職の定期昇給を廃止し、事実上の「年俸制」に移行する方針を固めた。定昇廃止は全国の都道府県で初めて。現行水準を引き下げる県独自の給料表の導入も検討し、年功序列型から能力・成果主義の色合いを強めた給与制度への転換を進める。
 県の給与制度は、1年ごとにほぼ一律で昇給する。県はこの定昇を、知事部局の課長級以上の管理職で廃止。上司と目標を設定して達成度を評価する新評価制度を導入し、毎年度、上昇幅を査定する方式に改める。査定結果次第では基本給が前年度と変わらない管理職も出るため「実質的な年俸制度」(県幹部)といえる。県教委と県警の管理職を定昇廃止の対象にするかどうかは検討中。評価を給与に反映させていない一般職については、ボーナスの一部に査定を導入する方針でいる。また、国家公務員に準じてきた給料表を見直す。水準を引き下げるために県独自で策定することを検討する。総務省自治行政局によると、山口、岡山、鳥取など全国で8県が独自給料表を導入している。さらに職員数も、2015年度までに、新たに行政職と教育職で計840人規模の削減に踏み切る。県は、こうした人件費削減策を進めた場合、11年度から5年間で累計449億円の人件費圧縮効果があると試算している。
 昨年11月に就任した湯崎英彦知事は、民間並みの成果主義を反映した給与制度や人事評価への見直しを掲げていた。一方で就任直後、それまでの財政健全化の柱だった課長級以下の給与カット中止を決定。人件費の抜本的見直しは、来年度からスタートする中期財政健全化計画の焦点となっていた。人件費削減策について、県職員連合労働組合の高田孝利委員長は「まだ聞いておらず、コメントできない」としている。県は今後、組合との交渉に入る。(高橋清子)

本記事では,広島県において,管理職の定期昇給の廃止の方針であることを紹介.
同方針に関しては,同県に設置され,2010年8月22日に開催された「広島県経済財政会議」の第4回会議における配布資料「資料3行政システム計画の検討の方向性」において,「平成23年度」から「3〜5年間」を計画期間とする「行政システム計画」を策定し「行政運営を刷新」される方針の下,「職員の力を引き出す人材マネジメント」として「管理職の給与制度」も「成果重視と能力反映の視点を強化」による「再構築」*1が「検討の方向性」として提示.本記事は,同方向性が具体化された模様.2010年10月15日付の日本経済新聞による報道を拝読させて頂くと,「18日に県の有識者会議に提案して意見」を聴取され,その後,「給与条例の改正案を12月の定例議会に提出する考え」*2ともあり,現在のところ,同方針の詳細に関しては,同県HPでは把握できず.残念(同記事にいう「県の有識者会議」とは,「広島県経済財政会議」を指しているのでしょうか).公表後,要確認.
「管理職」の能力を見る「固有の目線」としては,「リーダーシップ」,「部下に対する信頼」,「責任」,そして,「議会対応力」*3が析出されつつも,「まずは人柄問題が大切」*4とも観察される同種職.「必要とされる能力は状況ごとに異なっているという柔らかい能力観」とされる「状況的能力観」*5に依拠する場合,同県における管理職の能力を,どのように具体的に「目標を設定して達成度」を測定が図られ,結果的に,「適度な較差による動機付け」による「管理技術」*6が実施されることなるかは,非常に興味深い.今後の具体化の様子は,要経過観察.

*1:広島県HP(県政情報・統計県政基本情報広島県経済財政会議第4回広島県経済財政会議の開催状況について)「資料3行政システム計画の検討の方向性」9頁

*2:日本経済新聞(2010年10月15日付)「広島県・大阪府、管理職の一部定昇廃止 2011年度から

*3:中村圭介『実践!自治体の人事評価』(ぎょうせい,2007年)95頁

実践!自治体の人事評価―「評価される側」からのアプローチ

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*4:大森彌『自治行政学入門』(良書普及会,1987年)264頁

自治体行政学入門

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*5:竹内洋『日本のメリトクラシー』(東京大学出版会,1995年)175頁

日本のメリトクラシー―構造と心性

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*6:礒崎初仁・金井利之・伊藤正次『ホーンブック地方自治』(北樹出版,2007年)209頁

ホーンブック 地方自治

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