政府は27日、地域を限定して各種規制緩和や財政支援を行う「総合特区」法案の概要を決めた。特区に限り法律の規制を自治体が条例で独自に書き換える「上書き権」規定の創設は見送る。この規定を強く求めていた民主党の関連小委員会も、同日の会合で政府方針を了承。政府は法案を2月15日にも国会提出する。
 総合特区は、政府の新成長戦略の目玉で、小泉政権下でつくられた「構造改革特区」を進化させたイメージ。法案概要などによると、政府は「総合特区推進本部」を設置し、4月に特区の指定要件などを盛り込んだ基本方針を決定。自治体の申請を受け付け7月にも特区を指定する。また、特区ごとに国と地方の関係者で構成する協議会を設置し、特区内の規制緩和の在り方を議論する。条例が独自に法律を書き換える規定は憲法違反の疑いがあるため見送るが、協議会で国と地方が合意した規制緩和は、個別の法改正につなげる。

本記事では,政府における「総合特区」制度の設置方針を紹介.2011年5月11日付の本備忘録でも取り上げた同制度.
本記事でも紹介されているように,いわゆる「上書き権」の規定は「見送られる」方針とのこと.2011年1月27日付の毎日新聞による報道を拝読させて頂くと,同規定化に対して「内閣法制局などが「条例が法律を超え(て規制緩和を決め)るのは違憲の恐れがある」と慎重」*1との見解を示されたことがその背景の模様.いわば,「国に優越する立法権をもつ政府内政府」*2を回避する判断が示されたとも整理ができそう(か).
ただ,本記事では,「特区ごとに国と地方の関係者で構成する協議会を設置」される方針,また,同日付の毎日新聞では,「折衷案」として「「省令」レベルでの規制緩和自治体が求めた場合」,その「省庁に内閣府を加えた「共同省令で規制の特例措置を適用」するとした条文を盛り込む」こととされており,「所管省庁が規制緩和に抵抗」された場合でも「首相官邸の意向を反映しやすい内閣府が加わることで,従来よりも省令を変更しやすく」*3することを企図されていることも紹介.同制度の運用を通じて,「特例主義」*4の承認に至るかは,要経過観察.

*1:毎日新聞(2011年1月27日付)「「総合特区」法案:「条例で上書き」断念 違憲の恐れで

*2:喜多見富太郎『地方自治護送船団』(慈学社,2010年)240頁

地方自治護送船団―自治体経営規律の構造と改革

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*3:前掲注1・毎日新聞

*4:金井利之『自治制度』(東京大学出版会,2007年)202頁

自治制度 (行政学叢書)

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