国分寺市本庁舎の新築のメドが立っていない。震災で倒壊の恐れがあると指摘され、3年前に閉鎖された旧本庁舎は放置されたままだ。拠点は10か所に分散し、市民は不便を強いられている。市側は、財政が厳しい中、JR国分寺駅北口の再開発計画を最優先にしていることを理由にするが、将来構想も示しておらず、「いつまで不自由な状態が続くのか教えてほしい」といった声が後を絶たない。(大津和夫
 「何度来ても、どの庁舎に何があるのか分からない」。一人で車いすに乗って市役所を訪れた無職男性(62)は憤る。この日は福祉関係の手続きなどで、隣接する二つの庁舎を職員らに場所を尋ねながら、1時間以上かけて回った。旧本庁舎前に貼られた「この庁舎は閉鎖しております」との張り紙を横目で見ながら、男性は「いつまでこんな状態が続くのか」と肩を落とした。小学生の子がいる家族が引っ越してきた場合も不便だ。住民票は第1庁舎、子ども手当は隣の第2庁舎で手続きをし、教育に関する相談をしたい場合は、これらの庁舎から電車とバスを乗り継いで20分以上かかる市教育委員会まで足を運ぶ必要がある。
 危機管理上の問題もある。市長ら幹部が日常業務を進める第3庁舎には、幹部がそろって会議ができる場所が十分にない。このため、幹部は比較的スペースのある第4庁舎まで歩いていって会議をすることも珍しくない。ある市幹部は「震災など緊急対応が必要な時、不安だ」と明かす。旧本庁舎は1963年に建設された。鉄筋コンクリート造り地上3階、地下1階で、延べ床面積は約3400平方メートル。2007年の耐震診断で、「安全性に疑問。改修工事をしても、機能の回復は困難」と指摘され、08年に閉鎖された。
 閉鎖に伴い、既存の市の施設を改修するなどして計10施設に引っ越した。一部は賃貸料が発生している。
 旧本庁舎の建て替えを巡って市は、国分寺市泉町の都有地に移転する案を検討したこともある。だが、財政状況にかげりがみえはじめるなか、「市長肝いりのJR国分寺駅北口再開発事業が最優先」(市幹部)と判断、08年に白紙撤回した。ただ、再開発事業は負担を巡って議会側と対立し、先行きは不透明。ある市幹部は「新庁舎の問題は10年先でも解決していないのでは」と話しており、問題の長期化が予想される。
 佐々木信夫・中央大教授(行政学)の話「執行部と議会は協力し、新庁舎建設までの道筋をつける必要がある。市民サービスへの長期的な影響を最小限に抑えるため、手続きや相談など市民に身近な機能は賃貸ビルの活用も含め、1か所で済むよう見直すことも必要だ」

本記事では,国分寺市における庁舎の建て替えについて紹介.同市庁舎の現状は,同市HPを参照*1
本記事でも紹介されているように,同市業務は「市庁舎耐震問題に関する基本計画」に基づき」「平成20年5月7日から一部の市役所窓口が仮移転先で業務」*2されており,同HPに掲載されている各階の見取図*3を拝見させて頂くと,現庁舎敷地内の設置されている5つの庁舎に分散されていることが分かる.本記事では,「拠点は10か所に分散」とも報道されており,同敷地以外にも分散されている様子が窺える.
各部門ごとの「一所の執務空間」*4へのと細分化された,いわば,「たこ足配線」*5状態にあるなかで,執務においても支障が見られるのだろうか.2008年12月7日付の本備忘録にて項目立てを試みた本備忘録の妄想的・断続的観察課題のひとつ,「庁舎管理の行政学」の観点からも考えてみたい課題(「第1章:建築と維持のポリティクス」又は「第4章:執務と憩いの空間としての庁舎」でしょうか).

*1:国分寺市HP(施設案内市関連施設国分寺市役所)「市役所にお越しのかたへ

*2:前掲注1・国分寺市(市役所にお越しのかたへ)

*3:国分寺市HP(施設案内市関連施設国分寺市役所市役所にお越しのかたへ)「市役所見取り図1階」「市役所見取り図2階」「市役所見取り図3階

*4:大森彌『官のシステム』(東京大学出版会,2006年)73頁

官のシステム (行政学叢書)

官のシステム (行政学叢書)

*5:鈴木俊一『官を生きる』(都市出版,1999年)392頁

官を生きる―鈴木俊一回顧録

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