利用客の減少で路線バスが撤退し、交通手段を失った高齢者ら−。岡山県倉敷市の一部では、こんな事態を打開しようと住民らが始めた乗り合いタクシーが軌道に乗りだした。積極的なPRや割引制度の導入が功を奏したといい、同市交通政策課は「行政ではなく住民主体なので関心が持たれ、利用増加につながっているのではないか」としている。
 タクシーを運営するのはNPO「地域の公共交通を守る会」。会長の丹生朴さん(79)が住む同市西坂地区には約650戸があるが、2005年に唯一の公共交通だった民間バスが撤退した。最寄りのJR倉敷駅までは約10キロ。急な勾配があり、運転免許を持たない高齢者もいる。「お年寄りが買い物に行けなくなる」。自治会長だった丹生さんはまず、隣の総社市が委託運営していた乗り合いタクシーに西坂の住民らも乗ることができるよう陳情、許可を得た。
 さらに08年4月、よりニーズに合わせるため、民間タクシー会社と契約して乗り合いタクシー「やまびこ号」の運営を始めた。運賃は500円で、午前7時〜午後6時に14便が設定され、予約に応じて運行する仕組みだ。同年11月に運営主体となるNPOが県に承認され、NPO会員になれば運賃が割引になる制度も導入して固定客を増やした。丹生さんが自ら地域集会などでPRした効果もあり、今年度の利用客は6000人に上る見通しだ。(

本記事では,倉敷市内における乗合タクシーの取組を紹介.同取組の概要に関しては,同市HPを参照*1
「バス路線の廃止に伴い」「地域に見合った新しい代替交通システム」として「地域が自主的に運営努力」により「運行経費の一部を負担」*2され,いわば「自由車のない市民の移動が制約」*3されることを回避する目的から取り組まれている「乗合タクシー」の取組.同市内では「4地区」で採用されており,本記事で紹介されている「西坂地区」では「1日14便」走行され,大人が「片道500円」,子どもが「片道300円」,2008年度の数値では「年間4,713人/年」の利用されている.その他の3地区としては,「庄新町地区」では「1日14便」走行されており,「片道400円」で2008年度の数値では「年間2,507人/年」の利用,「大室・高室・菰池団地地区」では,「1日6便」の走行で,大人が「片道400円」,子ども「片道80円」,「片道400円」で2008年度の数値では「年間2,280人/年」の利用,「倉敷ハイツ地区」は「1日4便」の走行により,乗車駅により「300円」と「500円」の2区分に分かれている.何れも「予約制」を採用されているなかで,前3地区では「デマンド型」*4とされている.2007年度の数値ではあるものの,「西坂地区」では「66千円」が地域で 「262千円」が同市,「庄新町地区」では「136千円」が「地域」「544千円」が同市, 「大室・高室・菰池団地地区」では「181千円」が地域,「722千円」*5が同市とあり,運行においては市以外での運行主体が主体となり,財源の負担面では,当該運行主体と同市との間で分担されている.
一般的に,移動される住民の機会を拡大を図るためには,財源的負担が増加せざるを得ず,財源負担を抑制すれば,移動住民の機会を制約してしまうことも考えられなくもない.いわば地域公共交通における「社会的ジレンマ*6の解決は,悩ましい課題.

*1:倉敷市HP(建設局交通政策課交通政策の事業乗合タクシー)「乗合タクシー導入地区(4地区)の概要

*2:倉敷市HP(建設局交通政策課交通政策の事業)「乗合タクシー]」

*3:吉田樹「地域の暮らしと公共交通」荻原清子編著『生活者が学ぶ経済と社会』(昭和堂,2009年)211頁

生活者が学ぶ経済と社会

生活者が学ぶ経済と社会

*4:前掲注1・倉敷市乗合タクシー導入地区(4地区)の概要)

*5:倉敷市HP(建設局交通政策課策定計画の概要倉敷市地域公共交通総合連携計画の概要)「倉敷市地域公共交通総合連携計画」(倉敷市,平成21年3月)9頁

*6:山岸俊男社会的ジレンマ』(PHP出版,2000年)17頁

社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)

社会的ジレンマ―「環境破壊」から「いじめ」まで (PHP新書)