熊本市は、市民からの市政への苦情を受け付け、市に勧告する「公的オンブズマン」を設置する方針を決めた。公的オンブズマン制度の導入は県内で初めて。設置条例案を25日開会の市議会定例会に提案する。
 条例案では、市長が有識者2人を委嘱する。任期は2年間。市民は無料で苦情を申し立てることができ、オンブズマンは独自に調査し、必要に応じて市に勧告する。事務局は独立性を保つため、市庁舎外に設置。補佐役の専門調査員も配置する。市への苦情はこれまで、広聴課が受け付けてきた。市民の権利保護をうたう市自治基本条例が今年度施行されたことを受け、オンブズマン設置を決めた。早ければ11月からスタートする見通し。(小笠原瞳)

本記事では,熊本市において「公的オンブズマン」制度の設置条例案を同市議会へ提出される方針であることを紹介.
同制度の設置に関しては,同市において「平成22年4月1日」から「施行」されている「熊本市自治基本条例」の第23条,「市は,公平かつ中立的な立場で市長等が行う市政に関する市民の苦情を処理するための機関として、別に条例で定めるところにより,公的オンブズマンを設置します」*1との規定を踏まえて,「熊本市公的オンブズマン条例検討委員会」*2が設置され,条例案に関して検討.同委員会から,「平成22年11月11日」に同市長へと「熊本市公的オンブズマン条例の検討に関する意見書」*3と「熊本市公的オンブズマン条例案*4が提出.その後,「提出人数」が「23名」と「1団体」から「延べ件数」が「238件」の「意見」が示された「パブリックコメント(意見公募)」と「18名」から「60件」の「意見」が示された「地域説明会」*5が実施された後に,本記事のように,条例案として取りまとめられた模様.
上記の報告書では,「本市の機関に示された勧告,意見表明は,本制度の趣旨とオンブズマンが市の附属機関であり苦情等の解決方法に法的拘束力を持たないこと」を踏まえて,「判断を示される側の市の機関は,その調査結果に基づく勧告,意見表明を尊重しなければならない規定を設ける必要があると考え」*6が記載されており,自主的尊重の義務化,というディレンマ的な課題が提示されている.ただ,このようなディレンマに対しても,「実際にはより柔軟な形で運用がなされ」,「いわゆる伝家の宝刀として取り扱われて」「実際に発せられ」る「事例は数えるほどしかない」*7として,いわば「運用の妙」*8が観察される同制度.「設置あるいは機能付与は行政首長のパーソナリティとか政策といったものに左右され」,加えて「行政首長の去就によって存在が左右される場合がある」*9とも解されるなかでの,同制度の設置,運用状況は,要経過観察.

*1:熊本市HP(市民協働のひろば熊本市自治基本条例)「熊本市自治基本条例 本文

*2:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募)「ご存知ですか?公的オンブズマン制度を作っています条例検討委員会による検討経緯

*3:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募ご存知ですか?公的オンブズマン制度を作っています条例検討委員会による検討経緯)「熊本市公的オンブズマン条例の検討に関する意見書」(熊本市公的オンブズマン条例検討委員会,平成22年11月11日)

*4:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募ご存知ですか?公的オンブズマン制度を作っています条例検討委員会による検討経緯)「熊本市公的オンブズマン条例案」(熊本市公的オンブズマン条例検討委員会,平成22年11月11日)

*5:熊本市HP(行政情報市議会・公聴会・会議・議事録・委員公募)「ご存知ですか?公的オンブズマン制度を作っています

*6:前掲注3・熊本市熊本市公的オンブズマン条例の検討に関する意見書)22頁

*7:伊藤智基「法執行の評価・見直し」『ジュリスト』No.1391,2009.12.15,142頁

Jurist(ジュリスト)2009年 12/15号 [雑誌]

Jurist(ジュリスト)2009年 12/15号 [雑誌]

*8:大橋洋一行政法学の構造的変革』(有斐閣,1996年)134頁

行政法学の構造的変革

行政法学の構造的変革

*9:渡邊榮文『初期オンブズマン論』(ふくろう出版,2006年)127〜128頁

初期オンブズマン論

初期オンブズマン論