裸の付き合いで親子のふれあいを−−。県は今年度から、親子のコミュニケーションの場として入浴を活用する「浴育」事業を始める。銭湯など県内の公衆浴場と連携し、親子で裸の付き合いを深めたり、子どもが地域の大人から入浴マナーなどを学ぶきっかけを提供する。地域の社交場としてにぎわいをみせた銭湯も、核家族化や家庭への浴室の普及などで減少傾向にあることから、銭湯の活性化にもつながる試みだ。【石川貴教】
 「浴育」とは、風呂に入ってリラックスしながら親子が会話を弾ませたり、子どもが掛け湯など入浴マナーを学ぶことで社会のルールを学ぶきっかけを与える取り組み。大手の入浴関連企業などが提唱し、徐々に広がりを見せているが、都道府県が事業として取り上げるのは全国的にも珍しいという。県の事業では、県公衆浴場業生活衛生同業組合と「子育て応援協定」を締結。「ひょうご子育て応援の店」に登録した公衆浴場は、毎月26日(ふろの日)に大人1人につき6歳までの子ども1〜3人を無料とし、入浴を通じて親子がふれあう場を提供する従来の取り組みを発展させる。
 具体的には、端午の節句の菖蒲(しょうぶ)湯など、風呂にまつわる伝統行事の由来を紹介するほか、入浴による健康作りの方法や入浴マナーなどを、地域の大人たちから学べるような機会の提供も検討。今年度は県内の公衆浴場10カ所を指定し、実現可能な「浴育」のあり方などを模索する方針だ。県内には公衆浴場が1246カ所あるが、市街地にある銭湯などは減少傾向にある。今回の「浴育」事業をきっかけに、親子で銭湯に親しむ機会の増加も見込まれる。県少子対策課は「親子で裸の付き合いをしながら、関係を深めてもらうきっかけにしてほしい。将来的には、地域の交流につながり、銭湯の活性化にも貢献できれば」としている。

本記事では,兵庫県における「浴育」の取組を紹介.「浴育」という分野もあるのか,と思いつつ,同取組の概要を,同県HPにて確認*1
「165施設」が参加されている「兵庫県公衆浴場業生活衛生同業組合」と同県都の間で「子育て応援協定を締結」され,「子どもたちが,地域の人々が集い,ふれあう公衆浴場での入浴を通じて,風呂にまつわる伝統行事」の「由来や,入浴による健康づくりの方法,入浴マナーなどを大人たちから学び,互いに交流する」こを企図されている模様.なるほど,失われつつもある公衆浴場の利活用の方策としても,興味深そう.
また,上記「子育て応援協定」自体は,「子育てと仕事が両立できる職場環境の整備」「地域における子育ての支援」「若者の職業的自立の支援」「独身男女の出会いの場づくり」「女性等の再雇用の支援」等のうち「2つ以上行っている」「県内に主たる事業所又は支店等を有する企業,店舗,事業者団体」*2との間で同県が締結するもの.同協定締結後は,「「少子対策・子育て支援推進員」を設置」され,「従業員への協定内容の周知や県が行う少子対策・子育て支援事業への協力、地域における子育て支援の推進を図ること」を企図されている.
兵庫県子育て応援協定要綱」*3の第7条では,「協定を締結した企業等は,毎年度,翌年度の4月末日までに,子育て応援取り組み状況報告書」を「知事に報告しなければならない」ことによるモニタリングや,同要綱第8条による「協定を締結した企業等が,この要綱で定める取り組みを行わないことが明らかになった場合」や「法令に違反した場合」,そして,「その他協定企業として適当でなくなったと認められる場合」には知事は「協定を解除することができる」と協定の解除規定が置かれてはいる.ただ,これらが協定内容を実現するための威嚇にはなるかは判然とはしないものの,寧ろ自発的な行動を促すために,経済的,情報的のいずれもの「誘因政策」*4として,「商工中金の「ひょうご子育て・男女共同参画応援企業ローン」」に基づき,「運転資金・設備資金」の「貸出金利を最大0.3%優遇」されること,「協定締結企業等のホームページや商品パッケージ,広告,ホームページ等に子育て応援企業等である旨の表示を認める」こと,「県のホームページ等に協定締結企業等の名称や取り組み内容を掲載」,「公共事業入札参加資格の技術・社会貢献評価の点数加算」,「最新の国・県・市町・民間の子育て支援の取組みの情報を県少子対策本部ニュース(ひょうご子ども未来通信)として配信」*5等が事業化されている.「浴育」の実施とその効果に関しても,要観察.
なお,蛇足.原田久先生による『広範囲応答型の官僚制』を拝読以来,なるほど,「行政官僚制の対内的関係と対外的関係とを公式的に繋ぐ制度や手続」*6への分析もやはり肝要とも思い,自治体行政分野で考えてみければならないものとして,何だろうかと,幾つか見ていたところ,「自主的アプローチの代表例」*7たる協定制度もまた,これらに該当するのかなあと,下名は解釈.制度的・実態的にも量質ともに多く利用されており,加えて,行政法法社会学でも一定量の研究蓄積もあり,行政学が得手とされる管理と統制の観点からも考えることができそう.本年度は,本備忘録の場で,お勉強を兼ねて,折に触れて,不定期観察しよう.

*1:兵庫県HP(記者発表資料2011年4月記者発表資料)「兵庫県公衆浴場業生活衛生同業組合との子育て応援協定の締結について

*2:兵庫県HP(暮らし・環境少子・子育て子育て・家庭)「兵庫県子育て応援協定-県と協定を結ぶ企業等を募集しています

*3:兵庫県HP(暮らし・環境少子・子育て子育て・家庭兵庫県子育て応援協定-県と協定を結ぶ企業等を募集しています)「兵庫県子育て応援協定要綱

*4:H.A.サイモン,V.A.トンプソン, D.W.スミスバーグ『組織と管理の基礎理論』(ダイヤモンド社,1977年)429頁

組織と管理の基礎理論 (1977年)

組織と管理の基礎理論 (1977年)

*5:前掲注2・兵庫県兵庫県子育て応援協定-県と協定を結ぶ企業等を募集しています)

*6:原田久『広範囲応答型の官僚制』(信山社,2011年)30頁

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)

広範囲応答型の官僚制 ―パブリックコメント手続の研究 (学術選書64)

*7:北村喜宣『環境法』(弘文堂,2011年)112頁

環境法

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