行政への市民参画をより活発にするため、野田市の根本崇市長は3日の定例記者会見で、9日開会の市議会6月定例会に、常設型の「住民投票条例案」を提出すると発表した。市によると、同条例の制定は全国で35自治体あり、県内では我孫子市に次いで2番目となる。制度の適正運用を担保するため、「罰則規定」を盛り込んだのが特徴で、常設型で罰則を設けたのは全国初という。根本市長は「この条例で市民の声をより市政に反映させたい」としている。
 同条例の投票対象事項は、「市民福祉に重大な影響を与える事項で、市民の間に意見の相違が認められ、市民に直接賛否を問う必要があるもの」とし、市の予算、組織や人事など一部除外事項を設けたものの、多くの事項が対象になる見込み。投票資格者は、公選法と同一とし、満20歳以上などとした。請求は、「市民」「議会」「市長」の3者が行えるとし、市民請求の署名要件は投票資格者総数の10分の1以上で、議員請求は定数の12分の1以上の賛成で提案、出席議員の過半数賛成を必要とするとした。

本記事では,野田市における住民投票条例の制定方針に関して紹介.同条例に「罰則規定」を設けられる方針とのこと.
本記事では,「制度の適正運用を担保するため,「罰則規定」を盛り込んだ」と報道されているものの,具体的な「罰則規定」とはどのようなものであるか確認しようと,同市で「平成22年12月16日(木)から平成23年1月17日(月)」の間で行われたパブリックコメント野田市住民投票条例(案)」*1を拝見すると,以下の通り,同条例案27条で「署名運動の罰則」と同条例第28条により「賛成反対運動等の罰則」を規定されている.

(署名運動の罰則)
第27条 署名運動に関し,次の各号に掲げる行為をした者は,20万円以下の罰金に処する.
(1) 請求資格者又は署名運動者に対し,威力を加え,又はこれをかどわかしたとき.
(2) 交通若しくは集会の便を妨げ,又は演説を妨害し,その他偽計詐術等不正の方法をもって署名の自由を妨害したとき.
(3) 請求資格者若しくは署名運動者又はその関係のある社寺,学校,会社,組合,市町村等に対する用水,債権,寄附その他特殊の利害関係を利用して投票資格者又は署名運動者を威迫したとき.
住民投票の実施の請求者の署名等を偽造し,若しくはその数を増減した者又は署名簿その他の市民請求に必要な関係書類を抑留,毀き壊若しくは奪取した者は,10万円以下の罰金に処する.
住民投票の実施の請求者の署名等に関し,請求資格者の委任を受けずに,又は請求資格者が身体の故障等により署名簿に署名等をすることができないときでないのに,氏名代筆者として請求者の氏名を署名簿に記載した者は,10万円以下の罰金に処する.
4 請求資格者が身体の故障等により署名簿に署名等をすることができない場合において,請求資格者の委任を受けて請求者の氏名を署名簿に記載した者が,当該署名簿に氏名代筆者としての署名をせず,又は虚偽の署名をしたときは,10万円以下の罰金に処する.
5 市民請求に関し,実施請求書及び請求代表者証明書を添付していない署名簿,規則で定める署名等を求めるための請求代表者の委任状を添付していない署名簿その他所定の手続によらない署名簿を用いて署名等を求めた者又は署名等を求めることができる期間外の時期に署名を求めた者は,5万円以下の罰金に処する.
(賛成反対運動等の罰則)
第28条 賛成反対運動及び投票に関し,次の各号に掲げる行為をした者は,10万円以下の罰金に処する.
(1) 賛成又は反対のいずれかの投票をさせ,又はさせない目的をもって投票資格者又は賛成反対運動者に対し,金銭,物品その他の財産上の利益若しくは公私の職務の供与,その供与の申込み若しくは約束をし,又は供応接待,その申込み若しくは約束をしたとき.
(2) 賛成又は反対のいずれかの投票をさせ,又はさせない目的をもって投票資格者又は賛成反対運動者に対し,その者又はその者と関係のある社寺,学校,会社,組合,市町村等に対する用水,債権,寄附その他特殊の直接利害関係を利用して誘導をしたとき.
(3) 投票をし,若しくはしないこと,賛成反対運動をし,若しくはやめたこと又はその周旋勧誘をしたことの報酬とする目的をもって投票資格者又は賛成反対運動者に対し,第1号に掲げる行為をしたとき.
(4) 第1号若しくは前号の供与,供応接待を受け,若しくは要求し,第1号若しくは前号の申込みを承諾し,又は第2号の誘導に応じ,若しくはこれを促したとき.
(5) 第1号から第3号までに掲げる行為をさせる目的をもって賛成反対運動者に対し,金銭若しくは物品の交付,交付の申込み若しくは約束をし,又は賛成反対運動者がその交付を受け,その交付を要求し,若しくはその申込みを承諾したとき.
(6) 前各号に掲げる行為に関し,周旋又は勧誘をしたとき.

パブコメでは,規程内容に関する意見ととも,「罰則規定を設けるべきではない」との意見が「6件」が提出されたものの,同市では「禁止行為の規定の実効性を担保するために,あえて罰則規定を置くこととしております」と同条例に関する考え方を言及し「修正無し」*2の方針をあわせて言及されている.いわゆる,「ハード戦略」としての同規定.その実施に関しては「威嚇に止め」*3ることになるのか,又は,積極的に「実効性確保」を図ることになるか,同条例が制定された場合の実施状況も,要確認.

*1:野田市HP「野田市住民投票条例(案)

*2:野田市HP(パブリック・コメント手続を実施します)「野田市住民投票条例(案)に対する意見募集の結果について」(平成23年5月23日 公表)9頁

*3:松井望「政策の決定と実施」首都大学東京都市教養学部都市政策コース編, 和田清美監修『逆発想の都市政策』(ぎょうせい,2011年)147頁

逆発想の都市政策

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