横浜、川崎、相模原など全国19市の政令指定都市の首長が集まる指定都市市長会議が27日、東京都内で開かれた。国が見直しを検討している子ども手当生活保護などの社会保障制度について、実務を担う地方自治体の意見を十分反映するよう求める緊急意見をまとめた。
 同会議では、子ども手当について、全額国庫負担とされていたはずが、いまだに地方の財源に頼っており、所得制限の導入に関しても基礎自治体の意見を十分に反映させずに検討が進んでいる現状を問題視。実際にサービスを提供する政令市など自治体の意見が実質的に反映されることを求めた。また、広域自治体(府県)から独立を目指す大都市制度について各首長が意見を表明。大阪都や新潟州構想などが浮上する中、各政令市は規模や地域性も異なるものの、国や県との二重行政を解消し、近隣自治体とも相互に発展していく「特別自治市」を目指していく方向性をあらためて確認した。
◆大都市制度検討部会、世論喚起で一致
 政令市が広域自治体から独立し、役割にあった財源を得る特別自治市の実現を目指す「大都市制度検討部会」(部会長・奥山恵美子仙台市長)が27日、都内のホテルであった。指定都市市長会議の部会として横浜、さいたま、静岡、浜松、札幌、仙台の6市長が意見を交わした。過去2回の会合でまとめてきた大都市制度のメリットなどについて、総務相や国会議員らと意見交換しながら世論を喚起していく方針で一致した。
 「総務相が代わると(地方自治制度の考え方の)方針も変わるのでは困る。国会の超党派で議論してもらう必要がある」。浜松市鈴木康友市長は議論が継続できる仕組みづくりを求めた。さいたま市清水勇人市長は「大都市制度構想はわれわれの思い入れが強く入っている。だからこそ学者など専門家の冷静な目で見てもらうことも大事だ。市民にわかりやすい事例やエピソードも示したい」と、メリットを伝える一層の努力を説いた。横浜市の林文子市長は「(大阪都構想など)関西の話題が華やかで、こちらはややおとなしい。いろいろな人を巻き込んで世論に訴えたい。東日本大震災政令市の役割がいかに大きかったか、きちんと伝えていこう」と提案した。議論を受けて仙台の奥山市長は「被災地のがれきの処理も国と県がやることになっているが、動かせずに4カ月たってしまった。災害時の権限を(現場に職員がいる)政令市に移せば早く対応できる。こうした課題を外に出して議論を起こしていきたい」との考えを示した。

本記事では,2011年7月27日に開催された第31回の指定都市市長会議の審議の状況を紹介.指定都市市長会HPでは,同回の同会議の開催*1に関する紹介は掲載されているものの,現在のところ,資料,審議概要等は把握できず,残念.公表後,要確認.
本記事では,前回,2010年第30回の同会議で提案された「特別自治市(仮称)」*2構想に関する議論の様子を中心に報道(なお,2011年7月28日付の産経新聞の報道では,その議論された風景をより生々しく報道*3).同構想.提案当初の資料では,その業務は「道府県の事務を含め,地方の事務とされているものを全て一元的に担うことを基本」*4と,道府県と「特別自治市(仮称)」間での事務配分として,やや一般的な記述に留まっていたものの,「平成24年度国の施策及び予算に関する提案」を拝読させて頂くと,「主要な業務」として,「ハローワーク」「直轄国道」という現行の「国の役割」*5の移譲を含めての提案と漸進的に移行しつつある模様.ただ,争点となりうる「警察権限」*6に関しては,「特別自治市の業務とする」とその移譲を前提とされつつ,「地域の実情に応じて広域的対応が必要な場合は,特別自治市広域自治体に事務を一部委託したり,特別自治市間で共同して警察本部を設置するなど,多様な形での連携も選択肢の一つ」との提案も示されている.なるほど,興味深い.
下名個人的に本構想に関心があるのは,やはり,2009年4月26日付2010年4月10日付同年7月8日付の各本備忘録でも言及した「二重行政」という「ドクトリン」*7の,政令指定都市側の具体的な認識.本提案では,「現状」で「道府県と指定都市の双方が実施」とされているものとして「公営住宅」「企業支援」「商店街の活性化」「病院」「認定子ども園」「幼稚園」「都市計画」*8を例示.これらが「双方が実施」されていることで,例えば「住民から見て手続きが煩雑であるなどの障害」*9が具体的にどのように生じているのかに関しては,同資料からは把握できない.制度的に一元化を図るという法的な対策を図る場合(運用上で解消できそうな事象もあるように思わなくもありませんが),やはり「二重行政」の立法事実の確定がまず行わなければ,例え,魅力的な構想であっても,「間違った設定の問題を(正しい定義と誤って)解くという誤り」である「第3種過誤」*10の罠に陥る虞も考えられなくもない.「二重行政」という政策問題の解消に結びつくことを示すためにも,やや愚直に,その現象を提示していくことがまずは適当か.

*1:指定都市市長会HP(指定都市市長会議)「「第31回指定都市市長会議」の開催について

*2:指定都市市長会HP(地域主権改革の必要性指定都市制度の課題新たな大都市制度の創設に向けて)「新たな大都市制度の創設に関する指定都市の提案〜 あるべき大都市制度の選択「特別自治市(仮称)」〜【基本的考え方】」(指定都市市長会

*3:産経新聞(2011年7月28日付)「横浜「危惧」大阪市「橋下流パフォーマンス」…名古屋は擁護 大阪都構想で政令市長会

*4:前掲注3・指定都市市長会(新たな大都市制度の創設に関する指定都市の提案)4頁

*5:指定都市市長会HP(意見表明・活動報告平成24年度国の施策及び予算に関する提案)「平成24年度国の施策及び予算に関する提案」13頁

*6:大森彌『変化に挑戦する自治体』(第一法規,2008年)201頁

変化に挑戦する自治体―希望の自治体行政学

変化に挑戦する自治体―希望の自治体行政学

*7:牧原出『行政改革と調整のシステム』(東京大学出版会,2009年)20頁

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

行政改革と調整のシステム (行政学叢書)

*8:前掲注5・指定都市市長会平成24年度国の施策及び予算に関する提案)13頁

*9:真渕勝『行政学』(ぎょうせい,2009年)391頁

行政学

行政学

*10:秋吉貴雄,伊藤修一郎,北山俊哉『公共政策学の基礎』(有斐閣,2010年),66頁

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)

公共政策学の基礎 (有斐閣ブックス)