高齢者の孤独死を防ごうと、東京都中野区は二十一日、平時の見守りのため町会などに高齢者らの個人情報を提供する「地域支えあい活動推進条例」により、約九百人分の名簿を地元の八町会・自治会に交付した。同条例は四月、本人が拒否しない限り情報提供を認めた全国初の条例として施行され、初めての名簿提供となった。各町会は安否確認の訪問などに役立てる。田中大輔区長は「後に続く町会を力づける活動を」と励ました。
 名簿掲載の対象は、主に七十歳以上の単身者、七十五歳以上の高齢者のみの世帯と障害者。高齢者は本人が拒否しない限り、障害者は希望者のみ、氏名、住所、年齢、性別の情報を提供する。区は事前に本人に通知し、名簿に載せるかどうかの意向を確認した。名簿は年一回更新。条例により名簿の管理者、閲覧者を定め、情報管理を徹底する。違反した場合には三十万円以下の罰金を科す。

本記事では,中野区における「地域支えあい活動推進条例」*1の実施状況を紹介.
同条例第7条では,同「区長」は「地域における支えあい活動を推進するために必要があると認めるとき」は,「地方自治法」「第260条の2第1項に規定する地縁による団体」のうち「現に支えあい活動を行い,又は行おうとする団体に限る」もの,「民生委員法」に「定める民生委員」,「児童福祉法に定める児童委員」,「警察署」,「消防署」(同条第2項)に対し「70歳以上の単身の世帯に属する者」「75歳以上の者のみで構成される世帯に属する者」,「身体障害者福祉」の「規定により身体障害者手帳の交付を受けている者」,「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」の「規定により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者」,「東京都知事の定めるところにより愛の手帳の交付を受けている者」,「児童福祉法」「第4条に規定する児童」及び「同法第6条に規定する保護者」で「区長が特に支援が必要であると認めた者」,そして「前各号に掲げる者に準ずる者として区長が認めた者」(同条第1項)に「係る情報」として「氏名,住所,年齢及び性別」,「支えあい活動を行うに当たり必要となる事項に限」り「当該者が提供することを希望する事項」(同条第3項)を,「調製する名簿」を「書面」(同条第4項)により「提供することができる」.
また,「支援を必要とする者の生命,身体又は財産に急迫した危険があると判断したとき」には「団体等又は区長が適当と認める者に対し」て「当該支援を必要とする者に係る情報」として「その者の氏名,住所,年齢,性別その他区長が必要と認める情報」を「提供し,支えあい活動に係る協力を依頼」することもできるとも同条第14条に規定されており,災害時要援護者への情報面での支援も行われることになる.
「行政媒介型」*2として地域活動を支える自治会・町内会.同条例では,これらの団体のうち「地縁による団体」に限定されている模様.情報提供の手続は,同条例第8条により,「70歳以上の単身の世帯に属する者等に係る情報」に関しては「当該者からの同意を得ることなく」「提供」を「おこなうことができる」ことが前提.ただし,「当該者から不同意の申出があった場合」には「地縁団体に対しては」「当該者に係る情報の提供は行わない」とも規定されており,不同意による情報の提供を行わない団体は,「地縁団体」に限定される(何故なのだろう,要確認).本記事を拝読させて頂くと,「約九百人分の名簿を地元の八町会・自治会」に,今回提供された,とのこと.
2011年10月17日付の本備忘録にて記録した「情報共有に基づく協働への妨げ」*3となる個人情報保護法への「いわゆる「過剰反応」」*4の是正の取組.他の自治体における対応状況も,要確認.

*1:中野区HP(暮らしのガイド生活・仕事・地域活動・相談区民の地域活動・公益活動)「地域での支えあい活動

*2:辻中豊・ロバート・ペッカネン・山本英弘『現代日本自治会・町内会』(木鐸社,2009年)195頁

*3:藤原静雄「情報共有の政策法務」北村喜宣・山口道昭・出石稔・礒崎初仁『自治政策法務』(有斐閣,2011年)498頁

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

自治体政策法務 -- 地域特性に適合した法環境の創造

*4:内閣府HP(消費行政・食品安全の総合窓口消費者庁個人情報の保護)「個人情報保護に関するいわゆる「過剰反応」への対応に係る調査報告書(平成19年度)」(内閣府,平成20年3月)1頁