県の財政再建策を検討してきた外部会議「県緊急財政対策本部調査会」(神奈川臨調・座長=増田寛也総務相)は17日、歳出抑制や財源確保の方向性を盛り込んだ最終意見をまとめた。「県有施設の原則全廃」や「補助金の一時凍結」を打ち出した中間意見に「課税自主権の活用」などの増収策が追記され、近く黒岩祐治知事に提言する。県は提言に基づいた視点で見直し対象を絞り込み、県民意見を踏まえた上で来年度予算に反映させる考えだ。
 最終意見は、7月にまとめた中間意見に補足した格好。焦点となっている県有施設の原則全廃や補助金の一時凍結による見直し−といった提言は、すでに県としての方針が示されていることもあり、表現を含め修正しなかった。
 一方で県独自の取り組みとして新たに盛り込まれたのは、自主財源確保に向けた施設使用料の見直しや課税自主権の活用など。課税自主権に関しては住民税所得割の税率引き上げを例示し、「発動のタブー視や議論を避ける姿勢はとるべきではない」と指摘した。県による財政再建策の断行に際しては「県民、団体、市町村と危機感を共有し、説明責任を果たすと同時に合意形成を図り全力で取り組むべき」とし、県議会に対しても「緊急財政対策における自らの役割」を積極的に議論するよう求めた。
 同日夜に県庁で開かれた調査会では、▽改革の進行状況を定期確認する会計資料の提出▽税収増につなげる成長戦略の提示−などが議論され、最終意見に盛り込むことで一致した。増田座長は「全国の自治体が神奈川方式を見習うよう、絶対に成功させてほしい」と述べ、知事のリーダーシップと県職員の実行力に期待を表明。黒岩知事は「会計の『見える化』はただちに検討を開始する。腹をくくって結果を出したい」と述べた。

本記事では,神奈川県における財政再建の検討状況を紹介.
2012年5月27日付の本備忘録にて記録した「緊急財政対策本部調査会」について,2012年9月17日に開催された第4回会議*1に提出された「最終意見(案)」*2を紹介.既に,2012年7月18日に提出された「中間意見」*3で提示された,「県有施設」「補助金・負担金」「教育のあり方」「人件費の抑制」に加えて「最終意見(案)」では「「公共建築工事の積算方式」と「その他財源対策(地方税財政制度)」について追記.本記事でも紹介されているように,「県有施設は原則全廃」*4も「表現を含め修正」なく,最終意見(案)として取りまとめられている.
ただし,同調査会でいう「全廃」は,そのことば通り,全てを廃止するものではない模様.例えば,「施設の機能を維持したまま市町村等へ移譲すること」,「必要性を精査のうえ,存続の必要があると判断した施設」は「「独立採算」「受益者負担」等の観点から,「当該施設の機能を維持しつつ、維持管理に係る県の一般財源負担を限りなくゼロに近づけることも含むものである」,という.そのため,正確には,広義の「全廃」のなかには,廃止,譲渡,維持の3つの選択肢が含まれていることが分かる.また,同調査会が対象とされている「県有施設」とは,「県民利用施設」,「出先機関」「社会福祉施設」「県営住宅」の4分野となるものの,「中間意見」及び「最終意見(案)」ともに,一つひとつの施設を,広義の「全廃」のなかの上記の選択に基づき精査されてはいない.「中間意見」及び「最終意見(案)」では,広義の「全廃」を考えるうえでの「見直しの観点」が提示されている.
施設の存廃をめぐる判断について,その「重要性」と「複雑性」が高い場合,同調査会が,各観点から一つひとつの施設をまずは「見直」してことが適切とも考えられなくはないものの,実際の見直しの判断は,今後の同県側へと「委任」されている.これらの委任後の見直し過程に対して,同調査会からの「手続的な統制」*5も具備されているのだろうか.今後の「見直し」の過程は,要経過観察.