会計検査院は25日、東日本大震災で政府が2011年度に計上した復興経費14兆9243億円のうち、支出されたのは54.2%の8兆906億円とする集計をまとめ、参議院に報告した。全921事業ごとの執行状況を分析した結果、予算額に対する支出率が8割以上の事業が347事業あった一方、337事業が2割未満にとどまり、ばらつきがみられた。
 復興経費を巡っては、復興庁が6月に公表した集計で、11年度の一般会計の執行率を60.6%とした。検査院は今回、特別会計も含めて実際にどれだけ支出されたかを調べた。検査院は事業内容について評価していないが、各省庁の予算設計が被災地のニーズと合わないケースが目立つ。12年度への繰越額は38.3%にあたる5兆7203億円。繰り越した理由では、被災地の住民同士の合意形成の遅れなど事業計画を策定するうえで時間を要したケースが77%と大半を占めた。予算設計時よりも実績が下回るなどして国庫に返納された「不用額」は7.4%の1兆1132億円だった。
 予算額1000億円以上の大型事業のうち、支出率が10%未満だったのは7事業。海岸や港湾の復旧事業は2143億円を計上したが、工事が必要な被災地域の特定が遅れて11年度には全く使われず、1381億円を繰り越した。農地や農業用施設の復旧費用2061億円も、農地所有者との調整に手間取るなどして支出率は2.6%と低かった。全く使われないまま全額を不用額とした事業も5件あり、被災地の新卒者の就職支援のため集団面接会場を借り上げる厚生労働省の事業(972万円)は被災地で賃貸物件が逼迫したため断念。農協の倉庫などの復旧事業(14億円)は補助対象が原状回復費用にとどまり、設備を更新して再建を図りたい被災者とニーズにズレが生じて使われなかったという。

 会計検査院東日本大震災の復興予算が配分された被災地の58市町村を調べたところ、2011年度中に復興予算が使われた割合を示す事業執行率が4市町で2割未満にとどまることが25日、分かった。復興交付金の分配が遅れたことや職員の事務負担の増加などが原因。被災地では復興のスピードアップを求める声が多い。
 執行率は福島県双葉町で6.6%、岩手県洋野町で11.5%などにとどまる一方、宮城県東松島市(94.9%)など8市町村では8割を超え、自治体間で大きな開きがあった。第3次補正予算の成立が遅れ、復興交付金の交付は昨年度末にずれ込んだ。岩手県宮古市の担当者は「交付金事業を年度内に終えるのは難しかった」と話した。事務負担増では震災前の年間の公共事業費と復興事業費の変化を比較。7.9倍を記録した南三陸町は震災直後、全人口約1万7千人の半数以上が自宅を失うなどして避難。財政担当職員は「仮設住宅の確保が最優先で、がれきの撤去などは後に回さざるを得なかった」と振り返る。現在も他県から約60人の職員を受け入れているが「業務量が膨大で、人手が慢性的に足りない」と嘆いた。
 事務量の負担を訴える声は各自治体に多く、宮城県石巻市(23.3倍)、岩手県陸前高田市(13.2倍)など被災3県(宮城、岩手、福島)の10市町村で10倍を超えた。被災地では進まない復興事業に不満が募る。宮城県気仙沼市で水産会社を経営する男性(41)は「港の岸壁すら復旧していない」と首をかしげる南三陸町仮設住宅に暮らす女性(47)は「学校の統廃合など町づくりの方向性が決まっておらず、復興が進んでいるという実感はない」とため息をついた。

両記事では,会計検査院による復興予算の執行状況及び被災市町村における事業執行率に関する報告内容を紹介.
同報告は,2012年10月25日に報告された「会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書 「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」」*1.第2記事で紹介されている「事業執行率」は,「特定被災区域の227市町村」から,「第1回復興交付金事業計画に基づく復興交付金交付可能額の通知を受けた」「59市町村」のうち,「道県分のみが交付され,当該市町村交付分の該当がない1市を除く58市町村」を対象.「被災市町村の負担を考慮」したうえで,58市町村に調査票を送付し,その回答を求める」方法により検査.同検査に際しては,「各市町村の実施体制に係る現状や要望等」の「率直な意見を求め」*2た,という.
第2記事でも紹介されているように,「24年5月末現在の国庫補助金交付決定額に対する交付額の割合」を「国庫補助金執行率」と呼び,「58市町村平均で49.5%」,そして,「復興交付金執行率」と呼ぶ「復興交付金交付額のうち23年度対象事業費に対する基金からの取崩し額の割合」は「復興交付金
事業を実施した25市町村平均で22.1%」,「国庫補助金執行率と復興交付金執行率とを合わせた市町村が実施する復旧・復興事業の執行率」を「市町村事業執行率」とすると,「48.8%となっている」*3という.ただし,もちろんいずれの執行率も「いずれも市町村によって大きな差」*4
第2記事では,その要因として「復興交付金の分配が遅れたことや職員の事務負担の増加などが原因」と紹介.ただ,同検査では「職員1人当たりの復興交付金等合計額等の規模」も検査されており,「市町村によっては通常の職員1人当たりの歳出規模を大幅に上回って」いること,「特に,社会基盤施設の整備等に充てられる公共事業関係交付金等合計額の規模」は「市町村が通常執行する公共事業費に対して」「集中復興期間に相当する5か年度分を上回っているような市町村」では「当該市町村において復旧・復興事業の実施に当たる土木部門職員に大きな事務負担が生じていると考えられる」*5とその検査結果と現況への「考え」が提示されており,市町村事業執行率が48.8%である要因とまでは言及されていないように読めなくもない(下名の読み方が悪いのかもしれません).
ただし,職員数と事業費の執行率との間での「相関関係」*6は,本年度から取り組んでいる研究の一つの関心からも確認してみたい事項.データを下に,今後の観察課題.

*1:会計検査院HP(公表資料検査関係検査結果検査結果(平成24年分) 国会からの検査要請事項に関する報告 24年10月25日2会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書 「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」」(会計検査院,2012年10月)

*2:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書 「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」)96頁

*3:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書 「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」)99〜100頁

*4:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書 「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」)100頁

*5:前掲注1・会計検査院会計検査院法第30条の3の規定に基づく報告書 「東日本大震災からの復興等に対する事業の実施状況等に関する会計検査の結果について」)108頁

*6:竹田憲史「相関関係」松田憲忠・竹田憲史『社会科学のための計量分析入門』(ミネルヴァ書房,2012年)182頁

社会科学のための計量分析入門―データから政策を考える

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