• 中井検裕「津波被災地の都市計画 ―都市計画技術者としての報告―」『自治研究』第89巻第1号,2013年1月号,3〜19頁
  • 生田長人「被災対策法制の抱える主要課題とその検討の視点」『自治研究』第89巻第1号,2013年1月号,37〜53頁

自治研究 2013年 01月号 [雑誌]

自治研究 2013年 01月号 [雑誌]

何事もないことを祈りつつ待つことが仕事の本日.本日は,『自治研究』に掲載された「第11回行政法研究フォーラム」での報告が基となる二本の論攷.
昨年から勉強を進めているテーマが,復興計画.任意の制度でありながらも,なぜ,復興計画は策定された(る)のか,そして,策定された復興計画の策定体制がなぜ「震災前の基本計画審議会と類似の体制をとった」(6頁)のかをテーマに考え,調べています.中井検裕先生の論攷を読み進めると,陸前高田市での復興期計画の策定過程で議論された論点を踏まえた同市の復興計画の姿勢に,なるほどと思いました.

(前略)復興計画の実現に時間がかかることを考慮すると,現在を前提とした復興計画は過剰投資の恐れがあり,縮小をどのように計画に組み込むかが課題とされていた.復興計画は限られた時間内で決めなければならないこと,しかも被災者に希望を与えるような計画であることが求められているということを考えると,そうした長期的な課題をも復興計画で全てを考慮し,完全に反映させることにはもともと無理がある.そこで必要とされているのは,人口減少・高齢化時代のモデル都市という大きなイメージを共有しつつも,状況に柔軟に対応しつつ,計画と事業が相互に呼応しながら最適な着地点を見出すダイナミックな計画行為だと思う」(11頁)

また,上記のような問題意識から復興計画を読みすすめていると,計画と策定後と現実との間に,策定時期についても悩むことが多くなりました.そこで,生田長人先生の論攷で論じられている復興計画の策定時期の提案には,なるほどと思いました.

復興計画の策定時期は,災害直後ではなく,被災住民が自らの将来の生活と地域を落ち着いて考えられるようになった時期である必要がある.一般的に見ると,多くの市町村では,復興計画の策定を急ぐ傾向が見られるが,その背景には,生活の再建を急ぐ被災住民の強い意向があるからのようである.(中略) 必要なことは,復興計画の策定を急ぐことではなく,災害直後の救助に続く被災者の生活の再建支援という分野の施策を充実して,被災者の生活の維持を図り,その不安を取り除くことであり,将来の生活設計と地域の復航をを同時に考えることができる環境を整備することだと考える」(49頁)