4月の太田市長選で3選を果たした清水聖義市長が5月1日発行の市広報紙に掲載したコラム「こんにちは市長です」に、公職選挙法で制限されている選挙後のあいさつ行為に当たる可能性がある記述が見つかり、市は30日、急きょ配布を中止した。
 清水市長はコラムの冒頭で「(投票率は低かったが)約6割の支持を得て当選することができました。ありがとうございました」などと書いた。公選法178条によると、戸別訪問や集会などで選挙後のあいさつを行うことを禁じている。県選管は「一般論だが、自筆の親書による特定の人へのあいさつを除いて、不特定多数に対して文書で当選のあいさつをするのは法に抵触する恐れがある」としている。
 清水市長は毎日新聞の取材に「素直な自分の気持ちを書いただけで、公選法の規定を知らず違反の認識がなく軽率だった」と釈明した。広報紙は全世帯向けに8万3500部を印刷済みで1日の朝刊各紙に折り込む予定だったが、指摘を受けて配布を取りやめた。全て廃棄し、印刷し直して後日改めて発行する予定。コラムは現在の形で10年以上続いており、清水市長自らが執筆し毎月3回の広報紙に毎回掲載している。秘書室で内容をチェックするが、今回は選管などへは問い合わせなかったという。【金沢衛】

本記事では,太田市における広報紙回収について紹介.
回収後に配布された同市広報は,同市HPを参照*1.まず表紙の最下段に,「内容に誤りがありましたので発行が遅れましたことをおわび申し上げます」との白抜きで記載.そして,同コラムの冒頭では,本記事が紹介する元のバージョンから,「また『こんにちは市長です』を復活できます.拙文ばかりで申し訳ないと思いますが,自分の考えていることを率直にお伝えできるようにしていきます」と改められている.
以前から疑問には思いつつも,選挙運動としての理解なのかなあと思い,確認したことがなかった公職選挙法第178条に基づく選挙期日後のあいさつ行為の制限.安田充・荒川敦編著『逐条解説 公職選挙法』(ぎょうせい,2009年)を書棚から取り出して同条項を読んでみると,同行為禁止の理由は次のように説明されている.まず,「選挙の期日後のあいさつ行為は,その性質からいえば,選挙運動とはいえないもの」,そして,「選挙終了後当該選挙の当落に関してあいさつし又はこれを受けることは,社会生活上通常のことと考えられるものである」とする.それにもかかわらず禁止する理由は,「選挙に関連して行われるものである限り,選挙の期日後であっても」「多くの費用を要したり,事後買収等の幣も少なくないと考えられたから」*2とあり,「経費縮減方策」*3もその理由の一つ考えられている,という.なるほど.
そのため,同規定のもとでは仮に広報を通じたあいさつ行為と判断される行為が行なわれた場合,まずはその広報に要する費用とともに,事後回収の費用も生じることにもなる.費用面からの公刊内容への事前の「厳正執行」*4を図ることも考えられなくはないものの,公刊後での回収となるのは,やはり選挙管理委員会の独立性ゆえなのだろうか.考えてみたい課題.
なお,同コラム.同回の前は3月20日号の冒頭では飄々としたタッチでひとまずの締めくくりを次のように書かれている.「取りあえず今回で休止です.このまま終わりにならなければいいのですが.4年間のご愛読ありがとうございました」*5.広報紙に掲載されている首長コラムは,結構,おもしろい.他の自治体での掲載内容を比較検討してみると,興味深そう.

*1:太田市HP(広報おおた平成25年度広報おおた 平成25年5月1日号)「広報おおた 平成25年5月1日号

*2:安田充・荒川敦編著『逐条解説公職選挙法下』(ぎょうせい,2009年)1325頁

逐条解説 公職選挙法

逐条解説 公職選挙法

*3:品田裕「日本の選挙管理委員会について」大西裕編著『選挙管理の政治学 -日本の選挙管理と「韓国モデル」の比較研究』(有斐閣,2013年)146頁

*4:前掲注2・品田裕2013年:146頁

*5:太田市HP(広報おおた平成24年度広報おおた 平成25年3月20日号)「広報おおた 平成25年3月20日号