消せるボールペンを公文書に使わないよう、川崎市は全庁的に注意を呼び掛ける。消せるボールペンは温度変化でインクが透明になる性質で、おしゃれな文具として人気だが、メーカーも「公文書、証書類への使用はやめて」と訴えている。
 注意の発端は、三月二十五日の定期監査報告。財務そのものの問題点に加え、財務文書の作成に消せるボールペンの使用例がみられ「適切ではない」と指摘された。昨春、名古屋市で消せるボールペンによる公文書作成が問題になったことから、監査委員らは特に注意し、こすって調べた結果、監査対象三局のうち一局で五十七件の使用文書が見つかった。指摘を受けた部署は「恥ずかしい限り。今後気を付けるよう職員に指導した」と話している。公文書は重要度により五年、十年、三十年と保存が義務付けられており「熱で消えるような不安定なもので公文書を書くのは市民への説明責任、行政の透明性から不適切だ」と断じるのは、市の鈴木一正・行政情報課長。「文書を直したら直したことが分かるようでないといけない」として、注意喚起文書のほか、庶務課長会議でも注意を呼び掛ける。 (山本哲正)

本記事では,川崎市における公文書作成の筆記具の方針を紹介.「消せるボールペン」の利用への注意喚起をされた模様.
本記事によると同方針を示す経緯は,名古屋市の監査委員が2013年5月16日に公表した「定期監査及び行政監査」の「第4号」*1.同監査の意見によると,「消せるボールペンを使用して行政文書を作成している事例が複数の部署」で「散見された」とあり,同筆記具は「訂正の痕跡が残らないために容易に改ざんされる恐れがある」こと,「保管状況の変化によって意図せず退色する可能性もあ」り,「行政文書の作成に使用すべきではない」*2との意見が述べられている.
同監査では,「このような筆記具が行政文書の作成に用いられているということ」に「職員の行政文書の重要性に対する意識が希薄化していると言わざるを得ない」*3との評価もあわせて示されている.同監査では「総務局」を通じて「行政文書の作成における不適当な筆記具の使用を厳に慎むよう注意喚起を図るとともに、今一度、全庁的に行政文書の重要性に関する職員の意識向上を図るよう努められたい」*4と促している.
「少なくとも予備的審議や提案および最終的決定,各種の訓令や指令は,文書によって確定される」*5ことにより,「文書,ならびに官僚による持続的運営とはあい合して,役所を生み出すことになる」*6とすれば,「持続的運営」に支障がある同筆記具は望ましくはないと判断される模様.なるほど.

*1:名古屋市HP(市政情報監査これまでの監査等の結果定期監査・行政監査・財政援助団体等監査の結果及び措置の状況平成25年監査公表第4号)「定期監査及び行政監査

*2:前掲注1・名古屋市(定期監査及び行政監査)10頁

*3:前掲注1・名古屋市(定期監査及び行政監査)10頁

*4:前掲注1・名古屋市(定期監査及び行政監査)11頁

*5:マックス・ウェーバー『権力と支配』(講談社,2012年)37頁

権力と支配 (講談社学術文庫)

権力と支配 (講談社学術文庫)

*6:前掲注5・マックス・ウェーバー2012年:37頁