都情報公開・個人情報保護審議会(会長・宇賀克也東京大大学院教授)は二十四日、公文書開示の閲覧手数料の無料化などを小池百合子知事に答申した。都は答申を踏まえ、二〇一七年度中に情報公開条例を改正する方針。
 答申は、情報公開の推進には現在一枚十円としている公文書の閲覧手数料を無料にすることが有効で、コピーの交付手数料も実費相当のモノクロ一枚十円(現在二十円)、カラー二十円(同百円)に減額することが妥当だと指摘。公文書を電子データで無料提供するシステムの整備も促している。さらに都に、自ら透明性を高めようという意識改革が重要だと提言した。
 答申を受け取った小池知事は「東京大改革の一丁目一番地は情報公開。これまで都は(情報公開の)透明度が四十何番目と言われていたが、一気に一番上を狙いたい」と述べた。 (唐沢裕亮)

本記事では,東京都における情報公開制度の取組を紹介.
同都に設置された「東京都情報公開・個人情報保護審議会」*1では,2017年1月12日に,同都知事から「情報公開の新たな取組について」と題する諮問を受け,「公文書開示における手数料の見直しについて」,「ICTを活用した公文書データの提供について」,「積極的な行政情報の公表について」*2を審議.2017年3月24日には,本記事に紹介されている通り,同都知事に対して『東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~』を「答申」*3
同答申では,まず一つめの諮問事項に対しては,「閲覧手数料(を無料とすることは情報公開の推進に有効」*4との考え,「写しの交付手数料」に関しては「少しでも負担を 軽減するため最低限の実費相当に減額し,モノクロ1枚20円を10円に,カラー1枚100円を20円にすることは妥当」*5との考えが示されている.
二つめの諮問事項には「都民等が求める文書」を「開示請求制度によらず無料で電子データによる情報提供を行うなど,速やかに実現できる新たな仕組み等を検討し,できるだけ早期に,電子的に公文書の情報を提供できるようなシステムや規定を整備することが望ましい*6との考え,また「情報公開手続のオンライン化」は「具体的な実現までには一定の時間をかけて慎重に進めるべきではある」ものの「将来的には開示請求から決定通知の発送,閲覧・写しの交付に至る情報公開の手続全体を総合的に電子化することが望ましい」*7との考えが示されている.
三つめの諮問事項には,まず「都政の透明化を図る上では」「都民等からの求めを待つことなく」「報道機関のみならず」「都民等へ直接かつ積極的に情報の公表・提供を進めることが 不可欠」*8とし,同都の「条例第35条第2項」において「実施機関は,同一の公文書につき複数回開示請求を受けてその都度開示をした場合等で,都民の利便及び行政運営の効 率化に資すると認められるときは,当該公文書を公表するよう努めるもの とする」との規定がありつつも「条例の趣旨を踏まえた適切な運用が行われているとは言い難い」との評価を示し,「行政情報の積極的な公表の責務について改めて徹底すべき」*9との考えが示されている.
他方で,上記の「新たな取組の運用」に伴い「閲覧手数料を無料化することにより」「請求者が気軽に公文書開示の請求をできるようになる」「反面,以前から見受けられる請求権の濫用や過大な請求の増加が懸念される」こと,そして「行政情報を無料で電子データにより提供することになると」により「請求対象の情報量が膨大化するおそれがあること」は「課題」*10とも答申されている.「住民参加の大前提」*11となる同制度.今後の改正状況は,要観察.

*1:東京都HP(情報公開の窓)「情報公開・個人情報保護審議会

*2:東京都HP(情報公開の窓情報公開・個人情報保護審議会)「情報公開・個人情報保護審議会(議事録)第67回東京都情報公開・個人情報保護審議会

*3:東京都HP(都政情報報道発表これまでの報道発表 報道発表/平成29(2017)年 3月東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 情報公開の新たな取組について)「東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~

*4:前掲注2・東京都(東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~)3頁

*5:前掲注2・東京都(東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~)3頁

*6:前掲注2・東京都(東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~)4頁

*7:前掲注2・東京都(東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~)4頁

*8:前掲注2・東京都(東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~)5頁

*9:前掲注2・東京都(東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~)6頁

*10:前掲注2・東京都(東京都情報公開・個人情報保護審議会答申 ~情報公開の新たな取組について~)7頁

*11:柴田直子「第3章 参加と統制」柴田直子・松井望編著『地方自治論入門』(ミネルヴァ書房,2012年)62頁

地方自治論入門

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