選挙になると結集して開票所内を駆け回る一団が、東京都足立区役所にいる。そろいの濃紺Tシャツ姿の通称「カラス軍団」だ。今回、衆院選に向けて各部署から招集した軍団は四十七人。くしくも、投開票日は赤穂浪士討ち入りと同じ十二月十四日だ。都内屈指の開票作業の速さと正確さを誇る足立の「四十七士」の戦いが始まった。 (奥野斐)
 「準備期間が短く、厳しい選挙」。カラス軍団を率いる筆頭班長の依田(よだ)保さん(45)は気を引き締める。
 開票所で、投票箱を素早く運び入れ、進行状況を見ながら職員や票の移動を指示するなどし、開票の効率化、迅速化につなげるのが軍団の役割。多くの自治体では選挙管理委員会事務局が開票作業の全体指揮を執るが、足立区では、ふだんは介護保険課長の依田さんが軍団を率いる。今年二月の都知事選で区の開票は午後八時五十分に始まり、同十時五十五分に終了。有権者数は二十三区で四番目に多いが、区によると、この時の全票確定は四位の速さだった。軍団は一九七二年結成。当時は翌日開票だったため通常業務への影響を最小限にしようと、各部署から体力自慢の若手職員を集めた。現在はサッカーやラグビーなどで鍛えた五十三人が名前を連ねる。メンバーが後輩をスカウトして、伝統を受け継いでいる。職場は別々で、選挙が近づくと招集がかかる。吉良邸討ち入りの日が投開票の今回、集まったのが四十七人なのは「職場の都合がつく人を集めた結果で、全くの偶然」と依田さん。
 当日は12区と13区、二つの開票所に配置。有権者数が多い13区では小選挙区比例代表最高裁裁判官国民審査の投票箱計二百一箱を若手が抱え、開票所の総合スポーツセンター一階からエレベーターで三階に上げ、作業会場へ走って運ぶ。開票作業中も常にジョギング状態で会場を見回し、用紙を選ぶ。依田さんは統一地方選があった二〇〇七年に軍団にスカウトされ、間もなく筆頭班長に抜擢(ばってき)された。関係機関との調整力や、年上にもはっきり物を言える人柄が買われたと、周囲はみている。本職の介護保険課は来年度の制度改正を控えて多忙だが、合間を縫って開票所のレイアウトや職員の役割分担、機器の配置を考えるなど、準備に余念がない。今回初めて有権者数が少ない12区の開票所にも新しい自動読み取り機を入れ、スピードアップを図る。十四日は軍団のほか職員約五百人が開票や分類、内容点検にあたる。「四十七士」の先頭に立つ大石内蔵助ならぬ依田さんの目標はこうだ。「正確に早く結果を伝えるのはもちろん、開票の職員を翌日の業務に支障がないよう、午後十一時には帰宅させる」

本記事では,足立区における選挙管理業務の取組を紹介.
選挙管理行政の「事務部門の最前線で働いている人の姿」*1として,2009年7月4日付の本備忘録でも記録した,同区における「カラス軍団」の取組.本記事によると,2014年2月9日の東京都知事選挙では,20時50分に開票し22時55分に「最終確定」*2し,「有権者数は23区で4番目に多い」なかで「全票確定は4位の速さ」であった,という.今回の衆議院議員選挙における全票確定時間は,要観察.

*1:品田裕「日本の選挙管理委員会について」大西裕編著『選挙管理の政治学 -日本の選挙管理と「韓国モデル」の比較研究』(有斐閣,2013年)146頁

*2:足立区HP(地域文化活動区民参加選挙平成26年2月9日執行 東京都知事選挙 投・開票状況)「平成26年2月9日執行 東京都知事選挙 開票状況(最終確定:午後10時55分)