横浜市と、市内の特別養護老人ホーム事業者でつくる公益社団法人「市福祉事業経営者会」は今月から、特養に入所を申し込んだが、入れなかった「待機者」を対象に、特養以外の適した介護施設を紹介する事業「施設のコンシェルジュ」を始めた。これまで、在宅介護を担う家族やケアマネジャーらが独力で入所できる施設を探していたが、同経営者会が市内全域の施設情報を集め、紹介する。市によると全国初の取り組みという。 (志村彰太)
 特養への入所は、入所希望者が個々の施設に申し込むのが通常だが、横浜市では二〇〇三年度から独自の仕組みを採用。同経営者会が第五希望まで入所希望施設を一括して受け付け、要介護度や家族の状況などに応じて点数を付け、上位の申込者を優先して入所してもらっている。
 市高齢施設課の担当者は「申込者の事務負担軽減と、入所決定に公平性を図るため」と説明。その一方で、市内では特養の受け入れ数を毎年三百人分増やしているが、なかなか減らない状況が続き、今も四千五百人が入所できていない。
 コンシェルジュは、相談に来るのを待つのではなく、待機者の元に出向くか電話して、要望や課題を聞き取る。その上で、個々に適した施設を紹介するか、入所できるタイミングを待つかなど、今後の対応を助言する。
 市の担当者は「申込者は特養しか選択肢がないと思っている場合がある。例えば、いずれ自宅に戻りたいという人は、リハビリを重視する介護老人保健施設が適している。緊急を要する人には、料金負担が特養に近い有料老人ホームを紹介できる」と利点を語る。
 コンシェルジュは二人配置した。現在、待機者が申し込んだ施設が、実際に必要な介護や支援に適しているかを検討している。六月から、待機者四千五百人のうち、直接の相談を希望した千人に電話したり訪問したりして状況を確認する。可能な場合は、特養以外の介護施設を紹介する。
 コンシェルジュの一人、臼木和子さん(43)は「入所待ちの人が孤独にならないよう、話をよく聞いて助言できれば」と意気込んでいる。
 昨年五月に申込者や待機者の相談窓口「高齢者施設・住まいの相談センター」を上大岡駅港南区)近くに設置したのに続く対策。市では、保育事業で同様のコンシェルジュが既に機能しており、「待機児童を減らした実績を参考にした」という。ただ、「待機者を減らすことだけ考えると、ミスマッチが発生する。丁寧な相談と本人の希望をかなえることが重要」として、市は「待機者ゼロ」は目標にしていない。

本記事は,横浜市における高齢者の施設及び住まいの相談の取組を紹介.
同市では,「住いの状況,受けている医療の状況,認知症の有無,在宅サービスの利用状況や供給状況,毎月支払いができる利用料金」,「特養以外に関心がある施設サービスなど」の「調査」を「踏まえ」て,2016年4月1日より,「高齢者施設・住まいの相談センター」に.「2人」の「施設のコンシェルジュ」を「配置」*1.同コンシェルジェが,「入所申込者に対して電話等によるアプローチ」*2を採用している.同コンシェルジェの設置により,同市では「入所申込者の中」に「特養以外の施設でも個々の状況に適した施設があるにも関わらず」「入所待ちをされている方」が「相当数含まれている」と考え」,「そうした方々に対して」「個々の状況に適した高齢者施設や住まいを案内」し,「特養の待機者の減少に繋がり」「その結果」「真に困っている入所申込者が早期に入所できる仕組みを構築することができ」る「効果」*3への期待が示されている.本記事では,同コンシェルジェ制度の実施状況を紹介.一つひとつの相談への「政策対応」*4の結果は,要観察.

*1:横浜市HP(記者発表資料過去の一覧 2016年3月高齢者施設・住まいの相談センターに「施設のコンシェルジュ」を配置します 〜平成28年4月1日から〜)「高齢者施設・住まいの相談センターに 「施設のコンシェルジュ」を配置します~平成 28 年4月1日から~」(平成 28 年3月 24 日 健康福祉局高齢施)1頁

*2:前掲注1・横浜市(高齢者施設・住まいの相談センターに 「施設のコンシェルジュ」を配置します~平成 28 年4月1日から~)1頁

*3:前掲注1・横浜市(高齢者施設・住まいの相談センターに 「施設のコンシェルジュ」を配置します~平成 28 年4月1日から~)1頁

*4:曽我謙悟『行政学』(有斐閣,2013年)379頁

行政学 (有斐閣アルマ)

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