静岡県と東急、3次元地形データ活用で協定 (日本経済新聞2019年4月15日)静岡県と東京急行電鉄は15日、県内の地形や構造物などをバーチャル空間に3次元の点の集まりとして表す「3次元点群データ」を相互に利活用する協定を締結した。自動運転の実証実験や観光PR、インフラ維持管理の効率化などに役立てる狙い。自治体と民間がこうした協定を結ぶのは珍しく、注目を集めそうだ。「伊豆半島での自動運転、観光、街づくりに活用し、『世界の伊豆』として花開くと期待している」。県庁内で開いた協定締結式で、川勝平太知事はこう語った。一方、東急の高橋和夫社長は「空港や鉄道のインフラ管理で新しい省力化技術を開発している。3次元点群データの可能性を追求し、静岡の魅力づくりに取り組んでいきたい」と話した。静岡県は現在、計2700キロメートルある県道のうち伊豆地域を中心に1000キロ分について3次元点群データを収集・蓄積し、データベース「Shizuoka Point Cloud DB」として公開している。協定締結により、東急系列で伊豆半島東部に路線を持つ伊豆急行(伊東市)の点群データや、東急が三菱地所と合同で運営を始めた静岡空港などの点群データを組み入れる。
県は2019年度当初予算で5億7000万円を投じ、伊豆半島全域の3次元点群データを航空測量を使って収集し始めている。将来は県全体を対象にした巨大なデータベース構築を目指しており、東急と組むことでより正確で効率的にできるとみている。
3次元点群データの活用方法は幅広い。例えば防災。東急は伊豆急の路線からレーザースキャンで取得した点群データは持つが、急な山の斜面などは持っていない。県との協定により、大雨や土砂崩れのシミュレーションがしやすくなり、効果的な防災計画が立てられるという。
東急は4月から、伊豆半島を舞台に次世代交通サービス「MaaS(マース)」の実験を始めた。現在、下田市街地では予約状況により人工知能(AI)が大型タクシーの最適ルートを判断して手配する仕組みを展開。11月からは、大型タクシーの自動運転も導入する予定で、県のデータを活用しながら実験に乗り出す。
観光への活用も視野に入れる。東京五輪・パラリンピックの20年をメドに、東急は伊豆半島ジオパークの地層や世界遺産の韮山反射炉(伊豆の国市)などの点群データを使った映像を飛行機や電車内で放映する。仮想現実(VR)技術を駆使し、伊豆の山道を自転車で走るような体験ができる仕組みの開発も進め、魅力発信につなげる。
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本記事では,静岡県における協定締結の取組を紹介。