高齢者が多く、将来消滅の可能性がある限界集落などを支援するため、県は2008年度、「県中山間地域振興条例」を制定する。山村と都市部との交流を進めたり、用水路の維持管理を手伝ったりする団体に補助金を出すなど具体的な支援策を盛り込む考えだ。中山間地域を抱える県内15市町と条例内容の協議を進め、早ければ9月県議会に条例案を提出する。
 県の方針では、高齢化が進み世帯数も少ない集落を条例適用対象に指定。その上で▽都市部との交流推進▽買い物や通院が不便な地域でのバス運行▽特産品作り▽伝統行事や伝統文化の保存、継承▽携帯電話の不感地域の解消――などの活動を行う団体に県や市町が補助金を出す。県の基本方針に対し、市町側からは▽支援対象の集落特定が難しいのではないか▽振興策だけでなく田畑や山林、自然環境の保全にも力を入れるべき――などの意見が出ており、県は今後も市町との協議を進める。県は「各市町に意見を聞いた上で、集落を元気づける効果的な条例に仕上げたい」としている。県によると、06年に国交省が過疎法に指定された県内10市町を対象に行った調査で、全集落493か所のうち82%にあたる402か所が中山間地にあった。集落人口10人未満が13か所、10〜24人が29か所あった。65歳以上の高齢者が過半数を占める集落が58か所で、全員が高齢者という例も4か所あった。住人だけで用水路の維持管理や冠婚葬祭などを行う「集落維持」について、「困難」と答えたのが10か所、「機能が低下している」としたのが48か所。10年以内に消滅する可能性がある集落が1か所、それ以降が11か所だった。都道府県で中山間地域振興に関する条例を制定しているのは岡山、島根など4県。限界集落の支援に限定した条例としては、京都府綾部市が山間部の集落での定住促進や特産物開発などを支援する「水源の里条例」を07年4月に施行している。

同記事では,鳥取県で,いわゆる「限界集落」支援のために「県中山間地振興条例」の制定予定であることを紹介.中山間地域への振興は,限定された区域への業務でありながらも,広域的対応でなければ実現できない「広域事務と補完事務の関係の流動性*1の事例の一つともいえる.深刻な自治制度上の課題.
第29次地方制度調査会では,小規模町村についても審議事項の一つとされている.ただ,現在のところ,監査制度論への議論に終始している状況を読むと,小規模町村に関する審議事項は,いわゆる「棄却」型*2となるのではないかと思う.同調査会は,「地方制度に関する重要事項」を調査審議するため(地方制度調査会設置法第2条),地域個別的・特殊的な審議事項よりも,一般的・普遍的な事項への指向性が高い.また,「答申はおどろくほど徹底しているのに,あまり実現したことがないという不思議な審議会である」*3との評もある.そのため,限界集落という個別課題の扱いを一般的制度として帰着させようとなると,「自治業界」的にはどうも落ち着きが悪い提案となりやすい.地制調マターではないのかもしれない.
先日,『自治実務セミナー』を読むと,櫻井敬子先生が分権改革論議の特性を,次のように看破されていた.「推進論議の議論は,個別的事務について言及する場合にも,一般的制度論の延長線上に個別的事務の分権化を主張するものであるため,各府省による現場を踏まえた,すぐれて個別的な議論との間にギャップが生じることは免れない」,「一般的な文脈で地方分権が語られると,どうも各論がないがしろになりがちであり,その結果「犠牲」になる個別事務が出てきてしまう」*4.常々思うが櫻井敬子先生の慧眼には圧倒される.地方自治制度論議も又そうであり,小規模町村対策についても,これ又然りと大いに首肯.

*1:澤俊晴『都道府県条例と市町村条例』(慈学社,2007年)73頁

*2:大杉覚「行政改革と地方制度改革」西尾勝村松岐夫編『講座行政学第2巻』(有斐閣,1994年)323頁

制度と構造 (講座行政学)

制度と構造 (講座行政学)

*3:飯尾潤『政局から政策へ』(NTT出版,2008年)191頁

*4:櫻井敬子「入門講座行政法講座34 第二次地方分権改革」『自治実務セミナー』2008年3月,10頁

自治実務セミナー 2008年 03月号 [雑誌]

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