豊島区が計画している老朽化した区役所庁舎の建て替えについて、区は十五日の区議会特別委員会で、分譲マンションと本庁舎が一体となった高層の再開発ビルを、南池袋に建設する構想を明らかにした。実現すれば全国でも異例の庁舎となる。
 高野之夫区長は「総合的に判断すると、利点が多い。第一候補として絞り込みたい」と述べた。建設候補地は、現庁舎がある東池袋から南に約七百メートルの南池袋にある旧区立日出小学校跡地一帯八千三百三十七平方メートル。池袋駅から徒歩八分、地下鉄有楽町線東池袋駅からは一分の距離にある。構想では地上四十八階(高さ約百八十メートル)地下三階建てで、一階と三−九階を区役所や区議会として整備する。二階は民間事務所などが入る。十階以上の高層部分は四百戸超の分譲マンションとなる。官民共同プロジェクトで、総事業費は四百億円を超える見込み。区は庁舎面積二万八千五百平方メートルの確保や内装整備で百二十一億円の負担が生じるが、現庁舎地を民間に貸すなどして、対応する。区はこれまで現庁舎地で建て替えた場合と並列に検討してきたが、事業収支を比べると、建て替えが四十三億円のマイナスに対して、再開発ビルでは十億円のプラス収入になるという。また区はサンシャインシティなど付近一帯の活性化も期待できるとしている。現庁舎地も三十六階建ての高層ビル建設が可能で、周辺商業活動の核になるとみている。今後は区民説明会を開くなどし、本年度中に基本計画を策定、二〇一四年度の完成を目指す。(原昌志)

同記事では,豊島区が予定している区庁舎の建て替えにおいて,分譲マンションと庁舎が一体となったビルを建設する方針にあることを紹介.現庁舎地での建て替えでは,建設費等の純減である一方,現庁舎跡地の民間への貸与や分譲マンションを設けることで,増収が見込めるとのこと.
先週からの風邪がまだ抜けきらないなかで,同案が実現した場合を考えてみると,自治行政的空想(妄想)が種々頭をよぎる.
例えば,同空間に居住する人々の拠点は,自治体(区役所)なのか,自治会なのか,マンション管理組合なのか,いずれも渾然一体となるのだろうかということ.一般的に,市・区役所は「住民の生活全般にわたって」いる反面,「何が市役所の役割かといってもたいへんわかりにく」*1との指摘もあり,役所と住民の距離が(物理的に)近いケースはなく,わかりやすさへの第一歩となりうるのだろうか.
また,例えば,自治体の事務所の位置に関しては「住民の利便に最も適合するように,交通の事情,他の官公署との関係等を考慮すべき」*2とされている.反面,当該マンションに居住する住民は他の区民に比しても過度に利便性が高いことになる.となると,「平等原理」から考慮すると妥当といえるのだろうかということ.
あるいは,将来的に当該分譲マンションを建て替えを行う場合,建物の区分所有等に関する法律(62条)によれば,区分所有者及び議決権の各五分の四以上があれば,建て替えが可能となる.当該合意が得られた場合,今後,区役所もまた建て替えを要請されることになるのかということ.
はたまた,地方自治法第4条による事務所の位置の設置及び変更に関する条例の特別多数決を行うことで,これを乗り越えることが可能であるのかということ.なお,自治体のハードとしての「事務所」(つまり役所の建物)が「必置」であるのかといえば,意外と議論が分かれそう.もしも必置でないと解することができれば,区域内に置くことなく特別区一体又は部分的に共同設置し,役所設置の「自区内処理」*3原則をも転換する機会かも知れない等々.
いずれも風邪ひきのなかでの妄想に近いが,興味深い事例.

*1:島田恵司/監修・林義人/作『まちの施設たんけん1市役所』(小峰書店,2004年)表紙裏「監修のことば」より

まちの施設たんけん〈1〉市役所

まちの施設たんけん〈1〉市役所

*2:松本英昭『新版逐条地方自治法』(学陽書房,2004年)62〜63頁

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*3:東京新聞2008年5月12日「東京ごみ戦争“和解” 他区への処理委託に『負担金』