投票は、市民団体「新庁舎見直しの住民投票を求める会」(代表・前崎みち子前市議)が投票を呼び掛けた選択肢2、図<2>が、市議十五人でつくる「次世代に活(い)きる庁舎の会」(代表・荒川修吉元市議長)が支持した選択肢1、図<1>を三千百四十票、上回った。得票は選択肢2一万二千八百九十九票(得票率57%)対選択肢1九千七百五十九票(得票率43%)。投票率は56・23%だった。
 「長く、つらい道だったが、多くの仲間と戦ってきた成果。市長は私たちの勝利を、市民自治と認めるべきだ」午後十一時五分。行動を共にした市議宅で喜びに沸く支援者四十人を前に、新庁舎見直しの住民投票を求める会の前崎みち子代表は声を張り上げた。会は二月上旬、五日間で九千六百筆余の署名を集め、住民投票条例のきっかけをつくった。告示後は、ボランティアや寄付金を頼りに活動した。設問の分かりにくさを解消するため、大きな字で「左に○」と記したプラカードを掲げ、「人口減少と財政難が続く中、総事業費三十億円の庁舎を」と訴えた。会に賛同する市議三人も協力し、旧市内を中心に連日、街頭演説を繰り広げた。低投票率が懸念されていたが、56%に達し、四月の県議選とほぼ同水準。加藤芳夫市議は「市長や議会にとって大変重い数字。力に変え、われわれの主張を強く求めていきたい」と語った。
◆計画見直し、遅れ必至
 選択肢2、図<2>が過半数となり、市は大幅な設計の見直しを迫られる。二〇一七年度の完成予定が遅れるのは必至だ。どこまで規模を縮小するかは、今後の議論次第だが、明確なのは「付け替え道路」を設置しないこと。市道東新町桜淵線は、法的には既に選択肢1、図<1>の形に変更されているが、これを元通りに戻さなければならず、議会の議決も必要になる。「付け替え道路」を造らないことで、建築基準法の足かせが掛かるため、新庁舎は最大八千平方メートルまでしか、建てられない。引き続き使用することになる東庁舎を改修するのかも検討課題だ。一方で、市が財源として頼みとする合併特例債の起債期限は、二〇年度に迫っている。
(沢田佳孝、西田直晃、小原健太)
◆民意重んじ早急着手を
 <解説> 「身の丈にあった庁舎」の規模が問われた住民投票。新城の民意は、ここまで大規模な庁舎は必要ない、と市の現計画(五階建て九千平方メートル、総事業費四十九億円)を否定した。市長も、市議十八人中十五人も、示された民意とは逆の選択肢を支持していた。条例は「市長、議会は投票結果を尊重する」と定め、今回の結果に法的な拘束力はない。だが、投票率、得票率から考え、ここまで明確に民意が示された以上、市長、議会は大幅な計画の見直しに早急に着手すべきだ。この問題では、ここ数年、市を二分する議論が続いた。主要争点となった二〇一三年の市長選とは異なる結果になったとはいえ、二者択一で出された今回の民意を無視しては、さらなる混乱を招きかねない。人口減少が叫ばれている。新城にどう活気を生み、どう維持していくのか。大型公共事業に頼った施策からの転換を含め、英知の結集が必要だ。今こそ、「ノーサイド」の精神が必要ではないか。(沢田佳孝)

本記事では,新城市における新庁舎建設における現計画の見直しを問う住民投票の結果を紹介.
2015年年5月31日に執行された「新城市新庁舎建設における現計画の見直しを問う住民投票」.2015年5月13日付の毎日新聞では「既に路線変更が済んでいるので,その再変更を望むかどうかを問うた形になったのだが,分かりにくい」*1と報道された,二つの選択肢.「市道東新町桜淵線の路線の変更を伴わない現計画の見直し」が「9759」,「市道東新町桜淵線の路線の変更を伴う現計画の見直し」が「12899」*2となり,上記記事の整理にならえば「新庁舎の規模を縮小し,道路形状も変更しない」*3こととなり,本記事によると「市道」が「法的には既に」「変更されている」ため「これを元通りに戻さなければならず,議会の議決も必要」になる模様.財源としては「合併した自治体に対して特例的に地方債を発行することを認め」*4られてはいるものの,同地方債の発行は2020年までとされている.今後の「見直し」の過程は,要経過観察.

*1:毎日新聞(2015年5月13日付)「住民投票:設問の意味分かりにくい 新城市の新庁舎計画

*2:新庄市HP(市政まちづくり住民投票)「開票速報(新城市新庁舎建設における現計画の見直しを問う住民投票)

*3:前掲注1・毎日新聞(2015年5月13日付)

*4:砂原庸介「庁舎と政治 都市の中心をめぐる競合と協調」御厨貴,井上章一『建築と権力のダイナミズム』(岩波書店,2015年)138頁