大阪府橋下徹知事が、2次破たんが迫る大阪市の第3セクタービル「大阪ワールドトレードセンタービルディング」(WTC、住之江区)を買い取り、財政難で建て替えのメドが立たない府庁本館(中央区)を全面移転させる構想を検討していることがわかった。現庁舎の建て替え、耐震補強とともに、選択肢の一つとして、5日に平松邦夫市長に提案する。
 府庁本館は1926年に建設された現役最古の都道府県庁舎。震度6強で倒壊の恐れもあり、89年、総事業費約1100億円で新庁舎(43階建て)建設計画をまとめたが、財政難で凍結されている。耐震補強は約80億円ですむが、手狭なため、多くの部局が周辺のビルに入居しており、賃料などに年間約7億円のコストがかかると試算している。財政再建に取り組む橋下知事は、新庁舎建設は現時点では困難と判断。平松市長が再建を断念したWTCを買い取れば「府市の懸案が一挙に解決する」(府幹部)との考え。また、知事には、道州制導入後の関西州の州都を見据え、ベイエリアを拠点として確保したいとの思惑もあるようだ。市幹部も「売却額さえ折り合えば、願ってもない話」と関心を示している。 ただ、WTCを巡っては、平松市長が昨年12月の就任時に市役所本庁舎の移転を検討したが、市中心部から距離がある上、防災拠点としての機能性が疑問視され、断念した経緯がある。WTCは2004年に特定調停が成立。その後も経営は改善せず、09年度中の2次破たんが確実視されている。市はWTC社の借金約509億円について金融機関に損失補償を約束しており、ビルを簿価の161億円で売却できても、348億円の負担を迫られる。

同記事では,大阪府において,大阪市の第3セクタービルである「大阪ワールドトレードセンタービルディング」を購入し,大阪府庁舎を移転する構想があることを紹介.大阪府HPを見ても分かるように*1以前に本備忘録でも取り上げた長崎県庁にも負けず劣らず,現在では15の建物に分散し配置されていることが分かる.
第三セクターに対しては,朝日新聞での報道にもあるように,そのフロアーの7割が市役所関係部局が占めており「第二庁舎」との指摘もなされていた*2ともある.そのため,「通常は全額,自治体の資負担で行う庁舎建設を,一部,民間資金(中略)で建設したにすぎない」*3との解釈もなされることもある.同構想は,大阪市にとっては「外部型」の処理方法のうち「切り離し」(85頁)ともなりうる提案.今後を見据えれば,大阪府側の提案は大阪市にとっては興味深い.
ただ,広域自治体の庁舎はどのような機能が期待されるものなのだろうか,とも考えさせられる.単なる事務所なのか,はたまた東京都庁の移転時に期待したような「シティホール」*4としてなのか.いずれにせよ,個人的には,「郊外型県庁」の下位概念としての「水上型県(府)庁」の登場となれば,それはそれで自治体行政観察上,興味深い.

*1:大阪府HP(府庁への行き方)「庁舎周辺案内

*2:朝日新聞(2008年8月3日付)「橋下知事、WTC購入し大阪府庁移転を検討

*3:金井利之「第三セクター行政学」堀場勇夫・望月正光編著『第三セクター』(東洋経済新報社,2007年)83頁

第三セクター―再生への指針

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*4:鈴木俊一『官を生きる』(ぎょうせい,1999年)380〜381頁

官を生きる―鈴木俊一回顧録

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