全国に先駆けて川崎市が始めた市の施設内に設置されるお茶やジュースなど自販機設置場所の入札による貸し付けで、二〇〇九年度の収入が約一億五千万円の見込みになったことが分かった。一平方メートルにも満たないわずかなスペースから大きな収入が得られるアイデアに全国の自治体から問い合わせが相次いでいる。
 〇七年三月の改正地方自治法の施行で可能になった事業。法改正は全国で進められた合併により生まれる役所の庁舎など余裕財産をコンビニエンスストアなど民間に貸し付けられるようにするのが狙いだった。これを受け市は各種市有施設にある自販機を設置できる程度のスペースに着眼したという。市財政局管財課が〇七年度に川崎区の本庁舎や区役所、市民館、図書館など、指定管理者や企業会計で運営される施設を除き一台一台洗い出し数台ずつグループ化し、〇八年二月、七月、十一月の三回に分けて入札を実施。百九十四台分のスペースを貸し出し、〇八年度だけで約一億千三百万円、〇九年度では約一億五千四百万円の収入が得られる見通しになった。市は当初二百台分で二千万円程度の収入予想をしていたが八倍近い。しかも市はスペースを貸すだけで設置経費や光熱費はすべて落札業者が支払う。従来、市職員の福利厚生として商品の値引きをしてもらう形で無料で使用許可をしたり、目的外使用という形で一カ月一台二千三百円の使用料を得ていただけだった。別の業者からの設置要求や各局が負っていた煩雑な事務手続きもなくなった。
 今春から市のホームページなどで知った自治体から二十件ほど問い合わせが相次いだ。「今後も駐輪場の自販機や、企業会計でも競輪場などは入札を財政局で行うなどして拡大していきたい」と管財課では話している。

同記事では,川崎市庁舎等内に設置された自動販売機により,当初収入予定額の2,000万円から,8倍近い1億5,000万円の収入見込みであることを紹介.
同収入増が可能となる制度的背景には,2008年6月24日付の本備忘録でも取り上げた,2006年の地方自治法改正(第238条の4第4項)に伴う行政財産の貸付範囲拡大により,庁舎等における床面積又は敷地に余裕がある場合,民間事業者等へそれらの貸付けが可能となったことがある.同備忘録でも見たように,当初見込みの収入額よりも増加となる事例が多いのだろうか.
同市における自動販売機設置への入札状況に関しては,同市HPを参照*1.同HPからは,最低貸付料と落札金額では3倍近い金額の開きがあることが分かる.これは,同市が2007年に策定された『市有財産を有効活用するための基本方針』段階ではより顕著であり,同方針を拝見すると,「現在,市の施設に設置されている飲料等自動販売機は,総数でおよそ5000台にも及んでいます」とあり,これを段階的に貸付契約へと移行する予定とある.そして,同方針の策定段階の見込みでは,一台当たりの年間貸付料が10万円と見込んでおり,同市庁舎等に設置されていた自動販売機を全5,000台とすると,5,000万円の見込みとある*2
同市庁舎等内では,貸付契約へと移行していない自動販売機の設置場所は,当初の数値からすれば4,800台分程度が残置されていることにはなるのだろうか,すると,「離れ」に手をつける選択(離れ業)をしなくても,庁舎等内という,まさにその「母屋」*3においても「埋蔵金」は意外と豊富に眠っている,ということか.なるほど.