県産品の独自認定制度「山形セレクション」会議の農林水産分野専門委員会が9日、山形市の県自治会館で開かれた。新年度も事業を継続することを了承。サクランボの中で、加温栽培分の品質基準について、露地物と区別し、糖度基準を新たに18度以上と設定した。また、新知事となる吉村美栄子氏の制度見直しに対する要望を踏まえ意見交換。認定申請手続きの簡素化や品目・品種の拡大などは前向きにとらえる意見が多かったが、認定基準や要件の緩和については賛否両論あった。
 研究者や有識者、流通販売、消費者団体や生産者の代表などで組織する専門委員会。制度の審査機関で、事業に対する助言や指導を担当している。新年度の取り扱い方針では、初年度に認定を受けた個人・団体の認定有効期限が3月末で満了するため、簡素化した認定更新手続きを設定することにした。また、「母の日」に合わせ贈答需要が増える加温ハウス栽培のサクランボ(5月15日までの出荷分が対象)について、露地物と糖度基準を区別し、現行基準の20度以上から18度以上とした。加温サクランボは露地物に比べ、糖度が低く、基準のクリアが困難。しかし、早出しサクランボとして、市場へのアピール度が高い。流通関係者などからの要望も多く、新たな基準設定となった。
 一方、今後の制度の在り方について▽より多くの生産者の参加▽メリットの享受▽認定申請手続きの簡素化、など吉村氏からの要望を踏まえ、今後の制度の在り方について意見交換した。参加しやすい仕組みづくりでは、リレー形式の出荷体制を築くための品目・品種の拡大や、煩雑とされる認定申請手続きを改善するべきとする意見があり、県側も次回の委員会で、改善案を提出する考えを示した。認定基準の緩和については「ブランド力は市場でも確実に上がっている。売価も高く、生産者にも反映されている」「基準を下げることはブランドのレベル低下につながる恐れがある」と懸念する声があったほか、「ブランドをレベル別に分ければ、流通や小売り段階でも扱いやすくなるのではないか」などとする意見も出された。

同記事では,山形県において実施している県産品認定制度に関して,次期知事の公約を受けて,その基準のあり方をめぐり審議されたことを紹介.
同制度の見直しについては,次期知事の公約における現行施策見直し対象の一つとのこと.同公約の記述振りを把握しようと,次期知事の公約を検索してみるものの確認することができず,残念.2009年2月1日付の毎日新聞の報道内による次期知事のコメントによれば,「認証農家は1%程度.農家全体の底上げにつながっていない.廃止も視野に入れている」*1との発言があった一方で「廃止ではない方向だ」*2ともあり,既に「PRプレート」等が普及しつつある中で*3,次期知事の就任以前から既に議会からも,次期知事の移行を確認すべく,執行部に対して質問が提示されている*4.確かに,「政権移行期(transition)」であり,県民の関心度がある課題の一つかとも考えられるものの,東京都の青島知事就任前に「就任前の新知事にさまざまな事項をレクチャーするのは異例の措置」とされるなかで,同期都市博中止を巡り「都庁博バッジをつけた都庁のお役人がやってきた」*5とも記録されるような状況が,どの程度同県で行われているのだろうか.上記の読売新聞の報道では,2009年2月5日夜に「県幹部との事前協議で訪れた県庁」ともあり,次期知事が県庁に出向く形での協議は図られたともある.例え,同種の協議が行われていたとしても,同県の現知事が在任期間中の執行部に対して行われる質疑は,その回答次第では責任者不在のなかでの「空手形」ともなりえなくもなく,そもそも,そのような手形が新知事の下でも有効性を有するものなのだろうかと純粋に思う.首長の「政権移行期(transition)」における議会の風景とは,このようなものなのだろうか.興味深い.
同認定制度については,同県HPを参照*6.「山形セレクション認定制度実施要綱」*7によれば,同要綱第5条に基づき,農林水産分野,加工食品分野,地場産業型工業分野,観光・関連サービス分野のそれぞれについて,「高い品質(一切妥協のない優れた品質の産品・サービスの提供」,「安全性・安心感への配慮(安全性に十分配慮した消費者から信頼される産品・サービスの提供)」,「山形の自然,歴史・文化の継承(山形特有の地域資源を活かした産品・サービスの提供)」,「山形の技術・技法の伝承(伝統的な技術・技法に裏打ちされた産品・サービスの提供),「環境への配慮(山形の自然・大地に対する感謝と敬意を払った産品・サービスの提供)」の5つのコンセプトに合致する「認定基準」を定めた「山形基準」*8が定められ,同要綱第3条に基づき設置される「山形セレクション会議」において審査され,知事が認定する(第9条)こととなる.
同記事及び上記毎日新聞の報道から想定すると同認定制度の見直しの議論に関しては,恰も「それなしには禁止されているところの,ある特定の事業を経営したり,専門職につくための,または一定の行為を行うための公的承認」(76頁)としての「免許的」な制度運用されてきたとの認識に立ち,更に,その「免許的」な制度運用に際しては,森田朗先生の分類を倣えば,「一定の能力を有している否かを判定し,有している者には全て資格を与える」という「資格試験型」ではなく,「多数の申請者の中の特定の者だけ資格を付与する」という「採用試験型」*9として運用されてきたことへの疑義から発しているようにも考えられる.そのため,同知事の指摘を忖度しつつ,同県執行部が期待しているという「制度の継続」という観点からすれば,「採用試験型」から「資格試験型」への運用転換を図ることで,確かに同記事にもあるように「認定基準の緩和」に伴うブランド価値の低下の蓋然性も引少なからずあるかもしれないが,両者の意向が合致するようにも考えられるが,どうだろうか.なお,二つの類型のうち,前者に関しては,現在であれば「認証制度」に近い類型とも考えられなくもなく,2009年2月9日付の本備忘録でも取り上げた宮崎県における認証制度の叢生とはならないまでも,認証制度への「移行(transition)」の可能性もあるのだろうか.要経過観察.

*1:毎日新聞(2009年2月1日付)「09知事選:変針の波紋/6止 政策見直し/山形◇「どの程度」不安な職員−−野党自民「検証し正す」」

*2:読売新聞(2009年2月6日付)「吉村氏「廃止ではない」」

*3:河北新報(2009年2月5日付)「落選知事のPRプレートどうする 県産品認証制度

*4:山形新聞(2009年2月3日付)「吉村氏の政策に意見や質問 県議会常任委で相次ぐ

*5:東京新聞社会部都政取材班『無党派知事の光と影』(東京新聞出版局,1996年)60頁

無党派知事の光と影―激動の青島都政追跡

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*6:山形県HP(商工労働観光部経済交流課(ブランド戦略推進室) )「山形セレクション YAMAGATA SELECTION

*7:山形県HP(商工労働観光部経済交流課(ブランド戦略推進室)山形セレクション認定制度)「山形セレクション認定制度実施要綱

*8:山形県HP(商工労働観光部経済交流課(ブランド戦略推進室)山形セレクション認定制度)「別表山形基準

*9:森田朗『許認可行政と官僚制』(岩波書店,1988年)95頁

許認可行政と官僚制

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