徳島市などが進める新町西地区再開発事業の都市計画案に飯泉嘉門知事が同意できないとしている問題で、県が地方自治法で作成と公表が義務付けられている「許認可等の判断基準」を作っていなかったことが、十二日までに分かった。総務省は「自治法に違反している」と指摘しており、都市計画法の解釈に続き、同意基準のルール化でも県の不手際が浮かび上がった。
 地方自治法第二五〇条の二の第一項によると、市町村から法令に基づく申請や協議の申し出があった場合、県は「許可、認可、承認、同意その他これらに類する行為をするかどうかを判断するために必要とされる基準を定め、公表しなければならない」とされている。この条項は、二〇〇〇年四月の地方分権一括法施行による自治法改正で盛り込まれた。市町村に対する許認可などへの県の関与について、公正の確保と透明性の向上を図る観点から、手続きルールの創設を義務付けている。
 しかし、問題となっている都市計画法第一九条三項に基づく知事同意に関し、県が同意基準を作っていなかったことが判明。昨年八月八日に原秀樹市長が飯泉知事に同意の判断基準を示すよう公文書で求めた際には、知事は即日、「同意協議の判断基準は本県では定めていない」と公文書で回答していたことも明らかになり、知事をはじめとした県側は、違法状態であることを認識していながら市との協議に臨んでいたとみられる。都市計画法の知事同意に関する判断基準を作っていないことについて、県都市計画課は「他県の状況も調べながら基準を作るための検討をしているが、(再開発の同意協議をめぐって県市が対立している)現在のタイミングで作りにくいのも事実。どこまで具体的な基準が作れるかといった課題もあり、研究を続けている」と釈明している。
 国土交通省によると、都市計画法の知事同意に関して判断基準を作っているのは、四国四県ではゼロ。しかし、徳島市幹部は「明文化された判断基準がないと、同意などの権限行使に知事の裁量が過度に入りかねないし、協議を申し出る市の予見可能性(起こることを事前に予測できるかどうか)が確保できない点からも問題だ」と指摘している。総務省行政課は「行政の現場には、『判断基準を定めなくても問題が起きなかった』という実態があるのだろうが、違法は違法。(今回のような)弊害が出てきたときに市町村から不作為を問われることは確実で、基準は作っておかねばならない」と話している。

同記事では,徳島県において,都市計画法第19条第3項に基づく,都市計画区域又は準都市計画区域について都市計画決定を行う場合,都道府県知事への同意を要する協議のための同意基準が設けられていないことを紹介.四国各県も同様とのこと.
同記事にいう,徳島市が進める地区再開発事業に関しては,2009年2月16日及び27日付の同紙を参照*1.同都市計画案を巡り,2009年2月28日付の同紙にも紹介されている同県知事のコメントとして,「市財政をしっかりみるのも地方自治法上の県の責務」*2とあるように,市側の「財政状況」を「慮る」ことで,不同意との判断が提示.また,国土交通省が設けている『第5版 都市計画運用指針』では,同意に当たっては,「都市計画の決定又は変更に当たっては,当該手続等を通じて,地域の主体性と広域的な整合性の両者を確保することが必要であり,このため,都道府県又は市町村が都市計画制度上のそれぞれの役割を適切に認識して対応することが重要である.即ち,都市計画の決定又は変更に当たっては,市町村や住民等の主体的判断ができる限り尊重される必要があるとともに,併せて,都道府県が一の市町村の区域を超える広域的な見地から適切な判断を行うことが必要である」*3とあるもの,やや広範囲な記述であることもその要因なのだろうか,同県から同省に確認を行ったところ,都市計画法における同条の解釈としては,同意・不同意の判断には「財政状況」は想定していない旨が提示されたとも報道されたため,その文書(及び口伝内容)の解釈を巡り,徳島市と同県側で見解不一致*4の状況とある模様.
同記事にもあるように,地方自治法第250条の2第1項に基づき,市町村から「法令に基づく申請又は協議の申出があつた場合」には,「許可,認可,承認,同意その他これらに類する行為をするかどうかを定めに従つて判断するために必要とされる基準を定め」ることとされている(同記事にいう,他都道府県の基準例については,各県HPを参照*5).更には,策定後は,「これを公表しなければならない」とあり,この「公表」を通じて,「国と地方公共団体又は都道府県と市町村という行政主体相互の関係を規律する」*6ことが想定されている.いわば,「公表」を通じた視線による「行政主体相互の関係」への規律付けが,同条項の目的とも考えられる.更には,公表を前提とした同基準の策定を強いることで,その「規律」の特性の顕在化も,同条項の隠れた意図か.このことは,そもそも各都道府県の判断で同基準を策定しなければ,「行政主体相互の関係」の「規律」とは,どのような性格をもつものであるかが潜在的な状況のままとなる.悩ましい.
もちろん,同規定が要請する「公表」が予期する目的が,各自治体間で「内面化」*7されていれば,基準の作成とその公表という「コスト」は不要ではあることは確か.しかし,その内面化の状況次第では,その規律化の意義や規律化に要するコストを解消・縮減するためにも,地方分権改革推進委員会による『第一次勧告』*8にて答申されたように,都市計画決定については,「市の区域については「市」決定(都道府県同意不要)」とすることで,同種のような問題も生じなくもなる(か)(もちろん,同勧告が認識する町村における決定の扱い方については検討が必要な部分もあるのかもしれないが).
なお蛇足:同勧告(及び『第二次勧告』も然りですが),答申後の具体化に向けた「協議」は,現在,どのような状態にあるのだろうか.その過程は,外部観察者としては,余りはっきりとは見えない.

*1:徳島新聞(2009年2月16付)「県市協調、揺らぐ 鉄道高架事業、新町西再開発での対立影響」,徳島新聞(2009年2月27日付)「新町西再開発、国「財政想定せず」 昨夏、県へ見解伝達

*2:徳島新聞(2009年2月28日付)「県、国の解釈隠す? 新町西再開発の年末協議、要求にも公開せず

*3:国土交通省HP(都市計画都市計画運用指針)『第5版 都市計画運用指針

*4:徳島新聞(2009年3月12日付)「徳島市、知事同意を再び要求 新町西再開発、県「できない」と即答

*5:新潟県HP(建設・まちづくり新潟県における市町村決定の都市計画に係る知事の同意の判断基準)「新潟県における市町村決定の都市計画に係る知事の同意の判断基準」(平成20年4月1日施行),大阪府HP(都市整備部)「都市計画の制度」,広島県HP(地域づくり都市政策等都市計画・都市交通都市企画室のさまざまな業務都市計画の制度・手続き)「市町の都市計画決定(変更)に係る広島県知事の同意基準

*6:松本英昭『新版逐条地方自治法第4次改訂版』(学陽書房,2007年)1043頁.なお,同書,3月中に第5次改訂版が出版される模様(学陽書房HP(これから出る本)「新版逐条地方自治法 第5次改訂版」)楽しみ)

新版 逐条地方自治法

新版 逐条地方自治法

*7:ミシェル・フーコーフーコー・コレクション4 権力・監禁』(ちくま書房,2006年)387頁

*8:地方分権改革推進委員会第一次勧告 生活者の視点に立つ「地方政府」の確立』(2008年5月28日)24頁