◇審議会「緑区」案、住民「意向無視だ」 中央地域「中央区」、南部は「南区」なのに
 「緑区」はイヤ、「北区」にして−−。相模原市政令指定都市政令市)移行で設置される3行政区のうち、橋本地区や旧津久井地域など市北部地域の区名を巡り、地元住民から「北区」を求める陳情が市議会に相次いでいることが分かった。市の審議会は「緑区」案を答申しており、市側は対応に苦慮。10年4月の移行を目指して区設置条例案を市議会に提出するまでに、庁内で検討して区名を決める方向だ。【高橋和夫
 陳情はいずれも「緑区」を不満として、「北区」が望ましいとする内容。2〜3月に旧城山町や橋本地区住民から2件あった。4月に入り橋本地区の住民組織4団体がそれぞれ出したが、4団体が一本化して出し直すため、いったん取り下げられた。陳情で住民が「緑区」に反対する主な理由は、住民の意向調査を“無視”している点だ。区名案は昨秋に公募、区名候補のうちどれが望ましいかという市民の意向調査が昨年12月〜今年1月実施された。これらを踏まえ市行政区画等審議会が区名案を審議し▽北部地域を「緑区」▽中央地域を「中央区」▽南部地域を「南区」−−と決め、2月に加山俊夫市長に答申した。ところが市民意向調査では北部地域について「北区」が9300件でトップだった。「けやき区」7500件、「緑区」5900件、「みどり区」5700件などが続いた。審議会は(1)「緑区」と「みどり区」は計約1万1600件で「北区」を上回る(2)森林地域の多い地域のイメージに合う−−との理由で「緑区」とした。
 しかし、JR横浜線相模原駅やJR相模線上溝駅などがある中央地域の市民意向調査結果は、「中央区」1万300件、「さくら区」8900件、「桜区」4100件。「さくら区」と「桜区」を合わせると約1万3000件となる。このため陳情で住民側は(1)に対し「数合わせで区名を採用することも整合性がない」と批判する。また陳情では、そもそも他2区が方位から取っているのに、北部地域だけ「緑区」とするのは整合性がないとも主張。さらに相模原北警察署など北部地域にある主な公共施設は名前に「北」が付いており、住民感覚から「北区」が望ましいとしている。

同記事では,相模原市における,政令指定都市移行に際しての行政区の名称に関する動向を紹介.政令指定都市制度の観察者の一人として,本備忘録でも同市の動向もまた,経過観察をしてきたものと思ってはいたものの,昨年度は,2009年4月1日付の本備忘録でも振り返ったように,岡山市の移行動向のみを観察していたことを,同記事を拝読し自覚.完全に観察が出遅れ気味と反省.
同市の政令指定都市への移行関連報道としては,本備忘録では,2008年6月3日付以来の.同備忘録では区割案での審議開始段階であり,同市のスケジュールでは*1平成22年度4月の移行が目途とされており,既に昨年度末の3月24日には,神奈川県議会で「相模原市政令指定都市の指定に関する意見書」が議決済み*2.一方で,同市の区名に関しては,他の先行移行都市でも経験されたように,名称への「反対運動」*3」もある模様.
同記事にもある「区名意向調査」の結果については,同市HPを参照.確かに,「緑区」と称されるであろう「A区」に関しては,「北区」案が9,247件(27.5%)と,「緑区」案が5,890件(17.5%)に比べても3,400件程多い.ただ,同記事にもあるように,「みどり区」案にも5,734件(17.0%)があり,合算すれば11,624件と,MIDORI-KUという音読みでは,同区の名称は最多となる*4.ひらがなと漢字を双方に選択肢に置き,合算も含んだ調査設計とするのであれば,「A区」の名称候補であった「けやき区」についても「欅区」,「中央区」と称されるであろう「B区」への名称候補であった「中区」には「なか区」,「ひばり区」には「雲雀区」,「南区」と称されるであろう「C区」への名称候補であった「あじさい区」には「紫陽花区」,「ひばり区」には「雲雀区」,また「光区」にも「ひかり区」と,それぞれ対となる選択肢を示しておくことが適当であったとも思わなくもない.調査設計論においては,その基本としては「質問はなるべく簡潔で単純なものを目指すべき」であり,「読めない字や意味不明な文字によって生じるバイアスを「あいまいさ(ambiguity)」と呼んでいる」*5とされている.となると,漢字検定愛好者ならずとも,「欅区」や「紫陽花区」「雲雀区」は日常的な名称としては想定しがたいものの(ただ,「ひばり区」案が「B区」「C区」の何れでも最多の結果となった場合には,どのような判断をされたのだろうかと,考えてみると興味深い),選択肢設計の考え方からすれば,「相互に排他的(mutually exclusive)」と「相互に補完的(mutually exhaustive)」でなければならいという「技術的な問題」(174頁)との抵触もあるとも言えなくもない.同種の調査は,結果の扱いのみならず,設計段階こそが実は難しい,ということか.悩ましい.