政府は4日、熊本市が求めていた来年4月1日からの政令指定都市への移行を認め、今月18日にも関係政令閣議決定する方針を固めた。昨年4月の相模原市に続き全国20番目の政令市が誕生する。九州では1963年の北九州市、72年の福岡市に次いで3番目。
 移行の人口要件は、熊本市までは70万人以上に緩和されているが、今後は従来の100万人以上に戻る。現在のところ、合併で100万人以上の都市をつくる動きはなく、政令市は全国20市体制が当面続く見通しだ。人口要件は2001年、市町村合併を促すために緩和。05年の静岡市から昨年の相模原市まで人口100万人未満の6市が政令市に移行した。
 熊本市は昨年3月に城南、植木2町と合併し、人口約73万人と要件を満たした。同市は今年3月、九州新幹線鹿児島ルートが全線開業し、本州方面からのアクセスも向上している。span>

本記事では,政府における熊本市政令指定都市への移行に関する閣議決定の方針を紹介.2011年10月18日に閣議決定がなされる予定の模様.
本記事では,「政令市は全国20市体制が当面続く見通し」とも紹介.一方,2011年8月30日付の前・総務相による記者会見でも同市の政令指定都市への移行に関して質問がなれ,その応答のなかでは,次のように述べられている.曰く,「政令指定都市の指定というのは,これは法律と政令に根拠があって,その要件にかなっていれば指定するということですから,どこかで打ち止めということでは,理論的にはない」*1.なるほど.
「平成13年8月30日」に決定された「市町村合併プラン」において「平成17年3月までに大規模な合併をした場合に限って,指定都市になることができる人口要件の基準を緩和する方針が打ち出され」*2ことにより,制度運営上の人口要件の緩和の措置.一方,地方自治法252条の19第1項により「政令で指定する人口50万以上の市」と規定.そのため,法定上は50万以上という人口要件ではありつつも,運用上は「明確な内規を作成しているわけではない」*3ものの,「5大市(大阪市名古屋市京都市横浜市,神戸市)並みの大都市であることを指定の目安」*4として,政令都市制度の移行の運用が図られてきた.
そのため,本記事でも「70万人以上に緩和」と制度上の規準からは厳格な運用ではありながらも,事実上の基準に比べると緩やかな要件であるため,「緩和」との認識が示されることになる.例えば,最近拝読させて頂いた,杉並区に設置されている基本構想審議会の第5回の配布資料(参考資料1*5)では,「平成22年度国勢調査人口速報集計」に基づき,市区レベルでの人口規模順で130の市区を並べている.その結果,具体的には,市のみでは,川口市(人口503,111),東大阪市(人口509,632),宇都宮市(人口511,296),松山市(人口517,088),八王子市(人口579,799),鹿児島市(人口605,940),船橋市(人口609,081)の7市は,法定上の人口要件を満たすものの,制度運営上の人口要件に満たさないことから政令指定都市への移行には至らない.
上記の前・総務相による記者会見のなかでも,政令指定都市制度は「できたときの状況と今日とで違ってきているので,そこで再点検をする必要」*6との見解も示されたこともあり,同制度の要件もまた,再点検することも課題となると興味深い.例えば,一つの考え方は,要件の明確化(実態化)である.現行の政令指定都市の現状を踏まえた人口に基づき,「人口50万」を改正することは,同制度に対する明解さを確保する上で適当と考えれる.ただ,仮に人口以外の要件も指定の判断要件として運用されている場合,それらもまた法定上明らかにしておくことで,過度な関与とも判断されることも回避することができる.ただ,場合によっては,移行要件の厳格化に至ることも想定されそう.もうひとつは,人口要件の撤廃化である.確かに,人口が実数上多いことは,大都市の行政需要を支える側も自ずと多くなり,大都市としての行政運営も可能となる.一方で,その人口の構成からは,まさに「できたときの状況と今日とで違ってきている」ため,いわば,支えられる側もまた増加し,政令指定都市となることで過度な行政負担を担う場合もある(勿論,支える側のみが増加する大都市もないことは無いようですが).そのため,一重に,法定上は人口のみを同制度の要件とすることを維持するよりも,他の要件へと規定し直す案も考えられなくもなさそうか.

*1:総務省HP(広報・報道大臣会見・発言等)「片山総務大臣辞表取りまとめ閣議後記者会見の概要(平成23年8月30日)

*2:安宅敬祐『指定都市の税財政制度の改革』(大学教育出版,2009年)27頁

指定都市の税財政制度の改革

指定都市の税財政制度の改革

*3:宇賀克也『地方自治法概説第4版』(有斐閣,2011年)35頁

地方自治法概説 第4版

地方自治法概説 第4版

*4:前傾注3・宇賀克也2011年:35〜34頁

*5:杉並区HP(区政資料新基本構想基本構想審議会第5回基本構想審議会)「参考資料1 国勢調査人口(平成22年度)

*6:前傾注1・総務省(片山総務大臣辞表取りまとめ閣議後記者会見の概要(平成23年8月30日))