同規模の政令市が連携し、新たな大都市制度を模索する動きが活発化している。中山間地域を抱える後発指定組の静岡、浜松市などが5月、共同研究の組織づくりで合意。2月には横浜などの三大市が都市州創設の提言を発表した。政令市が18に急増し、人口規模や都市の構造に大きな隔たりが出ていることが背景にある。仙台市を含む、いわゆる「札仙広福」など中堅の政令市は、議論に取り残された形だ。
 静岡市の小嶋善吉市長と浜松市鈴木康友市長は5月8日、浜松市役所で会談。同じく政令市移行間もない新潟、岡山両市を巻き込み、大都市制度などの政策を共同研究する方針を確認した。
 4市は、大型合併を経た新興政令市というだけでなく、都市と周縁の格差、農山村の疲弊など「国土縮図型政令市」としての側面を持つ。農地転用など土地利用の権限拡大や過疎地の振興策など課題も共通しており、研究や提言などを重ねるという。政令市では三大都市とされる横浜、大阪、名古屋の連携が先行している。2008年に大都市制度構想研究会を設置。ことし2月、道州制を見据え、独立した「都市州」創設を提言した。地方税すべてを都市州に委ね、税収を全国に再配分する仕組みを構築。公選の区長を置き、議会がある東京の特別区制度を見据えた区役所強化など、「ビッグ3」の地位向上を訴えている。
 全国の政令市は地図の通り。総務省が2001年、「80万人以上」が目安だった指定要件を「市町村合併した場合に限り70万人」へと緩和したため、新政令市の誕生が相次いだ。神奈川県相模原市も10年の移行を目指している。
 18都市に拡充された現在、各市の規模や課題などは幅広くなった。人口367万の横浜から70万の岡山まで、同じ政令市として論じるのが難しくなっている。大都市制度の1つとされる政令市制度は1956年、地方自治法の特例としてスタート。半世紀以上経過したが、税財源の措置や事務権限の拡大などは不十分なままで、それぞれの市が特性を発揮しにくい背景にある。政令市でつくる指定都市市長会事務局は「構成する市の成り立ちや圏域での役割などは複雑になっている」と認め、一方で「新たな大都市制度の検討を国に求めるため、協調する姿勢に変わりはない」と話す。歴史がある大都市、新興の政令市に挟まれ、仙台市など中堅に位置する地方中枢都市の議論は置いてきぼりの感がある。仙台市は「政令市制度は時代とずれ始めており、見直す必要がある」としながらも、「道州制の州都像など見通しははっきりせず、都市間での具体的な研究はしていない」と言う。

同記事では,昨今の政令指定都市制度に関する自主的論議と,それらへの,いわゆる「札仙広福」*1とも整理されている,各都市のコミットメント状況について紹介.
同記事内で紹介されている,静岡市浜松市による共同研究に向けた両市長による会談に関しては,静岡市HPを参照*2.また,浜松市では,同会談に先んじて,「平成21年度の都市経営の基本的考え方」のなかでも「国土縮図型政令指定都市」に関して言及*3.更に,岡山市新潟市を加えた共同研究に関しては,2009年5月8日付の毎日新聞*4及び*5を参照.4都市の間では,研究会等を設置するのではなく,「相談しながら研究」を進める予定とのこと.2009年5月22日付の本備忘録において区分を試みた,これら「00(ゼロゼロ)世代」の政令指定都市から「札仙広福」に対しては, 2009年5月9日付の中日新聞による報道では*6,「中山間地を持つ側としても「仙台市など」(鈴木市長)に同胞が拡大することを期待」されている,ともある.
2009年2月23日付の本備忘録において取りあげた,いわゆる「ビック3」の問題認識とともに,同記事にも紹介された「00(ゼロゼロ)世代」の政令指定都市においては,同記事と同様に2008年2月5日付の本備忘録でも取りあげたように,区分次第ではその課題認識への共通性が高いことが確か.同課題認識の現況からすれば,「政令市都市制度」としての「希釈化」*7は見られつつあるとはいえそうではあるものの,一方で,その制度自体は変容しつつあり,むしろ区分毎ではより一層の「濃縮化」が進みつつあるとも考えられそう.
なお,蛇足.2009年5月22日付の本備忘録において取りあげた同市の行政区制度に関する報道に引き続く,同紙による政令指定都市制度関連の報道.政令指定都市制度の観察者の一人としては,大いに参考となる記事.ただ,これらの記事が自治行政業界関係者以外の方々にも,共有された問題関心(言説)となるかは,興味深いところ.