受け入れ61件、計431人 全分野で高い満足度
 別府市は、昨年度に受け入れた地方自治体議員の行政視察についてまとめた。受け入れは61件・計431人。市内宿泊が49件と多いのが特徴で、経済効果は全体で約750万円と推計している。
 地域別では▽東海 14件▽関東 11件▽北海道・東北 10件▽九州・沖縄 10件―など。調査事項別では「鉄輪温泉地区まちづくり交付金事業」が12件、地域通貨「泉都」が9件、ONSENツーリズム関連が8件。大分国体の開催に伴い9月から10月上旬まで受け入れなかったため、例年の約70件・計500人より減少したという。市議会事務局によると、ピーク時の1980年代は年間200件近くの行政視察が訪れた。その後、本四架橋や長崎オランダ村の建設などで視察対象が分散し、減少した。「受け入れは議会事務局ができる地域支援策。視察し、宿泊してもらえるよう働き掛けていきたい」としている。別府市へ行政視察に訪れた議員を対象とした満足度調査では、全分野で高い評価を受け、総合満足度は5点満点で4・7点だった。
 調査は2回目。今回は個人視察以外の55団体のうち30団体から回答を得た。8項目について調べ、事務局の対応は平均4・8点。食事は4・3点で、「とり天などの郷土料理や新鮮な海産物に満足した」などの声。宿泊先の評価は4・2点だった。「まち歩きの観光ボランティアがとても丁寧で、情緒あふれる散策に大変満足した」「活性化に対する行政、民間、地元の人たちの熱意が伝わった」などの声もあった。別府市議会事務局は「結果を他団体と共有し、より良いサービスに向け市全体で取り組んでいきたい」としている。

同記事では,別府市において,2008年度に同市へ行政視察を訪れた自治体議会議員への満足度調査を行った結果,総合満足度が5点満点中,4.7点であったことを紹介.同調査結果については,同市会HPを参照*1.非常に興味深い取組.
同調査は,「視察後の満足度調査を通じて,議会事務局員の資質向上及び受け入れ態勢の充実を図るとともに,普段の業務では把握することが難しい宿泊や食事等の実際のサービス状況等について確認」することで,「今後の別府観光振興に寄与することを目的」(1頁)として実施.調査項目は,「事務局の対応」「担当課の説明」「現地案内の対応」「視察の行程、時間配分」「食事」「宿泊先」「視察の成果」「総合満足度」(同頁)と広範なものであり,視察を受け入れる議会事務局のみならず,宿泊・食事等という宿泊等を含めた,広義での受け入れ体制の現況を把握するもの.なるほど,「日本一の源泉数・湧出量を誇る」「国際観光温泉文化都市」*2の観点からの調査ともいえそう.個別の調査結果からは,その評価点数は,「食事」(4.2点)「宿泊先」(4.3点)の項目は,他の項目への回答結果と比する(上記調査10頁),やや低値か.同調査結果は,視察に熟知された目利による回答等の「他の独立変数」*3が存在しているのか,その理解が難しい結果.
同調査の取組,非常に興味深く,行政視察の受け入れる機会を持つ自治体においても実施されると行政視察の現況を観察するうえで非常に有益な資料となりそう.下名個人的には,一重に訪問時の「満足度」に止まらず,その視察内容や結果が如何に受容され,更には,各自治体で反映されているかなどの項目が追加されると,行政視察を通じた,「政策波及(policy diffusion)」*4の様相を観察することができて良いだが.

*1:別府市HP(別府市議会行政視察のご案内)『行政視察満足度調査』(平成21年3月)

*2:別府市HP(別府市の概要)「平成20年度(2008)別府市の概要」7〜8頁

*3:谷岡一郎『データはウソをつく』(筑摩書店,2007年)92頁

*4:伊藤修一郎『自治体政策過程の動態』(慶応義塾大学出版会,2002年)37頁

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及

自治体政策過程の動態―政策イノベーションと波及