6月定例岡山市議会個人質問で19日、岡山市の鳥について、中原淑子氏(公明)と田中慎弥氏(ゆうあい)が持論を展開し、当局は〝板挟み〟となった。
同市の鳥について、中原氏は、03年の山田勇氏(公明)の質問以来、タンチョウの提案を06年に三木亮治氏(新風)、自身も3回行った経緯を説明した。タンチョウが、日中友好のシンボルであることや友好都市・釧路市との縁、岡山後楽園の風物詩、全国にアピールできることなどをアピール。市政令指定都市推進協議会(会長・岡粼彬岡山商工会議所会頭)が10日、同市の鳥をタンチョウとするよう求める要望書を高谷茂男市長に提出したことに触れ「どのような対応、決断をするのか」と迫った。
 一方、田中氏は「自然に生息しているものではない」「市のポリシーがない」などと、タンチョウへの反対論を展開。同協議会の選考経過への疑問を呈しながら「改めて市が専門家と選定基準を考え、情報提供し、市の鳥について市民と議論すべき」と訴えた。また、県内のタンチョウは、人工飼育である点を指摘。「税金で県が2700万円という大きなお金を投入している鳥。市の鳥だとなれば、県だって、人件費をくれという話になる」と付け加えた。 板挟みの中、進龍太郎企画局長は、市議会、市総合政策審議会などから意見を聴く方針を示し「総合的に判断し、市民に喜んでいただける形で決めていきたい。時期を限って決めるのではない」と答えるのが精いっぱいだった。

同記事では,岡山市における「市の鳥」を巡る議会質疑が行われていることを紹介.本備忘録でも,2008年1月17日付同年3月19日付同年6月3日付同年6月8日付,同年6月14日付同年8月19日付同年8月31日付同年9月8日付同年10月16日付同年10月16日付同年12月8日付2009年3月6日付,そして,同年4月1日付と,断続的ではあるものの記録してきた岡山市政令指定都市移行関連記事.政令指定都市への移行に伴う審議事案は(同移行との因果関係が不可避であるかは別としても),依然として残置されている模様.
同市の「市の鳥」については,2009年6月10日付の同紙の報道にあるように,「岡山市政令指定都市推進協議会」が6月「10日,同市の鳥をタンチョウとする要望書を高谷茂男市長に提出した」ところ,同市市長からは「「皆さんからいろいろな意見を聴いていただき今後、前向きに検討していきたい」と述べた」*1とも紹介.2009年6月16日付の山陽新聞の報道では,「岡山の自然を守る会」と「日本野鳥の会支部」からは,同要望書の市長への提出を受けて,「「選定基準が不明確」「タンチョウはもともと市内に生息していない.市に生息する野鳥に限定し,再検討が必要」など」を理由に「制定見送りを求める陳情書を宮武博市議会議長あてに提出」*2.同記事は,同経緯を踏まえての議会審議の模様.
他の政令指定都市において「市の鳥」を明らかにされている都市を,把握できた限りではあるものの整理してみると,仙台市カッコウ*3千葉市コアジサシ*4静岡市カワセミ*5浜松市のウグイス*6堺市のモズ*7,福岡市のホオジロ,ユリカモメ*8と,2009年5月22日付の本備忘録において,その意向年度から区分を試みた「00(ゼロゼロ)世代」を中心とした,5都市6鳥のみ.勿論,下名が把握し切れていないことも想定されるが,意外と大半の政令指定都市では「市の鳥」なるものを確定されていないのだろうか.
確かに,例えば,周知のところでは,「コウノトリを再び空に帰す」という「理念」と「まちづくり」*9を一体させた,豊岡市における「市の鳥」であるコウノトリ*10のように(本備忘録的には,2009年6月3日付で取りあげたように,同市の副市長公募の取組が要経過観察の課題ですが),理念と生息が一致した取り組みがある一方で,同記事を拝読すると,同市が象徴するもの(又は,希求するもの)と実際との間を巡る「ローカル・アイデンティティの模索」*11の状況にあるともいえそう.ただ,その模索において,勿論「花鳥風月」からいえば,それが「鳥」であることは穏当ともいえそうではあるものの,その象徴効果を考えてみると,何故「鳥」が選択されるのだろうか,とも思わなくもない.考えてみると興味深い観察課題.少し調べてみたい.

*1:岡山日日新聞(2009年6月10日付)「「岡山市の鳥」タンチョウに 市政令市推進協が要望書

*2:山陽新聞(2009年6月16日付)「「市の鳥」制定見送りを 岡山の自然を守る会など陳情

*3:仙台市HP「紋章,市の花・木・鳥・虫

*4:千葉市HP「市の花・木・鳥・花木

*5:静岡市HP「市の花・木・鳥

*6:浜松市HP「市章・市の花・市の木・市の鳥

*7:堺市HP(魅力あふれる自由都市・堺堺市プロフィール)「市民の木・市の花木・花・鳥

*8:福岡市HP(福岡市の概要)「市の木・花・鳥

*9:小野泰洋, 久保嶋江実『コウノトリ,再び』(エクスナレッジ,2008年)167頁

コウノトリ、再び

コウノトリ、再び

*10:豊岡市HP(総合案内 豊岡市の紹介その他)「豊岡市の鳥・両生類・石 が決まりました!!

*11:宇野重規釜石市長としての鈴木東民」東大社研・玄田有史・中村尚史『希望学2希望の再生』(東京大学出版会,2009年)132頁(本書,地域と産業を考えるうえで優れた良書)

希望学2 希望の再生

希望学2 希望の再生