京都府長岡京市議会の6月定例会は22日、最終本会議を開き、府が市町村と進める税務共同化の広域連合「京都地方税機構」の設立規約を賛成多数で可決した。一方、課税事務については、構成団体と調整して参加の意思を確認するよう府知事に求める意見書を全会一致で可決した。
 意見書は、税務共同化の効果に一定の理解を示した上で、「規約案の現段階の内容では不透明。調整中で決定されていない事項も多い」と指摘。府民の生活を侵害するような滞納処分は行わないことや、派遣職員の人数や負担金の規則の速やかな制定や費用対効果の検証を要望し、課税自主権は市町村長にあることを十分尊重するよう求めている。そのほか、本年度一般会計補正予算案600万円、阪急新駅東西自由通路工事契約など6議案、国に公契約基本法の制定を求める意見書1件を可決し、閉会した。

同記事では,長岡京市議会において,京都地方税機構の設立規約に賛成多数で可決したことを紹介.2008年5月28日付及び2009年4月10日付の両本備忘録で取りあげた,同府内市町村と同府による税務の共同処理の取り組みのその後.
広域連合として設置されるため,同機構については,地方自治法第284条第3項に基づき,構成する自治体首長の「その協議による規約を定め」「総務大臣又は都道府県知事の許可を得て」設置されることになる(同機構の場合には京都府が含まれるため,総務大臣の許可)が必要とされており,同機構準備委員会HPを拝見すると,概ね本年7月から9月迄には,総務相から許可申請を行い,許可を得た後に広域連合を設置し,2010年1月1日からの徴収・収納業務の開始予定の模様*1.ただ,第29次地方制度調査会においても,「事務の共同処理の仕組みが一層活用されるよう,地方公共団体のニーズを踏まえた制度の見直しを行う必要がある」*2との答申が提出されたものの,開始に至るまでの,特に設置時点においては,やや難航することもある.
例えば,2009年6月23日付の京都新聞による別報道では,「各市町村議会に現在、共同化の業務を担う広域連合「京都地方税機構」の規約案が提案され,どこか一つの自治体の議会で可決しなければ,発足は白紙になる事情がある」ことがあり,「23日現在,11議会が可決」したものの,例えば「向日市議会では総務常任委員会で「判断材料が少ない」と無所属市議が継続審査を申し立て,賛成多数で可決された.24日の本会議で採決するかどうか議論」されることになり,また,「木津川市議会でも,総務常任委で保守系市議2人が反対に回った結果,賛否同数となり,委員長判断で可決される」状況にある等,同紙では「薄氷を踏む情勢にある」*3と評している.果たして,同種の規約に対して,議会が「制度的拒否権プレイヤー」*4となることが適当であるのかは,下名,整理がつかないままではあるものの,仮に同答申が述べる「制度の見直し」があるとすれば,その設置に関する規定もまた然りか.
滞納整理業務の「外部化」に伴い,これらの業務コストへの懸念を同機構に依拠することで,各自治体が課税自主権の行使に注力を図り,構成自治体間での「租税の外部性」*5が生じる蓋然性も想起出来なくもないものの,2009年6月23日付の読売新聞でも報道されているように*6,滞納整理については「連携効果」が見出されている共同処理.開始までの動向は,要経過観察.

*1:京都府HP(府税について市町村と府の税務共同化京都府・市町村税務共同化組織設立準備委員会HP(京都府・市町村税務共同化組織設立準備委員会の活動)「今後の手順

*2:総務省HP(以前の新着情報(会議資料・開催案内・他))第29次地方制度調査会『今後の基礎自治体及び監査・議会制度のあり方に関する答申』(平成21年6月16日)16頁

*3:京都新聞(2009年6月23日付)「税務共同化中止求め意見広告 京都府など、共産府議団に異例の抗議

*4:ジョージ・ツェベリス『拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか』(早稲田大学出版会,2009年)25頁

拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか

拒否権プレイヤー 政治制度はいかに作動するか

*5:横山彰,馬場義久,堀場勇夫『現代財政学』(有斐閣,2009年)140頁

現代財政学 (有斐閣アルマ)

現代財政学 (有斐閣アルマ)

*6:読売新聞(2009年6月23日付)「税金滞納 3億2600万円徴収 滞納整理機構 全24市町村、連携効果